“初心に返れる”育った町、“オフを楽しめる”今暮らす町「どちらも愛着のある土地です」

――ここからは『クラメルカガリ』にちなんだいくつかの質問をさせてください。佐倉さん演じるカガリは炭鉱町“箱庭”に人一倍愛着を持っていますが、佐倉さんにとって愛着のある土地はありますか?

佐倉:

1番思い入れがあるのは、15年くらい育った町ですね。両親は私より何倍も生きてきているから、いろんな土地に思い入れがあると思うけど、私は1番長く住んだその町がとても好き。思春期の感受性豊かな年頃をその町で過ごし、幼馴染たちもたくさん住んでいて……苦楽を共にした土地なんです。

18歳か19歳の時に引っ越してしまったのですが、たまに育った町に帰りたくなってしまう時があるんですよ。別の地域になってしまったので、親と喧嘩をした時は自転車をガムシャラにこいで育った家の前に行ったことがありました。

――別の地域ということは結構な距離がありますよね。それを自転車で行くのはすごい。

佐倉:

たしかに、かなり距離はありました。1時間以上はかかったと思います。何をするわけでもなく、一息ついて、頭を冷やして帰りました(笑)。

この時だけではなく、たまに無意味に育った町を訪れることがあります。

――それは、「初心に返れる」という感覚を得られるからでしょうか?

佐倉:

まさに「初心に返る」という言葉がピッタリですね。学校が大好きな時期と大嫌いな時期をその土地で過ごして、「環境が変わったわけじゃなくて、私が変わったんだな」と思い出させてくれます。

また、声優に憧れていた時期を過ごしていたのもその町で。当時抱えていたいろんな悩みや苦楽が、その町へ行くことで新鮮に思い出せる。そして、その思い出がまた原動力になるんです。

――今、住んでいる町は育った町を更新して好きになる可能性はありそうですか?

佐倉:

もちろんあります。今暮らしている町は、暮らしている年数的に徐々に育った町と変わらなくなってきますしね。今でもすごく好きな町なので、「ずっとこの町に居たいな」と思っています。

私、休日はあまり知り合いに会わず完全にオフの日にしたいタイプなのですが、最近、近所に住む友達が増えてきて(笑)。でも意外とそれがすごく嬉しいんです。

――いざ友達が近くに住み始めると嬉しいですよね。

佐倉:

そうなんですよ! あまり外出したくない休日でも近くに住んでいる友達なら自分の家に来てもらえるし、何かあった時に頼れるし……近くに友達が住んでいると安心できて、すごく嬉しいです。

先日も友達から「今起きてる?」「近くの歯医者に来てるから、家に寄ろうかと思ったんだけど」と連絡がきて。「私もちょうど起きたから会おう!」となり、私の家に立ち寄ってくれたんです。「友達が近くに住んでいるってこんなに楽しいんだな……」と最近知りました(笑)。

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佐倉綾音にとってかけがえのない4匹の猫「心の豊かさを与えてくれる存在です」

――また、カガリにとって地図屋として新しい道を探して地図に書き留めること=自分の暮らしを豊かにすることだと感じました。佐倉さんがご自身の暮らしを豊かにするために欠かせないことを教えてください。

佐倉:

暮らしを豊かに……ですね。ここ数年で猫が4匹ほど増えたんです。それはもう豊かになってしまって(笑)。もともと3匹の猫と暮らしていたところ、2匹引き取り、そのあともう2匹引き取り。全員保護猫です。

――計7匹の猫ちゃんと暮らしているんですか!?

佐倉:

プラス犬が1匹います(笑)。我が家はもともと犬派だったんですよ。というのも、私の母はもともと猫が苦手で。母はもともとヘビが嫌いなのですが、「ヘビの『シャー』と言う時の顔と猫が『シャー』と言う時の顔が同じだから、絶対に飼いたくない」とずっと言っていたんですよ。

ゴキブリは手で掴める人なのに、「ヘビが嫌いだから猫が苦手」って……「ゴキブリの方が嫌じゃない?」と私は思うんですけど(笑)。

ただある日、母が犬と散歩中に弱った猫の家族を見つけてしまったんです。猫が苦手なはずなのに、命を見捨てることができなくて母猫と子猫4匹を「保護するわよ!」と言い出して。ボランティアさんの手を借りて無事に猫を保護してから、母も猫の魅力に気づいて猫を可愛がるようになりました。

――「苦手」という気持ちよりも、命を優先するお母さまがとても素敵……。

佐倉:

私の人生の道しるべとして、母親の存在がかなり大きいんです。母親とは別のベクトルで私や家族を引っ張ってくれている父親も尊敬していますが、母は同じ性別だからというのも相まって母が自分の中で指標になっています。猫を保護した時も、「年齢を重ねても自分の価値観の書き換えられるって素晴らしいな」と思いました。

そんな母の影響もあってか、ずっとボランティア活動に興味があったんですね。なので、保護猫と暮らし始めたのをきっかけに、保護猫のボランティア活動を始めました。

知り合いのボランティアさんやお世話になっている団体さんから猫を引き取ったり、保護した猫を譲渡したり……そんな活動をしている中、新たに4匹の猫を迎えました。

――素晴らしい……! そんな猫ちゃんとの暮らしの中で、1番癒される瞬間は?

佐倉:

新しく迎えた4匹は全員人懐っこくて甘えん坊で、私が動くとみんなで大移動するんですよ。私がキッチンに行けば全員キッチンに、ソファーに行けば全員ソファーに、寝室に行けば寝室に……常に私の周りに集まって、体のどこか一部分を私にくっつけて寝ています(笑)。

寝る時にも私の周りに密集するので、寝返りがうてなくて体がバッキバキになるのは大変なのですが(笑)、心の豊かさを与えてくれる存在です。猫たちから、かけがえのない、計りようのないものをたくさんもらっていると思います。

(執筆:羽賀こはく、取材・編集:阿部裕華、撮影:小川遼)