成田良悟のキャラデザに「遺伝子レベルで高ぶる気持ちがありました(笑)」

――『クラメルカガリ』には、魅力的で個性豊かなキャラクターが登場します。佐倉さんの中で印象に残っているキャラクターはいますか?

佐倉:

成田(良悟)作品がとても好きなので、成田さんっぽいキャラクターデザインに遺伝子レベルで高ぶる気持ちがありました(笑)。

伊勢屋は子どもの頃の私が見たら「ああいう風になりたい」と思うような、クールで中二病心を掻き立てられる存在でした。カガリと会話するシーンも多かったのですが、あの煙に巻く感じは喋り方を含めてすごく格好いい。

この作品の中では伊勢屋に心を奪われる人がかなり多いんじゃないかなと感じていますね。等身大の幼い少年であるユウヤと大人の男性である伊勢屋の対比も含めて、いろんな意味で気になるキャラクターでした。

登場人物の人数自体はそこまで多くないので、各キャラクターにちゃんと見せ場があるのもいいですよね。「もっと知りたい!」と思えるキャラクターがたくさん出てくるので、焦点を当てるキャラクターが違えば、また1つ物語ができそうだなと思いました。

――たしかに、一人ひとりのキャラクターが個性的だからこそ、どのキャラクターをメインに置いても物語が成立しそう。

佐倉:

ですよね。みんなの過去も気になります。何か腹に一物を抱えていそうなキャラクター、設定として美味しすぎるキャラクターも登場するので、観ていてついつい好きになってしまう。

あくまでも自論なのですが、登場する大人や老人が面白く描かれている作品って名作だなと思うんですよ。『クラメルカガリ』には老若男女のキャラクターが揃っていて、かつ面白く描かれているので「とてもいいな!」と思いながら観ていました。

――ちなみに……作中で、カガリはユウヤとの絡みが1番多かったと思います。ユウヤへの印象もお伺いしたいです。

佐倉:

ユウヤの印象……「1人で青春映画をやっているな……」ですね(笑)。

――(笑)。

佐倉:

1人で突っ走ってしまう気持ちはわかるけど、「彼が大人になった時、この時のことを思い出して恥ずかしくならないといいな……」と思いました(笑)。突っ走るユウヤにカガリがついていける子だったら良かったのですが、そういう子ではないので……。カガリに途中でハシゴを外されるユウヤを見て、面白さと同時に少しの憐れみを感じてしまいました。

また、観る人の年齢によってユウヤの捉え方が変わってくるかもしれないと思っています。例えば、小中高生が『クラメルカガリ』を観たら、ユウヤのことを「カッコいい!」「なんでカガリはついてきてくれないんだろう?」と思うかもしれない。

一方、かつてユウヤだった大人が『クラメルカガリ』を観ると「 あちゃー……」「いつかその選択を悔いる時が来ると思う……」と感じるかもしれない(笑)。ユウヤが「良い思い出だったな」と笑いに変えられる素敵な大人になる可能性もありますけどね……!

少し達観したカガリや周りのキャラクターたちよりも、ユウヤの“青さ”は”等身大な子ども”という感じが出ていて面白かったです。カガリとユウヤはデコボココンビで、私はすごく良いペアだなと思っています。

――ユウヤからはカガリに対する好意が見えますが、佐倉さんがカガリを演じる際にカガリはユウヤをどう思っていると感じていましたか?

佐倉:

物語の中でカガリにユウヤへの好意が芽生えてもいいのかなと思っていたのですが、スタッフさんに聞いてみると「別にカガリはユウヤをなんとも思っていない」という感じだったんですよ(笑)。

「なるほど。そんな感じでいいんだ」と思い、収録をしていました。

カガリ自身はまだ子どもで、自分の興味や好奇心以外にベクトルが向いていないのだろうなと。ユウヤが大切な人であることに変わりないけれど、 カガリがそれ以上の感情に気付くのはもっと後の話なのだと思います。

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BGM付きコンテでアフレコに挑戦「アニメの現場が全部こうだったらいいのに(笑)」

――完成した『クラメルカガリ』を実際にご覧になっていかがでしたか?

佐倉:

絵と音楽の相性がとても良くて衝撃を受けました。「薄暗い雰囲気をまとった映像と、転がっていくようなテンポ感のある音楽ってマッチするんだ!」と意外でした。その意外性が観客の皆さんを飽きさせないようにしているなと。「この音楽、楽しい!」と感じてもらえるのではないかと思います。

監督曰く、作品を1つのお祭りに見立てて、音楽にちんどん屋感を出したそうなんです。その話を聞いて、すごく納得しました。ちんどん屋のお祭り感のある音って日本人の遺伝子に組み込まれていると思っていて、音を聴くだけで「なんだか楽しい!」という気持ちが掻き立てられるのだろうなと(笑)。

――オーイシマサヨシさんによる主題歌「僕らの箱庭」も劇中に流れるBGMも、聴いているだけで自然とワクワクしてしまいますよね。

佐倉:

魅力的ですよね!

実は、アフレコの時にすでにBGMがついていたんですよ。私がこれまで行ってきたアフレコでは、手探りでどういう空気感なのか考えたり、スタッフさんにヒントをもらったりしていたので、かなり衝撃的でした。音楽を聴きながらお芝居ができるという画期的なアフレコで、世界観を掴むのにものすごく助かりました。「アニメのアフレコ現場が全部こうだったらいいのにな」と思うほど(笑)。

おそらく『クラメルカガリ』において、塚原監督の方向性がかなり明確だったと思うので、 音楽で引っ張ってもらった感覚が強く、カガリをしっかり演じることができた要素として、とても大きかったです。