ほぼ毎日のSNS更新、意識しているのは“供給量”。キャラの“生”を感じさせる運用の裏側

――次に、コンテンツの中身のお話に入っていければと思います。運用する中で特に意識していたことは?

毛利:

『ビバレン』はアニメでもゲームでもなくSNS上で展開したコンテンツなので、「飽きられてしまわないか」は常に心配していました。

2019年~2021年頃は数カ月に1本は必ず新規タイトルが出てくるような状況だったので、さまざまなコンテンツを選べる中でいかに飽きられずに話題を提供し続けられるかというのは、企画当初もリリースしてからも常に不安に思っていました。

それもあり、SNS上での話題作りはかなり意識して運用していました。ファンの方がそのキャラクターの“生”を感じられるくらいにX(旧Twitter)を運用をしていきたいと思い、投稿頻度以外にもいろいろな工夫をしましたね。

休養に入るアイドル候補生がいたりとか、スキャンダルを週刊誌アカウントがすっぱ抜くみたいなことをやってみたりとか。より物語やキャラクターに没入してもらえるよう試行錯誤しました。

――ほぼ毎日のようにXの公式アカウントを更新されているので、運用面も大変そうですよね。

毛利:

SNS用にイラストを新規で描き下ろしたり、イベントの時期にあわせて投稿内容を変えたりしているので、たしかに大変なことは多いです。

でも、「常にキャラクターを近くに感じてもらうためには、毎日投稿くらいはやらないとね」と最初に決めていましたし、『ビバレン』を運用していく上で欠かせないピースの1つなので、やるべきだと思っています。

SNSを中心に展開しているコンテンツなので、供給量でいえばアニメや漫画と比べてどうしても劣ってしまうわけです。アニメなんて1話の中にたくさんの情報が詰まっているけれど、僕らにはそういったものがないので、とにかく毎日でも何かしら供給できる情報があるといいよねと。

だから、これまで「SNSの更新をやめたい」みたいな話は出たことがなく、「やめる時はこのプロジェクトが終わる時だろう」という感覚があるんですよね。全員が覚悟を決めて、気合いでやっている感じです。

――そうした運用を続けてきた結果、ファンの方から喜ばれている感覚はありますか?

毛利:

そうですね。ファンの方がリプライを送ってくれたり、それをきっかけにファンの方同士が会話をしている様子も見られたりするので、話題を提供する役割は果たせているのかなと感じています。

ポストのネタや投稿するイラストに関してもかなり細かいところまで配慮していて、それを話題にX上で会話している様子をよく見るので、コミュニティ内の活性化にも活きている感覚がありますね。

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キャラソンっぽさをなくし、K-POPを意識。ファンの心を掴んだストーリー連動の楽曲&MV

――SNSの使い方だけではなく、楽曲やMVの評価もすごく高いと感じているのですが、工夫したことを伺えますか?

毛利:

僕らの楽曲やMVがこの業界の中で特別高いという自負はあまりないのですが、『ビバレン』について言えば、「とにかく物語と連動したものをしっかり作ろう」という意識はありました。

例えば、メインで配信しているドキュメンタリードラマの中で「課題曲に挑戦する」といった話があり、その課題曲を歌うまでのエピソードがあったなら、それが終わった直後にすぐにMVを配信する。ミュージカルのお題を出された話の中で、いろんな困難を皆で乗り越え団結して成長して……といったシーンが描かれた直後には、ミュージカル風のMVを配信する、という風に。

もちろん楽曲単体でも楽しめるよう、間口を広げられるようにというのは意識していましたが、物語を追いかけている方たちが、楽曲やMVに触れることで何倍にも楽しめるようなものを作ろうと心掛けていたんです。

すべてのコンテンツを連動させていたからこそ、それぞれの配信タイミングを合わせなければいけないし、スケジュールを遅らせることができない大変さはありましたが、やった甲斐はすごくあったと思っています。

――そんなこだわりがあったんですね。各楽曲の曲調もダンスミュージックが多い印象があり、これまでのアイドル系のコンテンツとは少し違うように感じました。

毛利:

たしかに、あまりキャラクターソングっぽくしないようには心掛けていました。

僕らはオーディションを通じて、アーティストとしてもしっかりと結果を残せるようなアイドルグループを作ろうと考えていたんです。そうした中で、K-POPのアイドルオーディションで生まれたグループたちが世界を席巻するような活躍を見ていたので、どちらかというと日本のアイドルグループよりもK-POPを意識していた経緯はありますね。

それから『ビバレン』では、オーディションの課題曲をテーマにしていたこともあり、ダンスナンバーが必然的に多くなりやすかったのも、ほかのアイドルコンテンツとは違った点かもしれません。

課題曲というと楽曲歌唱だけじゃなく踊りの審査もあるので、「キャラがダンスを踊っている様子が浮かぶような曲にしよう」というのは意識していました。

とはいえ、楽曲だけで流行ればOKとは考えておらず、あくまですべてを物語に帰結させるように組み立てていましたね。