エンジンの圧縮比とは?

エンジンにおける圧縮比とは、エンジン内部のシリンダー(気筒)内の容積が最も大きくなる時の容量と、最も小さくなる時の容量の比率を表す値のことです。

シリンダー内の容積は、ピストンが一番下に下がったとき(下死点)に最大容積となり、ピストンが一番上がったとき(上死点)に最少容積となります。

何を圧縮するのか

エンジンは吸気・圧縮・燃焼・排気をひと工程としていますが、シリンダー内で何が圧縮されているかはエンジンによって異なります。

従来のガソリンを燃料とするレシプロエンジンの場合、シリンダー内に取り込まれた、混合気(空気+ガソリン)をピストンが押し上げ、圧縮します。

近年主流になりつつある直噴エンジンは、同じガソリンエンジンではありますが、従来の圧縮方法とは異なり、混合気ではなく空気のみを圧縮しています。

燃焼(爆発)の燃料となるガソリンは、空気が圧縮された後、シリンダー内に直接噴射(噴霧)されます。

ディーゼルエンジンも直噴エンジンと同様に空気を圧縮し、ディーゼルエンジンの場合は軽油を圧縮後にシリンダー内に直接噴射(噴霧)します。

圧縮比とは、ピストンの上下運動によるシリンダー内の容積の変化の比率のことを指しますが、シリンダー内の容積が小さくなることで、中身が圧縮されます。

このことから、圧縮比とは「混合気をピストンがどれくらい圧縮させるのか」と置き換えて考えることもできます。

なぜ圧縮するのか① 混合気の圧縮と熱効率

圧縮をする理由の一つはピストンの上下運動の力によって熱効率を最大限利用するためです。

熱効率とは、投入した熱エネルギーが仕事に変換される割合のことです。エンジンにおける「熱エネルギー」とは爆発を指し、「仕事に変換」とはそれによってピストンを押し下げる力のことです。

前述のように、エンジンは混合気を圧縮し、爆発によって生まれる力を動力とします。同じエンジンの場合、圧縮比が高ければ高いほど爆発によってピストンを押し下げる力が強くなります。

ピストンは上死点から爆発によって下死点に移動することが最も運動効率が良いので、エンジンは、この熱効率を最大限に利用するため、混合気を圧縮するのです。

なぜ圧縮するのか② 気体の特性を利用する

ディーゼルエンジンの場合は、熱効率を利用するほかに、「気体は圧縮されると熱を持つ」という性質を利用し、爆発を生み出すために圧縮をします。

ディーゼルエンジンの燃料である軽油は、ガソリンよりも着火性がよい燃料です。ディーゼルエンジンは、混合気を圧縮するのではなく、空気を圧縮します。

圧縮された空気は熱を持ち、そこに燃料を噴射すると、熱を持っている空気に反応し爆発を起こします。ディーゼルエンジンはこの性質を利用するためにも圧縮を行います。

また、圧縮したことで生まれる熱を利用することから高く圧縮をする必要があり、ガソリンエンジンよりも圧縮比が高くなります。

圧縮比はエンジンによって異なる

爆発の力を動力に変えるために必要不可欠な工程が、混合気の圧縮であることは述べたとおりです。圧縮比はエンジンの種類や使用する燃料によって、圧縮比は異なります。

レギュラーガソリンを使用するガソリンエンジンであれば圧縮比は概ね10前後、ディーゼルエンジンであれば18前後と違いがあります。

これはエンジンの特性や爆発の仕組みに、大きく関係してきます。

自分の愛車の圧縮比はどれくらいなのか、カタログやインターネットで調べたり比較したりすると面白いでしょう。

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エンジンの圧縮比は計算で求められる

電卓と車のおもちゃ
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エンジンの圧縮比は、ある程度そのエンジンの情報がわかれば計算によって導き出すことができます。

圧縮比の計算方法

圧縮比は「圧縮比=(排気量+燃焼室の容積)÷燃焼室の容積」という計算方法で求めることができます。エンジン例を用意して考えてみましょう。

<エンジンの例>

型式 直列4気筒
燃料 ガソリン
排気量 2,000cc
燃焼室の容積 50cc

このようなエンジンがあるとして、実際に計算してみます。

圧縮比の計算方法 排気量

このエンジンは4気筒で、排気量が2,000ccです。ということは、1気筒当たり500ccの排気量をまかなっている、ということになります。

ひとつのエンジンでは何気筒あっても、1気筒あたりの圧縮比はすべて同じです。そのため、計算しやすく1気筒あたりで考えます。

圧縮比の計算方法 燃焼室

エンジン イラスト
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燃焼室とは、気筒の中に取り込まれた混合気が、ピストンが上死点に達した際に、混合気が圧縮されて溜まる空間です。

ピストンが下死点にある時取り込まれる混合気は、シリンダーの最大容量の中に取り込まれています。

ピストンが上死点に達すると、シリンダーは最少容積となって混合気は一番圧縮された状態になり、爆発します。

このエンジンの場合、シリンダーの最小容積時、つまり圧縮された空気のたまる空間の容量が50ccである、ということです。

圧縮比の計算方法

それでは、先程のエンジンの例を使って実際に計算します。繰り返しになりますが、あくまで1気筒当たりの数字に置き換えて計算しますので、注意してください。

1気筒当たりの排気量=500cc
燃焼室の容積=50cc
計算式は「圧縮比=(排気量+燃焼室の容積)÷燃焼室の容積」なので、これに当てはめると、「圧縮比=(500cc+50cc)÷50cc」となります。

これを計算すると、11という数字になります。これは、シリンダー内の最大容積時の混合気と最少容積の混合気の比率が、11:1であるということになります。

このことから、このエンジンの圧縮比は「11」であるということがわかります。

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