今から20年少し前の三菱は、トラックやバス(現在の大型車部門は三菱ふそうトラック・バスとして分社化し、ドイツのダイムラー・トラック傘下)、大型乗用車から軽自動車までのフルラインメーカーでした。

1969年の初代ギャランから30年ほどはいろいろありながらも成長し続け、バブル崩壊後も3ナンバーブームやRVブームに乗っていたものの、2000年代以降は相次ぐスキャンダルで今や日産ともどもルノー傘下。

しかし、それでもなんとか生き延びてこれたのは救世主的なクルマがあったからで、今回は三菱の危機を救った3台のクルマを紹介します。

ディアマンテ(初代・1990年)

「3ナンバー車ブームの申し子」はパジェロとの2枚看板となった

三菱 ディアマンテ(初代)

1980年代までの三菱は、初代ギャランのヒットで乗用車メーカーとしての軌道に乗り、電子制御を駆使したハイテク路線やターボ車、パジェロのようなRV車を全面に押し出し、規模は小さいなりにフルラインメーカーとしてそれなりにやっていけていました。

ただ、バブル景気の並にはイマイチ乗れず、RVのパジェロがソコソコ売れているだけではその後のバブル崩壊に耐えきれたかわかりませんが、そこにちょうどよく登場したのがFF大型セダンのディアマンテです。

1989年の税制改正で自動車税が安くなった3ナンバー車ブームの並に乗り、最上級車デボネアVを差し置いて三菱セダンの主力として、RVブームに乗ったパジェロとともに1990年代の三菱を支えました。

結局はセダン市場の縮小によって2代限りで消えたディアマンテですが、短いながらも三菱への貢献度が大きかったクルマと言えます。

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eKワゴン(初代・2001年)

スキャンダルのドン底に現れた、「こういうのでいい普通のクルマ」

三菱 eKワゴン(初代)

2000年代に入って早々、三菱は多数のリコールを運輸省(現・国土交通省)へ報告せずに処理するリコール隠し事件などスキャンダルが相次ぎ、日本国内での企業イメージはドン底に落ちるという危機に見舞われました。

全ての三菱車に疑いの目が向けられ、三菱自動車の事なら何を言っても許される雰囲気まであった中、目立たないながらも数少ないヒット車種として三菱ブランドを守ったのが、初代eKワゴンです。

クルマとしてはデザインも何もかも地味でしたが、ベーシックモデルのミニカより背が高く広いものの、トールワゴンのトッポBJよりは低く、大半のタワーパーキングで使える全高1,550mmというジャストサイズに、乗れば意外としっかり堅実な作りがウケました。

確かにランエボのようなイメージリーダーも必要でしたが、存続の危機に陥ったメーカーにとって頼りになるクルマとは、案外こういう「普通で誰にでも売れるクルマ」なのです。