圧縮比はエンジンや使う燃料によって異なる?
圧縮比は、エンジンの構造や使用燃料によって圧縮比が異なります。これは、エンジンの爆発のエネルギーを効率よく活用するためです。
代表的な違いを見てみましょう。
ディーゼルとガソリンで圧縮比が違う
ガソリンスタンドでもよく目にするように、車の燃料には一般的にガソリンとディーゼル(軽油)が存在し、この燃料の違いで圧縮比は異なります。
一般的な圧縮比は、ガソリンエンジンで11~12程度に対してディーゼルエンジンで18程度となります。これはそもそも爆発のきっかけが異なる為です。
気体というのは、圧縮されるほどに高温になる性質があります。ガソリンエンジンは、圧縮された混合気にスパークプラグで火花を散らし爆発させます。
ディーゼルエンジンの混合気は、ガソリンの混合気よりも着火性がよく、圧縮するとその熱で爆発を起こします。そのため、スパークプラグが必要なく、高く圧縮することで自然に着火・爆発するようになっています。
このような仕組みから、ディーゼルエンジンは圧縮比がガソリンエンジンに比べて高くなっています。
NA(自然吸気)とターボで圧縮比が違う
ガソリンエンジンを例に考えてみます。エンジンのパワーを向上させるために、ターボ(ターボチャージャー)を装着している車があります。
逆に、そのような部品を有しないエンジンもあり、これを自然吸気エンジンと言い、通称でNA(Natural AspirationまたはNormal Aspiration)エンジンと言います。
これらは同じガソリンエンジンでも、圧縮比が大きく異なります。例えば、下表のように、同じ排気量、同じパワーでも圧縮比は異なります。
メーカー | 日産 | ホンダ |
---|---|---|
車種名 | S15 シルビア | S2000 |
エンジン型式 | SR20DET | F20C |
エンジン種別 | ターボエンジン | NAエンジン |
排気量 | 1997cc | 1997cc |
馬力 | 250PS/6400rpm | 250ps/8300rpm |
圧縮比 | 8.5 | 11.7 |
なぜこのような違いになるのか、ということですが、そもそもターボというのは、コンプレッサーを利用して大気中の空気を圧縮し、エンジンに送り込みます。
そのため、ターボチャージャーから送り込まれてきた空気はすでに圧縮されています。
その空気をさらに圧縮すると、圧縮されたことによる空気の温度上昇で、スパークプラグが点火する前に爆発を起こしてしまうことがあります。
それは異常燃焼(ノッキング)という現象で、エンジンブローにつながる危険を持っています。すでに空気が圧縮されているから、ターボエンジンはNAエンジンに比べて圧縮比が低いのです。
レギュラーとハイオクで圧縮比が違う
ガソリンには、通称レギュラーとレギュラーより少し値段の高いハイオクがあります。
ハイオクとは「ハイ(高い)・オクタン価」の略称です。オクタン価とは、先に触れた異常燃焼が起こらない程度を表す数値。数値が大きいほど異常燃焼が起こりづらいということです。ハイオクとは、レギュラーガソリンに比べ異常燃焼が起こりづらい燃料ということです。
オクタン価の設定は国によって異なりますが、日本では、
- レギュラーガソリンのオクタン価 「90~91」
- ハイオクガソリンのオクタン価 「98~100」
となっています。
ハイオクの特徴はレギュラーよりも圧縮できることです。というのも、気体が圧縮されると熱を持ち自然に爆発してしまうということを述べましたが、ディーゼルだけでなくガソリンエンジンでも、異常燃焼という形でそれは起こります。
しかし、レギュラーガソリンで異常燃焼を起こす圧縮であっても、ハイオクは爆発しにくくなっています。そのため、レギュラーガソリンに比べて圧縮比を高くでき、結果として爆発の際に得られるエネルギーもレギュラーガソリンの爆発よりも大きくなります。
ハイオクを使用するエンジンは、ハイオクが効率よく爆発するように設計されています。そのため、ハイオク指定の車にレギュラーガソリンを入れ続けることはあまり推奨されません。
直噴エンジンは圧縮比が高い
近年搭載車種が増えてきたエンジンでは、ガソリンエンジンでありながら圧縮比が14前後という高い圧縮比を実現している直噴エンジンというものがあります。
大きな違いの一つとして、従来のエンジンは混合気をピストンが圧縮するのに対し、直噴エンジンはピストンが空気のみを圧縮した後、シリンダー内に燃料を直接噴射し混合気とした上で爆発をします。
混合気の状態から高く圧縮をするとノッキングを起こしてしまいますが、空気だけであれば燃料がないため、高く圧縮してもノッキングは起こりません。
また、噴射された燃料はシリンダー内で気体に変化しますが、その際、気化潜熱といって、シリンダー内の熱を奪います。
そのため、燃料噴射時にもノッキングを起こすことがなく、また空気が冷えることで空気の体積が減り、さらに空気を送り込むことができます。
このような仕組みで直噴エンジンは高い圧縮比を実現できます。
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圧縮比の大きさとエンジン出力の影響
圧縮比はその数字とエンジンパワーにはどのような関係があるのでしょうか。
圧縮比が高いほどパワーが高い?
圧縮比の高さはエンジンの特性や使用する燃料など、エンジンごとに異なりますが、例えば同じエンジンであっても、圧縮比を高くすればそれだけ熱効率が向上するので、爆発の際ピストンを押し下げる力が強くなります。
その場合は、結果としてエンジンパワーが向上します。このことから、圧縮比とエンジンパワーには、密接な関係があると言えます。
圧縮比を上げてエンジン出力を上げることはできる?
圧縮比を高めることができると、それだけピストンを押し下げる力が強くなりますから、結果としてエンジン出力が向上します。
圧縮比は「(排気量+燃焼室の容積)÷燃焼室の容積」ですから、排気量+燃焼室の容積を大きくするか、燃焼室の容積を小さくすれば、圧縮比は上がります。
そのため、これの2つのいずれかの改造を行うと、エンジン出力は向上します。
エンジンパワーを上げるボアアップという選択
よく使われるパワーアップ方法は、「ボアアップ」というものです。ピストンの径のことを「ボア」といい、これを大きくし、またシリンダーの内径をそのボアに合わせて削ることで、シリンダー内に入れることのできる混合気の量を増やすことをボアアップと言います。
これにより、燃焼室の容積は変わらなくてもシリンダー内の最大容積が増し、圧縮される混合気の量は増えますから、圧縮比があがります。
結果として爆発も強くなり、エンジンパワーが向上します。また、このボアアップによって車の排気量は変化します。ボアアップを行うと、排気量の変更を届け出ないと車検に通らなくなりますので注意しましょう。