正しいクッカーの選び方|登山ガイドが用途別おすすめも解説【山登り初心者の基礎知識】

2.料理の種類で「形状」を選ぶ

クッカーの形状には次のようなさまざまな種類があり、料理の種類によって最適な形状は異なってきます。

・丸型

・バーナー一体型

・角型

・フライパン型

「沸かす」なら、バーナー一体型、丸型

ジェットボイルの定番モデル「マイクロモ」

お湯を沸かしてカップラーメン、アルファー米、フリーズドライ食品、スープ類を作るといったシンプルな調理はどの形のクッカーでもできます。

そのなかでも、お湯を沸かすということに特化しているのが、「バーナー・クッカー一体型の丸型タイプ」です。

ジェットボイルのような一体型クッカーは燃焼効率も高く、素早くお湯を沸かせます。ジェットボイルの公式サイトによると、主要モデルのマイクロモ(容量800ml)であれば、500mlを2分20秒(公式サイト情報)で沸騰させられます。

クッカーとバーナーが一体となっているため、重量は約340g。一般的な日帰り登山では問題ない重さですが、軽さを重視する長期縦走やウルトラライト(UL)の人にとっては、少し悩ましい重さです。

とはいえ、寒くなる季節に休憩ですぐにお湯がわかせるメリットは、ほかのクッカーにはないアドバンテージなのは間違いありません。

「ゆでる、煮る」なら角型か丸型

(写真提供:ユニフレーム)

袋ラーメンなどをゆでるのに最適なのが角型クッカーです。四角いので袋のインスタントラーメンがすっぽり入ります。角型は物を収納するときにデッドスペースができにくいメリットもあります。

大きめの丸型クッカーは、大人数で鍋物などを作るときに活躍します。

「焼く、炒める」なら、フライパン型、丸型

エバニューのフライパンタイプのクッカー「Ultra Lightパン #16」

目玉焼きやチャーハンなどの炒めものを作りたい場合に最適なのが、フライパン型。コーティングされているモデルだと、料理がクッカー本体にこびりつかず、ティッシュでさっと汚れをふきとれ、洗い物ができない山の上では助かります。

丸型のクッカーには、本体や丸型のふた部分をフライパンとして使え、炒めものができるモデルもありますので、ご購入時に確認してください。

「ごはんを炊く」なら、ふた付き角型、丸型

ごはんがおいしく炊けるアルミ製飯ごうのメスティン

ごはんを炊くのに適しているのが、アルミ製飯ごうのメスティンに代表されるふた付き角型モデル。ふたでしっかりと密閉できるため、クッカー内の圧力が高まり、美味しくごはんを炊けます。

登山でのテント泊の食事には、主食のご飯にアルファー米を使う場合が多いですが、時間や燃料に余裕のあるときに食べる炊きたてのご飯は、最高の贅沢。丸型も、ふた部分に重りを乗せることで、密閉度を高めて炊飯できます。

万能なのは丸型

EPIgasの「ATSチタンクッカー TYPE-3L」

ここまでの説明で分かってくるのが、丸型の万能性。どんな調理もこなすバランスの良さを持っており、最初のクッカーは丸型にしておけば、ほとんどの場合には困りません。

その後、登山でもこだわった料理を食べたくなったり、振る舞いたくなったりしたら、炒めものを美味しく作れるフライパン型がおすすめ。炊飯をしたいとなったら、ふた付きの角型を買い足せばいいでしょう。

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3.人数で「サイズ」を選ぶ

素材、形状とイメージが整ってきたところで、最後の選択の基準は「サイズ」。いつもグループ登山で、ほかのメンバーの分も一緒に作る場合は大きめのサイズ、ソロ登山やグループ登山でも食事は各自で作る場合は、ソロ用の小さなサイズというのはイメージがつくと思います。

それでは「具体的にどれくらいの容量がいいのか?」と迷うところですので、選ぶ基準を説明します。

「ソロ」なら500ml〜900ml

EPIgasの「ATSチタンクッカー TYPE-3M」

ソロで使う場合の目安の容量は、約500ml〜900ml。料理をする場合には、小さすぎても食材が入らず、調理しづらいからです。

900mlでも沸騰した時にこぼれずに沸かせるのは700〜800ml。これだけあればラーメン(300〜500ml)とコーヒー(150〜200ml)を作っても少し余裕があります。

内径11cm、外径12.5cm以上の丸型クッカーだと、250サイズのガスカートリッジ(直径11cm)や小型バーナーを収納できるのでおすすめです。レトルト食品の温めやインスタントラーメン作りにも使えます。

もし料理はせず、カップラーメンやアルファー米のお湯を沸かすだけと割り切るのであれば、500ml以下のULな小型サイズも選択肢に入ってきます。

「グループ」なら500ml × 人数分

EPIgasの「ATSチタンクッカー TYPE-2L」

グループで使う場合は「500ml×人数分の容量」を一つの目安にして下さい。

登山用のクッカーだと2000ml程度が最大サイズなので、それ以上の大人数の分を料理する場合は、複数のクッカーを持っていくとよいでしょう。