登山用のクッカー(調理器具)はバックパックに入れて運ぶ必要があるため、軽量・コンパクトなものが好まれます。しかし、数あるクッカーの中から、自分の用途に合った大きさ、材質のものを最初から選ぶのは難しいのも事実。山での調理に最適なクッカーの選び方とおすすめの商品を、登山ガイドがわかりやすく紹介します。
登山用クッカーの選び方
クッカーとは、野外用の調理器具の総称で、ドイツ語でコッヘルともいいます。登山用には、軽量・コンパクト・耐久性を備えたものが好ましいとされ、選ぶ上でのポイントは次の3点が挙げられます。
1.用途に合った「素材」
2.料理の種類に合った「形状」
3.人数に合った「サイズ」
インスタント麺やアルファー米を食べるためにお湯をわかすだけでいいのか、ちょっと贅沢な山ごはんのために炒め物をするのか、自分が山で楽しみたい料理のスタイルを事前に決めておくと、さらに絞りやすくなります。
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1.用途に合った「素材」を選ぶ
まず最初に考慮したいのが素材。クッカーに主に使われている素材は、アルミ、チタン、ステンレスの3種類です。
それぞれの特徴を下の表にまとめるとともに、素材のメリット、デメリットを解説します。
軽さ、価格、耐久性でバランスの良さ光る「アルミ」
アルミニウム合金のクッカー(PIXTA)
アルミは重量、熱伝導率、耐久性、価格のいずれも欠点が少なく、バランスの良い素材。最初にクッカーを購入するなら、アルミ製がおすすめです。
【メリット】
・アルミのクッカーは、登山の持ち運びにも問題無いレベル。チタンより重く、ステンレスより軽量。大手ブランド・モンベルの本体750ml、フタ430mlがセットになったアルミ製クッカーは222g。
・熱伝導率が高いため、火の熱が伝わりやすく、燃料の消費を抑えられる。
・熱ムラがなく、比較した素材のなかでは料理が焦げ付きにくいのも特徴。
・耐久性という点では、柔らかい素材のため、チタンやステンレスより劣る。一般的なアウトドア向けの製品は、板厚を増して強度を上げているため、通常の登山用バーナーを使った料理での使用には問題ない。
・価格はチタンに比べて安価。大きさにもよるが、国内主要ブランドの本体フタとセットのもので3,000〜4,000円台から購入できる。
【デメリット】
・大きなデメリットは特にないが、重量にシビアな山行をする人にとっては、チタンよりも重いことがネックに。
軽さにこだわる人は「チタン」
チタン製のクッカー(PIXTA)
チタンの最大の特徴は、なんといっても「軽量」なこと。比重(物質の質量 / 同一の体積の水の質量)を比べると
鉄:7.87
チタン:4.51
アルミ:2.73
アルミの方が比重は軽いのですが、強度を出すために板厚を増す必要があります。一方、チタンは強度が高く、薄い板厚で製品を作れるので、商品の軽さとしては、チタンに軍配が上がります。
【メリット】
・3つの素材の中では最軽量。チタン製品に強いエバニューの容量500mlのモデルで約75g。
・強度が高く、耐久性にも優れているので、薄く加工できる。
・熱伝導率は良くないが、火の当たる部分の加熱速度が早く、燃料消費はアルミ、ステンレスと比べると少ない。
・金属臭がしないため、食べ物や飲み物の風味を壊さない。
【デメリット】
・熱ムラができやすく、料理が焦げ付きやすいので、炒めものなどの調理は得意ではない。
・今回比較する素材の中で最も高価。大手ブランドの500mlのモデルで市場価格でも5,000円強はする。
調理には向いているが、重さがネックの「ステンレス」
シェラカップに多いステンレス素材(PIXTA)
ステンレスは安価で、素材の加工もしやすいことから、家庭やオートキャンプの調理器具によく使われています。ただし重量があるため、軽量性が求められる登山での持ち運びには向いていません。
【メリット】
・強度が高く、耐久性は高い。
・3素材の中で最も安価。
・熱ムラが無いため、料理が焦げ付きにくい。
【デメリット】
・重さがあるため、登山での持ち歩きには適していない。
・伝導率が低く質量が大きいため、加熱速度が遅く、ほか2素材より燃料を消費しやすい。
以上の特徴から、登山ではバランス型の「アルミ」、軽量化重視の「チタン」が現実的な選択肢となります。