V型エンジンのメリットとデメリット

BMW M5 E60型
V10エンジンを搭載するBMW M5(E60)

V型エンジンは、直列型エンジンに比べ、どのようなメリット、デメリットががあるのでしょうか?

そして、スポーツカーやレースカーで採用される理由はなんでしょうか?その課題を解決するのがV型エンジンなのです。

V型エンジンのメリット

  • バンクを左右に分けることでエンジンの全長が短くなる
  • エンジン高が低くなることから車の重心を下げることができる
  • 片バンクだけでも動力を得て走ることが可能である

V型エンジンのデメリット

  • 直列エンジンに比べ横幅が広くなる
  • 各バンクにカムシャフトが必要で部品が多くなり複雑になる
  • 部品が多くなることでエンジンの重量が増える

高級車や大排気量車によく用いられる

スポーツカーやレースカーでV型エンジンがよく採用されるのは、コストや複雑さといったデメリットよりも、エンジンの全長が短くなることで搭載位置をできる限り車の中心に配置すること、車の重心を下げることで、車全体の重量バランス、コーナーリングの速度をあげることができるからです。特にレースでは、0.1秒を争うため必要な条件になります。

車自体の性能が向上する多気筒(6気筒以上)では、全長を抑えているV型エンジンの方が、限られたスペースに搭載しやすくなります。(エンジンの補機類をバンク間に配置することによって、エンジンが幅広くなった部分をある程度補填することが可能です。)

よって高性能な大排気量スポーツカーや、重量がある高級セダンの最上位に位置する特定のカテゴリーにおいては、V型エンジンを採用する車種が多いと言えます。

2列あるV型エンジンでは、片方1列のバンクを休止してエンジンを動かす仕組みを持ち、パワーが不要なときに走行時の燃費の向上が図られているモデルがあります。

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V型エンジンの歴史

パッカード120
出典:wikipedia.org Author:Lars-Göran Lindgren Sweden CC 表示-継承 3.0
画像はパッカード120、8気筒エンジンを搭載。

自動車用ガソリンエンジンの発達は19世紀末期に始まったと言われています。

その初期過程で高速化と大排気量化を両立させる目的があり、当初の単気筒から2気筒、4気筒と気筒数が増加し1900年代初頭には直列6気筒まで出現しました。

しかし、その頃から長すぎるクランクシャフトが生産時の加工精度と搭載スペースの確保、高速回転時の振動などに制約を及ぼすとされ、これ以上の多気筒化は停滞することに。

1914年アメリカのキャデラックが当時の高級車で主流であった直列6気筒に対抗するようにエンジンの多気筒化による低振動・高回転化と、エンジン自体の小型化を両立させる目的で実用水準に達したV型8気筒エンジンが開発されました。

これに対抗するようにアメリカの自動車メーカー、パッカードが1915年に「ツインシックス」と称するV型12気筒エンジンを開発、更に他社からもV型8気筒、V型12気筒が輩出されました。ついにはV型16気筒まで出現するなど、アメリカの高級車業界においては1920年代以降、多気筒V型エンジンが勢いを得ました。

しかし、当時の自動車ではボンネット短縮の必要性が必ずしも強くはなく、クランクシャフトは長くなるがより、製造しやすい直列8気筒も、1920年代後半以降の高級車で広く親しまれました。

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