V型を超えた?W型エンジンはここが違う!
W型エンジンと聞いて、先程のV型エンジンを正面から見た両バンクとクランクシャフトを繋ぐ形が「V」だったのに対して、「W」に見えるから?と思った方は正解です。4バンクを1本のクランクシャフトと繋ぐラインが英文字の「W」に見えるのです。
4バンクの場合は、V型エンジンを横に2機並べたようなデザインになります。ただしクランクシャフトは1本なので、単純にV型エンジンを2機並べたわけではありません。
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W型=V16エンジンの構造
ではW型エンジンの構造は、V型エンジンに比べて何が違うのでしょうか?またV型エンジン以上のメリットがあるのでしょうか?
W型エンジンの構造は更に複雑?
W型エンジンの基本的な構造は V型エンジンと同じですが、バンク数が増えたことによって構成部品が増え、より複雑化しています。フォルクスワーゲンが、4バンクW12型エンジンを発表しました。
このW型エンジンは、フォルクスワーゲンの狭角V型6気筒エンジン(VR6)を2基組み合わせています。
4つのバンクを持つ12気筒エンジンなのですが、4つのバンクが明確に別れているようには見えません。見た目は幅が広いバンクの大きなV型エンジンに見えます。
VR型エンジンを2基合わせたことから、WR型12気筒とも呼ばれます。
現在はフォルクスワーゲンの傘下にあるブガッティが4バンクW16型エンジンを市販化しています。これはVR6を応用し、シリンダーを更に2つ増やしたものを2基合わせて合計16気筒としています。よって、WR型16気筒エンジンとも呼ばれます。
現在は改良が重ねられ、最大出力は1500psにも到達しています。
W型エンジンのメリット・デメリット
W型エンジンはエンジンの全長を大きくせず気筒数を倍増させることができるのが最大のメリットとなります。大排気量化、高出力化を目指すなら最も適したエンジン型式の一つとなります。
しかし、V型エンジンに比べ横幅がかなり広くなることから、車幅も広く取る必要がありコンパクトカーなどではなく、高出力がもとめられるスポーツカーや大型のサルーンでのみしか採用されないデメリットがあります。
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W型エンジン搭載車の代表例
現在市販車で4バンクW型12気筒エンジンを搭載している車は、いずれもフォルクスワーゲン社製エンジンがベースです。
また4バンクW型16気筒エンジンもVR6エンジンの延長線上でデザインされたエンジンですので、W型エンジン搭載車はある意味、兄弟車とも言えるでしょう。
4バンクW型12気筒エンジン搭載車
フォルクスワーゲン フェートン W12
6.0L W型12気筒エンジンを搭載しています。
アウディ A8 W12
6.3L W型12気筒エンジンを搭載しています。
ベントレー コンチネンタルGT
6.0L W型12気筒 ツインターボエンジンを搭載しています。
他にも搭載されている車種は存在しますが、いずれもボディサイズは大きく、価格も高価な車のみとなっています。
4バンクW型16気筒エンジン搭載車
現在はブガッティ社のスポーツカーだけに搭載されています。ブガッティ ヴェイロンの8.0L W型16気筒 クワッドターボエンジン、ブガッティ シロンの8.0L W型16気筒 クワッドターボエンジンのみです。
どちらの価格も億単位で、別次元の車と言えるでしょう。
星型やH型…変な形のエンジンは他にも!
H型エンジン
H型エンジンとはレシプロエンジンの形態の一種。水平対向や180°V型などのフラットエンジンを2段重ねに結合させた構造を持っており、正面から見るとシリンダーと結合部が「H」あるいは「エ」のように配置されていることが名前の由来と言われています。
星型エンジン
星形エンジンとは、クランクシャフトを中心にシリンダーが放射状に並べられています。20世紀半ばまで航空発動機はガソリンエンジンが中心で、その中でも空冷星型の気筒配列が最も多く採用されたそうです。
V型エンジン・W型エンジンの未来
V型エンジンは大排気量エンジンが多気筒化されるにつれ、エンジンの剛性やバランスを向上させ、車としての性能面にも貢献してきました。またW型エンジンは限られた車種のみに搭載されています。
メーカーの技術力をアピールが目的である傾向が強いので、今後その車種が劇的に増えていくことは考えづらいと思われます。
大排気量になれば、馬力もトルクも上がり性能が向上します。そんな中、レシプロエンジンは生き残りをかけてCO2の排出量を抑えるためにエンジンの排気量を少なくし、ターボ(ターボチャジャー)を装着することで車の性能を落とさないよう対応しています。
またエンジンの燃焼効率の向上や馬力の伝達ロスを少なくすること、有害物質の排出を少なくする廃棄システムなどを合わせて大排気量のままCO2の削減に成功している自動車メーカーもあります。
しかし、昨今の環境破壊への配慮が唱えられるようになってから車が排出するCO2が制限値は年々下げられています。
ガソリンだけに頼った純粋なレシプロエンジンは、近い将来、ハイブリッドや水素や電気などのエンジンへの本格的な転換期を迎えるのかもしれません。