『Zガンダム』でアムロが搭乗したディジェを立体化した、「RE/100 MSK-008 ディジェ (機動戦士Zガンダム)」(BANDAI SPIRITS)

【画像】ドムっぽさは薄れてる? ディジェとリック・ディアスのデザインを見比べる(5枚)

地上でのリック・ディアスは問題を抱えている?

『機動戦士Zガンダム』第35話「キリマンジャロの嵐」でアムロ・レイが搭乗していたモビルスーツ「ディジェ」を初めて見たとき、「えっ、これにアムロが乗ってるの?」と驚いた方は多かったのではないでしょうか。

 元・ガンダム主人公の乗機らしからぬ、モノアイの頭部をもつジオン系のデザイン・色彩の機体は、もともとはエゥーゴがジャブロー降下作戦の際に使用し、地上に残置したリック・ディアスを改造した機体です。リック・ディアス自体がかなり優秀な機体であり、アムロも搭乗して戦果を挙げています。しかし、宇宙用モビルスーツであることを示す「リック」を冠するリック・ディアスを地上で運用する際には、さまざまな問題があり、改造を余儀なくされたと思われます。

 リック・ディアスの抱えた問題点をいくつか挙げていきましょう。

 まず第一に、脱出機構の問題がありました。リック・ディアスは最新型の「全天周モニタ式」コクピットを採用しており、機体が大破した際にはイジェクション(脱出)ポッドとして機能するようになっていました。この機構はコクピットに直撃さえ受けなければパイロットが無傷で脱出できる利点を持っており、作中でもエマ・シーンやファ・ユイリィが乗機を破壊された際に生還を果たしています。

 しかし、イジェクションポット機構は宇宙だからこそ成立する機能です。もし地上で使用すればそのまま地上に落下してしまうため、パイロットは地面にたたきつけられ、ポッドのなかで重傷を負うか死亡してしまうでしょう。13話「シャトル発進」でシャトルの護衛を任されたロベルトがアッシマーに撃墜された際に、胴体中央を撃ち抜かれて脱出できずに戦死していますが、イジェクションポッドが使えないことに死の間際に気付くはめになったのかもしれません。ディジェの脱出機能については特に言及はありませんが、何らかの対応が行われたと思われます。

 第二に、冷却機構の問題があります。宇宙の温度はおよそマイナス270度です。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でクェス・パラヤが一瞬とはいえ生身で宇宙空間に飛び出し生存しているのでガンダム世界の宇宙はもう少し暖かい可能性はありますが、おそらく大差は無いでしょう。

 モビルスーツのみならず、機械を動かすときには膨大な熱が発生します。熱が溜まりすぎればパーツが膨張したり、回路が溶解するなどして機体にさまざまな不具合が発生する可能性があるのです。宇宙用のモビルスーツであれば周囲に熱を放射することにより簡単に冷却できますが、地上は北極や南極であっても宇宙よりはるかに熱いため、冷却機能が不足した可能性もあるでしょう。



ディジェがビーム・ライフルとクレイ・バズーカを構え、高火力を見せつける。画像は「RE/100 MSK-008 ディジェ (機動戦士Zガンダム)」(BANDAI SPIRITS)

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地上戦対応の具体的な変更点は?

 ここからは、リック・ディアスからディジェへの改装で変更された部分について見ていきましょう。

 武装については、ビーム・ライフルとクレイ・バズーカはリック・ディアスのものを踏襲しています。バルカン・ファランクスは廃され、カラバの主力機であるジムIIIと同等の60mmバルカン砲が搭載されています。バルカン・ファランクスの口径は55mmだったので、より修理や補給が容易な60mmに換装したと考えるのが妥当でしょう。近接用にビーム・ナギナタを装備していますが、これは単にアクシズ用モビルスーツの設定を流用したため、ジオン系の装備になったと思われます。

 冷却機能については、バックパックに2基の大型放熱板が装備されており、外見上の大きな特徴となっています。

 脚部にはジェット・スラスターを採用し、重力下での機動性を確保しています。ホバー走行も可能ですが、アムロのことですから他のサブフライトシステムに飛び乗る用途で使用していた可能性もあるでしょう。敵のベースジャバーを乗っ取る程度のことは平気でやりそうです。

 また、可変式モビルスーツやサブフライトシステムとの連携が行われた結果、地上戦が立体的な戦闘となったため、頭部のブレード・アンテナに加え放熱フィンの先端にロッド型のマルチアンテナを装備するなど、通信能力の強化が図られています。

 細かい部分としては、リック・ディアスに装備されていたトリモチ・ランチャーが廃されています。もともとエゥーゴは資金に乏しく、戦場での鹵獲(ろかく)を目的としてトリモチが装備されていました。宇宙ではダメージを与えたモビルスーツはすぐに確保しなければどこかに飛んで行ってしまいますが、地上ではその場に残ります。より鹵獲が容易な地上においては、トリモチはさほど必要ない装備だったのでしょう。

 当初はアムロ専用機として登場したディジェですが、その後少数が量産され、『機動戦士ガンダム UC』ではルオ商会が保有して運用するなど、息の長い機体となっています。これからも、さまざまなシーンでディジェはファンを楽しませてくれることでしょう。