「スーパー戦隊 OFFICIAL Mook 20世紀 1985 電撃戦隊チェンジマン [雑誌] (講談社シリーズMook?) 」(講談社)

【画像】え…っ? 「美しい」「でも声は男」 これが『チェンジマン』で曽根脚本ならではの動きをした女敵幹部「シーマ」です(3枚)

新機軸の設定でスーパー戦隊の世界がさらに広がった曽田博久さんのメインライター時代

 メインライターが上原正三さんだった初期スーパー戦隊では、敵組織の「内紛」がお約束で、終盤にかけての悪同士のしのぎあいが見物でした。そして、メインライターが曽田博久さんに交替してからは、さらにひとひねりした設定となり、戦隊メンバーも巻き込んだドラマチックな展開が魅力となります。

 曽田さんは1982年の第6作『大戦隊ゴーグルファイブ』から、上原正三さんに代わりスーパー戦隊シリーズのメインライターを連続9作品務めました。

 1985年『スーパー戦隊 OFFICIAL MOOK 20世紀 1985 電撃戦隊チェンジマン』(講談社)に掲載された鈴木正幸プロデューサーの談話によると、「メインライターは『ゴーグルV』から曽田博久さんが務めていて、さすがに少し飽きていることがわかるんですよ。それで彼が書くエピソードの幅が広がるように、変えたいという気持ちを刺激するような番組設定にしたんです。アイデアが豊富な方ですから、いろんなお話を作ってくださいました」と語っています。

 そして、鈴木プロデューサーの配慮で、曽田さんの創作意欲が刺激され、今までにない劇的な展開を楽しめるようになりました。

 1985年『電撃戦隊チェンジマン』の敵組織「大星団ゴズマ」の「シーマ」は、冷酷非情な悪の副官のひとりとして登場します。姿は長身の美女なのに、なぜか声は男性でした。実はシーマはゴズマの首領星王「バズー」に滅ぼされたアマンガ星の王女でしたが、バズーに従い星々の侵略を手助けすることで、アマンガ星を取り戻そうとしていたのです。

 シーマだけでなく、航海士「ゲーター」や副官「ブーバ」など、ゴズマのメンバーは全てバズーに敗れたために、やむを得ず服従していた者ばかりでした。さらに、なんとチェンジマンの上司である「伊吹長官」の正体も、かつてバズーに滅ぼされた星の生き残りだったのです。

 副官ブーバの犠牲によって、シーマはようやく元の王女の姿に戻り、チェンジマンの仲間に加わります。最初敵だったキャラクターが最後には味方になって、ラスボスを倒す展開に胸が躍りました。

 上原正三さんがメインライターだった1981年『太陽戦隊サンバルカン』までは、敵同士の争いに終始していましたが、曽田さんからは戦隊の方も敵の内紛に大きく関わり、クライマックスへ向けて盛り上がるようになったのです。



「スーパー戦隊 OFFICIAL Mook 20世紀 1987 光戦隊マスクマン [雑誌] (講談社シリーズMOOK) 」 (講談社)

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どんでん返しに次ぐどんでん返しで、最終回まで目が離せない曽田ワールド

 また、第11作の1987年『光戦隊マスクマン』では、スーパー戦隊版『ロミオとジュリエット』が展開します。

『マスクマン』のリーダーであるレッドマスク「タケル」の恋人の「美緒」は、実は地帝帝国チューブから送り込まれたスパイ「イアル姫」でした。しかし、人間のタケルを愛してしまったために地帝王「ゼーバ」の怒りを買い、地底深く氷柱に閉じ込められてしまいます。

 また、イアル姫の双子の兄である地帝王子「イガム」はチューブの指揮官となることで、ゼーバに滅ぼされたイガム家を再興しようと目論んでいました。タケルを愛したために「イガム家の恥」となってしまったイアル姫の恥をそそぐためにも、イガムはタケルに敵意をむき出しにします。ここから「離れ離れになったタケルと美緒は再会できるのか?」という軸で、物語は展開します。

 イアル姫とイガムは浅見美那さんのひとり2役でした。イガムは男のふりをしているという設定でしたが、女性らしい浅見さんのイガムはどう見ても男性には見えず、終盤の「実は女性だったというオチ」は、「今まで誰も女性だと気が付かなかったの?」と突っ込みたくなった視聴者も少なくなかったでしょう。それでも、敵組織のなかに戦隊メンバーの恋人が囚われており、その兄弟が敵組織の幹部という今までにない設定で最終回まで目が離せない展開になりました。

 ほかにも、毎回「友よ。君たちはなぜ、悪魔に魂を売ったのか!?」というフレーズで始まる第12作1988年『超獣戦隊ライブマン』は、文字通りかつての同窓生が敵味方に分かれて戦います。武装頭脳軍ボルトの支配者ビアスにスカウトされ、科学アカデミアのエリートだった「月形剣史」はドクター・ケンプ、「仙田ルイ」はドクター・マゼンダ、「尾村豪」はドクター・オブラーとなって、ビアスが掲げる「千点頭脳」になるべく地球を襲いました。

 一方、「ライブマン」であるレッドファルコン「天宮勇介」や、イエローファルコン「大原丈」は科学アカデミアの落ちこぼれです。優れた頭脳だけを必要とするボルトと、あらゆる生命を大切にするライブマンとの戦いが繰り広げられました。

 敵のビアスの目的は、千点頭脳を集めて自らの若さを保つことです。ケンプたちだけでなく、ドクター・アシュラやチブチ星人「ブッチー」などのボルト幹部は、全員ビアスに利用されていました。

 そして、いち早く「千点頭脳」争いから脱落したドクター・オブラーこと尾村豪以外は、ビアスに利用されたまま命を落としてしまいます。元は普通の人間でライブマンの同窓生だったドクター・ケンプやドクター・マゼンダが、自分の優秀さにこだわるあまり滅んでいく姿はむなしく憐れでした。最終的にビアスも滅び、「頭脳よりも命の方が大切なんだよ」と教えてくれる深い物語です。

 曽田さんは第14作『地球戦隊ファイブマン』までメインライターを務め、ユニークな設定とドラマチックな展開で、スーパー戦隊の歴史を彩っています。