「MG 1/100 ドワッジ改 MS-09H DWADGE CUSTOM」(バンダイ)

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「幻」なのに超有名になったモビルスーツ?

 1979年放送の『機動戦士ガンダム』は、全52話放送予定が視聴率低迷により43話で打ち切りになりました。女性ファンが『ガンダム』人気を支え、放送終了後半年で発売されたガンプラが爆発的ヒットを記録。さらに81年公開の劇場版が決定打となり、『ガンダム』は日本を代表する人気アニメとなったのです。

 富野喜幸(現・由悠季)監督が放映前に準備していたシノプシス、通称「トミノメモ」には、『ガンダム』52話分のストーリーが記されています。ここには登場予定だったはずなのに、打ち切りによって登場しなかったモビルスーツ(MS)の名も記されていました。後の作品に登場したMSもあれば、デザイン画すらなく幻に終わったMSもあります。その中の一部を紹介しましょう。

間違えやすい「ドワッジ」

 キシリア・ザビの部下、バロムが乗り、マ・クベとともにホワイトベースに強襲をかけたMSです。また、シャアの配下、ジン・ライムもこのMSに乗っていました。「宇宙特攻用モビルスーツ」と説明されており、リック・ドムの当初の名称だと考えられます。

 本放送終了後の84年、「MS-X」にMS-10 ドワッジが登場します。ジオンによるモビルスーツ開発計画「ペズン計画」によって生み出されたMSという設定が与えられました。「MS-X」とは、プラモデルが大ヒットした「MSV」(モビルスーツバリエーション)に続いて考案されたシリーズですが、「MS-X」はデザイン画と設定が発表されただけでキット化はされませんでした。

 すると、86年放送の『機動戦士ガンダムZZ』に、MS-09G ドワッジというMSが登場します。これは名前が同じなだけで、まったく別のMSであり、デザインも異なります。このことからMS-10 ドワッジは「ペズン・ドワッジ」と改名されることになりました。

 一方、MS-09G ドワッジは『機動戦士ガンダムUC』にも登場。ガンダム世界に定着しました。ドワッジは「トミノメモ」に登場したMSのなかでも知名度の高いMSですが、非常に間違えやすいMSなので注意しましょう。

マ・クベ専用「ハクジ」

 マ・クベ特注のMSです。バロムのドワッジとともにホワイトベースを襲いました。「剣技モビルスーツ」と記されていることからもわかるように、ギャンの当初の名称と考えていいでしょう。ハクジという名前からは、マ・クベが愛していた「白磁の壺」を連想します。

 デザイン画などは存在しません。「トミノメモ」にはギャンという名のMSも登場しますが、こちらはゲルググの当初の名称です。マ・クベのハクジとシャアのギャン(ややこしい)はガンダムと対決しますが、ハクジはシャアの罠とガンダムの攻勢によって敗北しました。シャアのギャンも後にガンダムに倒されます。

恐怖の山越えハンマー「ガッシャ」

 キシリアが「勇将」の異名を持つダルに与えたMSです。“山越えハンマー”という恐るべき武器を持っており、隕石浮遊帯でホワイトベースと交戦。隕石の影から放つ“山越えハンマー”で、ガンタンクで出撃したセイラを苦しめましたが、ガンダムに殲滅されました。

「MS-X」にはMS-13 ガッシャとして登場。デザイン画も作成されています。ズゴックのように頭部が存在しない水陸両用モビルスーツのようなデザインですが、宇宙での戦いを想定した設計のMSでした(ただし格闘戦メイン)。

 後に、コミック『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』にはガッシャの後継機、ドガッシャが登場します。どこか『タイムボカン』シリーズ(こちらもメカデザインは大河原邦男先生)を彷彿とさせるネーミングです。



「機動戦士ガンダム MOBILE SUIT ENSEMBLE 18 113.ギガン」(バンダイ)

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ガンダムを大破させる予定だった幻のMSとは?

シャア最後の愛機「キケロガ」

 シャアが搭乗するMSです。ララァのエルメスとともにグラナダ攻略を目指すホワイトベースと交戦しますが、ガンダムに倒されてシャアはエルメスに救出されます。また、和平交渉のために戦艦デギンで地球連邦に向かったデギン・ザビを襲撃して暗殺するのは、ギレン配下のタブロー率いるキケロガ部隊でした。

 後にボードゲーム『トワイライト・オブ・ジオン』やゲーム『SDガンダム Gジェネレーション』シリーズに登場。大戦末期、ジオン軍が本土決戦用に開発したMSであり、腕部が有線サイコミュ式ビーム砲であるという設定が与えられました。このような設定から、ジオングのプロトタイプだという考え方もあります。

シャアとアムロの最終決戦用MS「ガラバ」

 ジオン最終兵器の開発を探るため、サイド3の38バンチに潜入したアムロらを襲撃した「新鋭モビルスーツ」です。しかし、あえなくガンダムに撃破されました。その後、シャアが搭乗し、アムロのガンダムとの最終決戦で用いられましたが敗北。シャアは瀕死となってジオンの首都にたどりつきます。シャア、連戦連敗です。

 デザイン画などは存在しません。一年戦争下でのシャア最後の愛機となりますが、あまりクローズアップされませんでした。『聖戦士ダンバイン』(83年)に同名のオーラファイターが登場します。『機動戦士Zガンダム』(85年)にはハヤトらが参画する「カラバ」という組織が登場しましたが、クワトロ・バジーナ(シャア)は「(名前が)好きではない」と切って捨てていました。

腕の生えた砲台「ギガン」

 ガンダムが戦った最後のMSです。「モビルスーツと地上砲塔のあいの子」と説明されています。最終決戦の地、宇宙要塞ア・バオア・クーの「最後の防御網」として奮闘し、倒されながらもガンダムを大破させます。

「MS-X」に登場してデザイン画と設定が与えられました。頭頂部に砲塔、右腕に機関砲、左腕にクローアーム、下半身には脚の代わりに三つの車輪がついているという、通好みのMSでした。その後、コミック『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』に登場。また、OVA『機動戦士ガンダムUC』には宇宙戦仕様に改装されて登場し、古くからの『ガンダム』ファンを仰天させました。

 こうやって見返してみると、すべてのMSのネーミングに迫力と力強さを醸し出す濁点がついていて、やっぱり富野監督は基本を外さない人なんだと感じ入ります。さすが、「レコンキスタ(再征服)」に濁点をつけて『ガンダム Gのレコンギスタ』(04年)にした人です。