比較されたライバルとは次元の違いで大ヒット!

この角度からは商用ライトバンかMPV(マルチ・パーパス・ビークル=多用途車)に見えて、初代デミオは見る角度によって印象の変わる、当時としては不思議なクルマだった ©MOBY

発売当初にデミオのライバルとされたのは、ほぼ同時発売のダイハツ パイザーでしたが、4ドアセダンのシャレード・ソシアルをベースに仕立てた同車は全長4m超え、エアロバージョンでは4,130mmに達しており、コンパクトカーとしては少々大きすぎます。

さらに全高はもっとも低いグレードでも1,565mmでしたから、全車とも「発売当時のタワーパーキングなら、大半ではギリギリでお断り」という、カユイところに手が届かないもどかしさ。

たまたま同時期に発売された、コンパクトカーをベースにスペースを最大化した2列シート車ということで、パイザーのライバルとされた初代デミオでしたが、「あまりの苦境によって大きくできなかったこと」が、かえって成功につながった形となりました。

その後、全高の制約がない平面駐車場のショッピングモールやコインパーキングが増え、タワーパーキングも改装や新築でサイズの制約が緩和されたので、全高1,550mm超えのトールワゴンやスーパーハイトワゴンでも、実用性には何の支障もなくなりました。

おかげで、現在の視点で見た初代デミオは、「むしろ低くてスポーティなショートワゴン」に見えます。

しかしあらゆる制約のもと、開発コストすら制限された土壇場に生まれた初代デミオは、「バブル崩壊後の苦境にあえいでいた日本国民」と重なる存在でもあり、「安くていいクルマ」の代表格でした。

大ヒットする傑作車というのは結局のところ、どれだけ優れていたかよりも「必要な時に、必要な性能を持ち、必要とされる価格で提供されるクルマ」なのでしょう。

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