6速MTで楽しめ! 3代目フィットRS(GK5・L15B)

ホンダGK5 フィットRS

「テンゴ」スポーツの傑作

21世紀初頭のホンダを支えるベーシックモデルとして、それ自体はもちろん多数の派生車種を生んでいるフィットですが、初代モデルへ1.5リッターSOHC VTEC車が追加された事で、「ユーザーが求めるホンダらしさ」を満たしたと言えます。

スポーツカーに限らず、運転を楽しめるクルマとして大事な「走る・止まる・曲がる」の3要素を確かめるのに最適な「ジムカーナ」という短距離タイムアタック型のスピード競技でも初代から活躍しており、その最盛期と言えるのが3代目GK5フィットRS。

テンロクNA時代のスイスポへ果敢に挑む勇姿

ジムカーナ競技のPN1クラス(時期によって異なりますが、GK5が活躍した頃は1.6リッター以下のクラス)で、スズキの1.6リッターホットハッチ、ZC31S/ZC32Sスイフトスポーツ全盛期にも唯一真っ向から戦えたマシンです。

1.5リッターDOHC i-VTECのL15Bは最高出力132馬力/6,600rpm、これを6速MTで操り、排気量がやや大きく圧倒的多数派のライバルへ果敢に挑む姿は、かつて1960年代のレースで800~1,000cc級のライバルと互角以上の戦いを魅せた、S600を思い出させます。

4代目(現行)のダウンスペックで、プレミアがつく前に急ごう!

現行の4代目フィットも2022年に「RS」を追加しましたが、CAFE(メーカー別平均燃費基準)がらみで安価でも燃費が悪いハイパワー&MTの量販スポーツは都合が悪いのか、純ガソリン車は最高出力が118馬力に留まるL15ZにCVTの組み合わせのみ。

ならばと中古車市場でGK3フィットRSの6MT車を探すと、車両本体価格は78万円~244.9万円で、最新ながらCVTのみなGS4フィットRS(純ガソリン車)の195.91万円と比べ決して割高ではありません。

問題は6MT車のタマ数が全国でもわずか71台と限られることですが、納得する一台と出会うために駆けずり回る価値が、きっとあります。

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燃えよホンダスピリッツ!初代 インテグラタイプR(DC2/DB8・B18C spec.R)

ホンダDC2 インテグラタイプRクーペ

20年以上を経ても蘇る鮮烈な記憶

中古車市場でのタマ数が少なくわずか65台、車両本体の価格帯は132万~1,155万円とはいえ、安い個体はとんでもない過走行やオリジナル派には許せない、そうでなくとも不安の方が大きいカスタムが施されており、今回のオススメ条件には全く合いません。

しかし、まだ新車が販売されていた当時、通勤にも使っていて既に走行距離が15万kmを軽くオーバーするDC2(3ドア)が、フルノーマルでも市販車らしからぬ吹け上がりで猛然と加速し、ヘリカルLSDを効かせて信じがたい旋回性能を発揮した事を、筆者は知っています。

キチンとメンテすれば、現在も第一線で通用する実力

それから20年以上経った今、同じ過走行でも意味は全く異なるかもしれませんが、予防整備を中心にキッチリとメンテナンスを受けたDC2/DB8は、現在でもモータースポーツで抜群の高性能により、第一線で立派に活躍するだけの能力を持っているのは事実です。

安い個体よりシャンとしてる可能性が高い、プレミアつきの個体を買うのもいいのですが、、高い予算をつぎ込むならば、安価な個体をオーバーホールやレストアのプロに託し、本来の性能を発揮させるのを筆者は強くオススメします。

そのインパクトはプライスレス、想像するだけではもったいない!

環境のために燃費や排ガスがクリーンなエンジンもいいでしょう。

しかし、同じ高効率でも、開発者の祈り、エンジニアの魂が宿った究極のDOHC VTEC「B18C spec.R」、それもフルノーマルエンジンが、ハイカムへ切り替わってどこまでも突き抜けるように吹け上がる感覚を、今味合わずしていつ味わうのでしょうか?

ホンダコレクションホールで想像だけしてため息をつくより、どれだけ苦労しても実物を味わうだけの価値が、絶対にあります。

既に維持の容易さやコストパフォーマンスという次元から遠ざかっているものの、20年経っても夢に見るような感動は、お金には変えられません。

あえて昔の言い方をすれば、「女房を質に入れてでも乗るべきクルマ」とは、この事でしょう。