「VTEC」の4文字に胸を熱くした日々を、僕らは忘れない
ホンダ独自の可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」。
「お前、VTECって何の略だか言ってみろ!」「なんだとこの野郎!Variable valve Timing and lift Electronic Control systemだ!文句あるか?!」。
後輩がケンカで怒鳴り合ってると思って耳をそばだてていると、突然VTECの話題になってズッコケた30年前、ホンダの可変バルブタイミング・リフト機構VTECは、クルマ好き少年にとって細かい理屈はわからないまでも、ものすごい高性能を発揮する憧れのメカでした。
三菱の「MIVEC」やトヨタの「VVT」など他社の可変バルブ機構と同様、今では軽自動車にも当たり前のように採用されており、ホンダエンジンの代名詞と言ってもよいくらいですが、ごく初期には高性能自然吸気エンジンの代名詞だった事もあります。
当時は単純に「リッター100馬力オーバーを軽々発揮する高性能エンジンの代名詞」でしたが、実際は環境性能と動力性能の両立を目指し、キメ細かい制御で低燃費&低排出ガスの実現にも有利な高効率エンジンとしても優れた性能を発揮します。
そのため年々搭載車は増えていき、今や軽自動車にも当たり前のようにVTECが採用されていますが、それでもかつてのクルマ好き少年からすれば、ハイカムへ切り替わると性格が変わって猛然と吹け上がる高性能エンジンの思い出に、今でも胸が熱くなるものです。
その熱い想いのままに、特にオススメしたいVTEC搭載車を5台紹介したいと思いますが、ポイントは2つ、「現行車」と、「中古で比較的簡単に見つかり、整備やコスト面で維持が難しすぎないクルマ」。
せっかくですから環境にやさしい高効率型のVTECより、MTで操って楽しい、胸熱なスポーツ向けVTEC搭載車をご紹介したいと思います。ポイントから外れてもあえてオススメしたいクルマも混ぜてみました。
VTECとは?ホンダの最高峰ターボエンジンのサウンド音やコントローラーについても
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孤高のVTEC搭載FRスポーツS2000(AP1・F20C/AP2・F22C)
ホンダ自身が愛する、最初で最後であろうVTECの「S」
おそらくホンダが内燃機関で送り出す最後のFRスポーツであり、最初で最後のDOHC VTEC搭載FRスポーツ。
ホンダ技研工業創立50周年記念事業として、1963年にホンダが四輪車事業へ参入して最初のS500から、1970年に生産を終えたS800までの「S」シリーズを現代的解釈で蘇らせた、国産オープンスポーツとしても最強クラスの実力を誇る名車です。
厳しい排ガス規制で従来の高回転高出力型自然吸気エンジンが成り立たなくなる中でも、8,300rpmで250馬力(リッター125馬力)に達する2リッター直4DOHC VTECエンジンF20Cは健在でしたが、最大トルク(22.2kgf・m)発揮に7,500rpmを要したのは少々マニアック。
そこで2005年のマイナーチェンジで排気量を2.2Lへ拡大、最高出力は242馬力/7,800rpmに抑えた代わり、最大トルク(22.5kgf・m)を6,500rpmから発揮する、スポーツ走行の実戦から街乗りまで気持ちよい走りに向いたF22Cへと更新されました。
プレミアつきでも、それに見合った価値はある
6速MTのみでATは設定しないなど、陽気と風を感じて流すというより、常時それなりのテンションを要求されるピュアスポーツだった事もあって販売面で成功したとは言い難く、派生車や後継車もない一代きりでしたが、それが一層ストイックな魅力を増しています。
中古車市場(2022年11月、大手中古車情報サイト調べ)ではAP1が177台で価格帯は176万~880万、AP2が106台で287万~1,100万円と程度良好車にはプレミアがつきますが、「もうこんなクルマをホンダが出すことはない」と考えれば、高すぎる買い物とは思いません。
純正部品の供給継続で、朽ちるまで生涯を共にできる名車へ
何より、ホンダ自身がS2000の純正部品供給継続に並々ならぬ意欲を示しており、公式サイトの「S2000 PARTS CATALOG」ページ(https://www.honda.co.jp/S2000parts/)で、パーツカタログや供給可能部品を公開するだけでなく、かなりの頻度で更新し続けています。
ホンダが将来に向け、名車として育てる強固な意志を持っている以上、「どれだけ高性能でも、純正部品不足で維持に苦労するクルマ」と同列には語れません。
ホンダの自然吸気ツインカム&VTECサウンドを後世に残し、ともに朽ちるまで走り続けるパートナーとして、S2000以上のVTECスポーツはない!と断言できます。