「イルカふれあいユニバーサルプログラム」提供開始前にはデモンストレーションイベントの開催もされた

本プログラムの提供開始前の6月末、3名のゲストを招待し、デモンストレーションイベントを開催。参加者の1人で両手足に不自由がある車いすトラベラーの三代達也(みよたつや)氏は「スキューバダイビングの体験はしているので、抵抗やバリアを大きく感じているわけではないですが、とても楽しみにしています」とイベント前に話した。

また、同じく参加者で小学校3年生の発達障害を持つ小松香凛(こまつかりん)ちゃんは「泳げないけど、水が大好きです。今日は学校を休んで壱岐イルカパーク&リゾートに来ました。とても楽しみにしています!」と元気よく意気込みを語った。

車いすから手を伸ばし、イルカとのふれあい

参加者は実際に、トレーナーがイルカのトレーニングをする様子を見学したり、イルカにごはんをあげたり、イルカが泳ぐ入江に入水し、一緒に泳いでふれあうなど、ここでしかできない貴重な体験をした。

参加者たちは両腕・両足のチャックを長くした着脱しやすいユニバーサルウェットスーツを着用

入江に入り、間近でイルカを観察

イルカのジャンプパフォーマンス

水中スクーターも使って水中を楽しむ

海に入った後は、広くて段差のないフラットなシャワールームで体を洗い流す

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デモンストレーションイベントを終えて

参加した3名から、デモンストレーションイベントを終えてフィードバックをいただいた。

自身もユニバーサルデザイン化推進に携わる木戸俊介氏


「イルカと触れあったり餌をあげることは、五感以外にも脳や心にも良い影響をもたらす感じがしました。トレーナーがゲストにイルカの感情などを伝えてあげることで、参加者はイルカに対してより感情移入できる気がします。

また、壱岐イルカパーク&リゾートのイルカの飼育方法にも感動しました。人間優先ではなくイルカ優先の姿勢、これをゲストに話してあげることでここの施設の世界観を理解でき、より一層施設を信頼して楽しんでもらえると思います。障がい者は健常者と比べてアクティビティなどで劣等感を感じることが多いのですが、今回のようなドルフィンスイムができるようになると、やっぱりとても嬉しいですね」

フィードバックの様子

三代達也氏


「まず施設の面からすると、たとえば障がい者専用駐車場を用意したり、動きやすい動線にしたり、改良できる部分はまだまだたくさんあると感じました。さらに施設のバリアフリー情報を細かくホームページなどに載せてもらえると、こちら側が何を準備すればいいのか心構えができるので、実はとてもありがたいんです。

“施設に行ってみてできない”ということが結構あるので…。イルカとの触れ合いに関しては、トレーニングを受けるイルカと、私たち障がい者が初の試みをしていくうえで、一緒に成長していく感じがして、楽しかったです。ただ、アクティビティの中にはイルカへの餌やりなど自分にはできない動きなどもあったので、事前にどのようなアクティビティがあり、どのような動きをする必要があるのかを事前に知っておくことができれば、施設面と同様に心構えをすることができるので、良いと思いました」と話した。

小松香凛ちゃんのお母様


「娘は水が大好きな子なので、水に入ることを危険と思わない反面、実際に入ってみるとシュノーケルが使えなかったり、うまく泳げなかったりしてパニックになってしまう様子がありました。子どもたちは水が好きすぎて思いきり入ってしまって、でも入った後に何が起きるかわからないのでここに危険があると感じました。

一方で、子どもが育つうえで大事な視点がここにはたくさんあるとも思いました。障がいを持つ子の親にとって『子どもがこうゆうことをできるようにならなきゃ』といったプレッシャーがあるのですが、ここではそういった枠に囚われず、自由に子どもたちに“委ねてみる”、子どもたちを“待ってみる”というのができ、私たち親にとっても、子どもの教育にとってもすごくいい場所だと感じました」。

続けてかりんちゃんから一言「楽しかった!」とあり、その満足げな表情から初めてのイルカとの触れ合いを楽しんでいたことがよく伝わってきた。

3名の参加者それぞれが、思い思いの感動を抱き、「誰にとっても海での遊びや学びが日常となる」世界へ一歩近づいたのは間違いない。

そして、壱岐イルカパーク&リゾートのスタッフ側からは「今日のために予測を立てて、練習をしてきたが実際やってみると、練習どおりにはいきませんでした。入水し、入江の段差にゲストの方に座っていただくと、足が浮いてきちゃったり、手すりがあったほうがいいな、などたくさんの気づきがありました」とあり、同じく代表の高田佳岳氏から「障がい者の方とお話しをする中で、やはりどこかで障がい者の方はマリンアクティビティを諦めている部分があると感じていたんです。そう感じている方に、やらせてあげられること自体が純粋にすごく素敵なことだと思いました。

私たちは心の中で少なからず障がい者の方に対してバリアを張っていて、でもそれが今回のデモンストレーションイベントをきっかけに私も含めて解き放たれたような気がしました。もっともっと新しいことにトライして、多くの方に体験してほしいです。そして今回、ゲストの方に言われてとても印象に残っている言葉が『私たちは、いくつかのマリンアクティビティに挑戦してきたけど、イルカとふれあい一緒に泳げたことは、とんでもなく感動しました。たぶんマリンアクティビティをほとんどしない方が体験したら、もっと感動すると思います』と言っていただけたこと。自分たちの想像を超える感動を参加者の方たちが感じてくれてとても嬉しかったです」と達成感と意義込みを語った。