公式ネタ化した「ブロッケンJr.禁止」。画像はBANDAI SPIRITS「キン肉マン マッスルタッグマッチ Tシャツ 使用禁止柄」 (C)ゆでたまご・集英社・東映アニメーション

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ふたり同時プレイが可能なゲームってけっこうありましたよね

「ファミコン」こと「ファミリーコンピュータ」にはコントローラがふたつ備わっており、対戦や協力プレイなど、1本のゲームソフト(カセット)で楽しめる、複数人数による様々な遊びが提案されていました。とはいえそうしたなかでも、「強キャラすぎる」「必殺技がもはやチート」などといった、ケンカの元にしかならないような要素の盛り込まれたゲームや、ふたりプレイのバランスが悪いゲームもあったのは確かです。

 とはいえ、もちろんゲームソフトなどそうそう気軽に買ってもらえるものではありません。よって当時の子どもたちは、そのようにバランスの悪いゲームでも、独自のルールを設けたり、しばりを設けたりして、工夫して遊び尽くしていたものでした。

 そうした、独自ルールを設けて遊んでいたタイトルのひとつによく挙げられるのが、1985年にバンダイから発売された『キン肉マン マッスルタッグマッチ』です。2頭身で表現された、マンガ/アニメ『キン肉マン』の、おなじみの超人8人のなかからふたりを選びタッグを組んで、四角いリングを舞台にさまざまに繰り出せるプロレス技を駆使して相手を倒す、いわゆる超人プロレスを再現したアクションゲームでした。

 発売されてまもなく、全国の子どもたちのあいだで問題となったのが、「ブロッケンJr.の必殺技である毒ガス攻撃が強すぎる問題」です。一方的に相手を攻撃できる、いわゆる「ハメ技状態」にすることができるため、友だちと遊ぶときは最初のキャラ選択で「ブロッケンJr.」の取り合いになったものでした。「友だちと遊ぶときは使用禁止になった」という声もあちこちからよく聞かれ、SNSでも「対戦後は友だちとリアルファイトになります」「平和のために憲法にブロッケンJr.禁止と入れるべき」といった声が聞かれるなど、やはり同じような光景が全国各地で繰り広げられたようです。

 同じく友だちとの対戦で白熱した初代『ファミスタ』こと『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ、1986年)も、独自のルールで遊ばれていたようです。当時をよく知る識者いわく「上手い人と下手な人がはっきりと分かれてしまうゲーム」だったため、そうしたふたりが対戦すると大体ワンサイドゲームになってしまったようです。そうしたこともあってか、友だち同士の対戦で実力差があった場合、ハンディキャップのような意味合いも込めて「フォークを禁止」「盗塁禁止」、さらには「ピッチャー交代禁止」などの独自の縛りルールを設けて遊んでいたという声が、ネット上でもちらほらと見受けられます。

 そうした「縛りプレイ」は対戦ゲームにとどまるものではなく、たとえばひとりですすめていくようなゲームでも、独自の縛りを決めた上で全クリアできるかどうか、といったことを競い合って楽しんでいたものです。

 たとえば『スパルタンX』(任天堂、1985年)は、シンプルな横スクロールのアクションで、パンチやキックなどの技を繰り出して敵キャラをなぎ倒し、フロアごとに潜むボスキャラを撃破して5階の塔を制覇、恋人のシルビア救出を目指すという内容でした。タイトル画面にはふたりプレイのメニューがあるものの、ひとりずつ交代でプレイしていくというスタイルで、同時に操作することはできません。

 そのような内容のゲームながら、ネット上を眺めると、「しゃがみ蹴り禁止、パンチのみに縛っていた」「トムトム(身体の小さい戦闘員)は絶対倒さない、飛び越えたりキックしたりしない」などの独自ルールで縛って楽しんでいた様子がうかがえます。禁止事項が多くなると技術の差が縮まり、熟練度に関係なく楽しむことができたのかもしれません。

 このように、飽きてしまったゲームでも新たなルールを作ることで新鮮な楽しみが生まれる可能性があり、当時の子どもたちは実にさまざまに工夫して遊び倒していたものです。遊んでいたゲームは、現在に比べれば実にシンプルなものだったに違いありませんが、しかし「遊びの質」という意味では、そう引けを取るものではなかったといえるかもしれませんね。