『ウルトラマン』キービジュアル (C)円谷プロ

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ハヤタとウルトラマンは同一人物? どんどんややこしくなる設定

 今も子供たちに大人気のウルトラシリーズは、日本を代表する特撮シリーズでありながら、その主人公とウルトラ戦士たちの関係はなかなかどうしてシンプルではないのです。

 果たして主人公は「ウルトラ戦士」に「変身」しているのでしょうか? それとも普段の姿が「ウルトラ戦士」なのでしょうか? あるいはその両方? この「ウルトラ戦士」と主人公の関係の描き方にこそ、シリーズの変遷を辿る鍵になっているのでした。

 まず初代『ウルトラマン』における、ウルトラマンとハヤタ隊員との関係を振り返ります。原点ながらもこれが意外と複雑でした。

 第1話でウルトラマンは宇宙怪獣ベムラーを追跡するも、誤ってハヤタ隊員のビートル機と追突し、彼を死なせてしまいます。いわば「過失致死」から、我らが「ウルトラマン」の歴史は幕を開けたのです。

 そしてウルトラマンはハヤタに自分の命を分け与え「一心同体」となり、以後ご存知の大活躍をしました。ところが、この際、「ウルトラマン」の人格が「ハヤタ」にどれほど影響を与えているのかは、作中では明言されていません。

 そして次回作『ウルトラセブン』における、ウルトラセブンとモロボシ・ダンの関係はどうだったのでしょうか。特撮ファンの方ならご存知の通り、『セブン』はもともと別の特撮番組の企画として作られています。当然、世界観も『ウルトラマン』とは大きく異なり、モロボシ・ダンは宇宙人であるウルトラセブンが地球人に変身している姿でした(モデルはセブンが地球で最初に会った地球人・薩摩次郎という青年)。

 とはいえ、両者が「別企画」のままならそこまでややこしくはならなかったでしょう。ところが次回作『帰ってきたウルトラマン』第38話で、大ピンチをウルトラマン(ハヤタ)とウルトラセブン(ダン)が助けにくるのですから大変です。

 もちろん子供たちとしてはうれしいのですが、ハヤタはウルトラマンと分離したはずでは? と首を傾げた少年少女も多かったでしょう。さらに『ウルトラマンA』で、エースに変身するのは北斗と南の2名でした。さらに今作から「ウルトラ兄弟」の設定が本格導入されたことにより、各作品の主人公とウルトラ戦士との関係はダイナミックに省略されていきます。

 また、『ウルトラマンタロウ』第33話では、そのウルトラ兄弟がゾフィーを除いて地球に大集合する有名なシーンがあります。それぞれ人間の姿で降り立つのですが、ここでも「地球での仮の姿」というニュアンスで登場しました。

 例えばハヤタは「俺はこの地球ではハヤタと呼ばれていたんだ」と、最初からハヤタは地球人ではなかったかのような発言です(ウルトラマンが実在のハヤタの姿に変身している、と考えることもできます。つまり、ややこしいのです)。

 その後も「一心同体」路線と「仮の姿」路線、どちらも採用されながらウルトラシリーズは続き、その関係の描き方も進化してきました。例えば2020年放送の『ウルトラマンZ』では、ウルトラマンゼットと主人公ナツカワハルキは一体化していますが、お互いに個性的なキャラクターを持っており、定期的に亜空間でコミュニケーションを取っています。個々の「人格」が分かりやすく描かれていました。

 さらに現在放送中の『ウルトラマンブレーザー』も、ブレーザーと主人公ヒルマ・ゲントが一体化していますが、ブレーザーが何を考えているかわからない「野生児」のような設定のため、お互いの意思が同じ身体のなかでぶつかり合うシーンが描かれています。彼らの調和の過程が新機軸に据えられているのです。

 ここまで、「ウルトラ戦士」と「主人公」の不思議な関係の変遷を振り返ってきました。もちろん、子供からすればこうした設定はさておいて「自分=ウルトラマン」であり、それが全てといえば、全てです。