「棲星怪獣ジャミラ「ウルトラマン」ウルトラ怪獣シリーズEX 2001年版」(バンダイ)

【画像】やめたげて!「ジャミラ」がウルトラマンに苦手な水を大量に浴びせられている不憫なシーン

後味が悪くなるラストを迎えたかわいそうな怪獣

 特撮ヒーローの代名詞であるウルトラシリーズには、さまざまな個性的怪獣が登場し多くの子供を魅了しました。怪獣といえば「人類にとって害悪」という印象も強いですが、なかにはやむを得ない事情で地球にやってきた怪獣もいます。今回は、人間のエゴによって悲しい結末を迎えたシリーズ初期登場の怪獣を振り返ります。

 1968年放送の『ウルトラセブン』第26話「超兵器R1号」に登場したのが、再生怪獣の「ギエロン星獣」です。再生怪獣という名の通り、ウルトラ警備隊による戦闘機の新型ミサイルを打たれても再生したり、セブンの必殺技であるアイスラッガーを弾き返したりする強敵ですが、地球を襲った理由は人間に対する復讐でした。

 地球防衛国際会議によって決定した実験で、人類は「惑星攻撃用超兵器R1号」を宇宙に放ち、標的にされたギエロンの星を爆破します。しかし驚異の生命力で生き残ったギエロンは爆発のショックで変異して怪獣となり、報復するために地球にやってきたのです。これは明らかに人類に落ち度があり、ギエロンの行動に文句はいえない状況でした。

 同情したくなるギエロンでしたが、セブンに右の翼を引きちぎられて、最後にはアイスラッガーで喉を引き裂かれて絶命しました。この第26話はセブンのなかでも「重いストーリー」として有名で、ネット上には「ギエロンは本当にかわいそうな怪獣で、何も悪くないと思う」「鳴き声が『助けて』と言っているように聞えるのが余計にツライ」といった声があがっています。ちなみに作中で主人公のモロボシ・ダンは兵器の実験に対し、「絶対にR1号の実験を妨害するべきだった」と後悔していました。

 人間の陰謀によって悲しい結末を迎えたのは、1966年放送の『ウルトラマン』(TBS系)第23話に登場した棲星怪獣の「ジャミラ」も同様です。そもそもジャミラの元の姿は某国の宇宙飛行士で、宇宙開発の競争期に事故で遭難し、漂着した星の過酷な環境に適応したことで怪獣に変貌しました。その後は助けがくるどころか、国際批判を恐れた母国が事故を隠蔽します。ジャミラは人命よりも周りからの印象を優先した人びとに憤り、ギエロンと同じく復讐するために地球にやってきました。

 しかしウルトラマンがその復讐を見過ごすはずもなく、水が弱点であることを知ったウルトラマンは「ウルトラ水流」を発射し、受けたジャミラは断末魔を発して苦しみながら息絶えます。最後の絶命シーンで、悶えながらも国際平和会議場の国旗を潰している姿は、多くの視聴者に大きな衝撃を与えたことでしょう。

 憎しみに満ちた怪獣の行動は人間にとって脅威ですが、なかには「この怪獣、悪いやつではないかも」と思わせる怪獣もいました。それは『ウルトラマン』に登場したメガトン怪獣「スカイドン」も当てはまるでしょう。作中では四つ足でノソノソと歩き、眠くなれば寝てしまうというかわいげのある様子が描かれています。

 特に印象的なシーンといえば、ウルトラマンが次から次へと攻撃を繰り出すも、体が頑丈すぎるためにまったくダメージを受けず、終いにはウルトラマンを無視して寝てしまうところです。ウルトラマンでは手が負えなくなり、苦肉の策としてスカイドンの体内に水素を注入して、浮かせて宇宙に返すという作戦が実施されます。

 しかし水素注入後、事情を知らない航空自衛隊の戦闘機によって攻撃されて、体内の水素が抜けて東京に墜落し始めてしまい、ウルトラマンは仕方なくスカイドンに体当たりをして粉砕しました。地球にとって不都合なため、追い出すに至る経緯は理解できるものの、連携ミスによって命を落としたスカイドンに、ネット上には、「無意味な殺傷」「ほぼ寝てただけなのにかわいそう」といった同情の声が今もあがっています。

 ウルトラマンは悪と対にいる存在のヒーローですが、人間のエゴによって怪獣の命を奪ってもいます。そんなことを深く考えさせてくれるのが、「ウルトラマン」シリーズの魅力なのかもしれません。