最終話の後半27ページの原画が掲載された書籍「キン肉マン 大解剖 新装版 」(三栄書房)

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「許すことなどなにもない」キン肉マンの心の広さが胸にしみる

 1979年から「週刊少年ジャンプ」で連載された大人気マンガ『キン肉マン』は、1987年に一度最終回を迎えます(2011年から新シリーズで復活)。コミックス24巻から始まった「キン肉星王位争奪編」で最終回を迎えるのですが、どのような展開で最後を飾ったのか振り返ります。

 最後を飾ることになったエピソード「キン肉星王位争奪編」は、超人オリンピックでV2を果たし、宇宙超人タッグトーナメントで優勝を達成したキン肉マンに、父・真弓がキン肉星の王位を譲ると決心した場面から始ります。キン肉マンが大王職に即位するためには、105人の天上の神に認められる必要がありました。

 しかし、キン肉マンに脅威を感じていた5人の「邪悪の神」はキン肉マンの即位に反対し、それぞれ独自に王位継承者候補を立ててきたのです。彼らはキン肉マンと偶然同じ日に同じ病院で生まれおり、病院で発生した火災の混乱ですり替えられたと主張します。そしてそれぞれが仲間と5人組を結成し、王位の座をかけて団体戦が行われることになりました。

 キン肉マンはかつてのライバルでもあるテリーマンやロビンマスクたちとチームを結成し、苦戦を強いられながらもマリポーサチームとゼブラチームを破って決勝の舞台に立ちます。決勝の相手はビッグボディチームとソルジャーチームを倒して勝ち上がってきた、スーパー・フェニックスチームです。

 最後の戦いは、お互いのチームの大将による一騎討ちです。マリポーサチームのミキサー大帝戦で、持ち前の火事場のクソ力を奪われていたキン肉マンは、スーパー・フェニックスの猛攻の前に大苦戦。一時は心臓が停止するまで追い込まれてしまいます。あわや敗北かというほどの危機に追い込まれましたが、仲間たちの活躍で火事場のクソ力を取り戻し、最終話で7000万パワーマッスル・スパークを決めて逆転勝利を果たすのでした。

 激闘を制したキン肉マンの前に現れた100人の超人神は、スーパー・フェニックスにとどめを刺すように促しますが、キン肉マンはこれを拒否します。そして王位の座をかけて戦ったなかでたどり着いた境地について語りだすのです。その境地とは「すべての超人たちを血のつながりなど関係なく 家族のように愛せよ」というものでした。

 そして空から落ちてきた無数の花にフェイス・フラッシュを放ち、これまでに亡くなった超人たちを復活させながらキン肉マンは自身の想いを語り続けます。「自分より年上の経験豊かなベテラン超人には兄 姉として教えを乞い…」「自分より年下の まだ超人格闘者になりたての未熟な者たちは弟 妹として指導し…」「そして まだ物心のついたばかりの子共たちに対しては自分の子としてかわいがりたくましく育てる!!」と、王としての心得を口にするのでした。

 さらに息を吹き返し許しを請うスーパー・フェニックスを抱きかかえ、「許すことなど何もない…」とキン肉マンは寛容な心を示します。ラストのコマは王冠とマントを身に着け、スーパー・フェニックスを抱きかかえるキン肉マンを仲間たちが称賛している場面でした。そこに「友情は成長のおそい植物である」から始まる、アメリカ合衆国初代大統領のジョージ・ワシントンの名言がかぶさります。

 1979年の連載開始当初は、ダメ超人として描かれることの多かったキン肉マンが、ラストに見せた王としての威厳に感動したファンも少なくないでしょう。2024年にアニメ新シリーズの「完璧超人始祖編」が始まる前に、そんなキン肉マンの成長物語を冬休みに今一度一気読みしてみてはいかがでしょうか。