避難民を輸送したガンペリーを立体化した、「EXモデル 1/144 ガンペリー」(BANDAI SPIRITS)

【地味すぎる】『ガンダム』8話に登場した、連邦・ジオンのやられメカたち(6枚)

ジオンの追撃を受けるホワイトベース隊

『機動戦士ガンダム』第8話「戦場は荒野」は、劇場版『ガンダム』ではカットされてしまったストーリーですが、ジオン兵と避難民が互いに助け合うシーンが描かれるなど、戦場での人間模様が描かれた珠玉のエピソードです。

 ジオン軍の勢力下にある北米地域へと降下したホワイトベース隊は追撃部隊を振り切ることができず、ガルマ・ザビ旗下の部隊による追撃を受けていました。しかもこのときホワイトベース隊には地球降下の際に撃沈されたサラミスの艦長リード大尉(中尉)が乗艦しており、ブライトより階級が上のため臨時のホワイトベース指揮官となっていたのです。

 しかし事実上の指揮を執っていたのはブライトであり、指揮権の混乱を招いていました。加えて訓練を受けていない民間人が度重なる戦闘を切り抜けてきたため疲労もたまり、状況は悪化の一途をたどっていたのです。

 それでもなんとかジオンの追撃を振り切ろうと作戦を練っていたところに、避難民の一団が「ここで降ろしてほしい」と申し出てきます。そのなかのひとり、ペルシアという女性は近隣にあるセント・アンジュという街が夫の故郷であり、子供をそこで育てたいと訴えました。リード大尉は戦闘中に勝手なことを言い出した避難民に腹を立てましたが、ブライトはジオン軍に一時休戦を申し込む口実として避難民を利用しようと提案します。

 避難民を降ろすためのガンペリーにガンダムを搭載し、ジオン軍に思わぬ方向から奇襲攻撃をかけることにしたのです。

 予期せぬ一時休戦にジオン側も戸惑いましたが、シャアは休戦中に足の遅いマゼラアタックなどの陸上兵器を展開するようにガルマに提案、「これなら必ず勝てる」と喜ぶガルマに対し、「これで勝てねば貴様は無能だ」と心中であざ笑いました。ジオン側の内情も決して良くはなかったのです。

 避難民を降ろす口実をもとに、両勢力が保有する武器を最大限生かす戦術的な機動を行なう。これは『ガンダム』以前には見られなかった非常にリアルなストーリーであり、『ガンダム』の価値と存在を今なお際立たせる革新的な展開だったと言えるでしょう。



カイ・シデンが搭乗して、ホワイトベースを襲うジオン軍部隊と戦ったMS「ガンキャノン」を立体化した、「HGUC 190 機動戦士ガンダム RX-77-2 ガンキャノン 1/144スケール」(BANDAI SPIRITS)

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ジオン兵とペルシア母子

 無事に地上に降りた避難民たちは空の上から見かけた家を目指すことにしましたが、ペルシア母子だけはセント・アンジュを目指して旅立ちます。しかしガンペリーを監視していたルッグン(コードネーム ビッグ・ジョン)のジオン兵は集団を離れたペルシア母子のことが気にかかり、追いかけ始めたのです。

 この動きを怪しみ、ペルシアたちが危ないと感じたアムロはルッグンを撃墜しようとしましたが、物資を投下したことに気付き、ビームライフルを降ろします。その後、発見されたアムロはやむを得ずルッグンを撃墜しますが、コクピットへの直撃は避けるように攻撃を加えたため、パイロットは無事に脱出に成功しています。

 このビッグ・ジョンをめぐる一連の流れは、これまで生き延びるために敵を倒し続けてきたアムロが、「相手も人なのだ」と理解し始めた重要なシーンと言えるでしょう。

 しかし戦いの流れは止まらず、ホワイトベース隊とジオン軍は本格的な戦闘へと突入します。この回ではカイ・シデンが初めてガンキャノンで出撃し、戦闘の恐怖からキャノン砲を連射してしまい瞬く間に弾薬を討ち尽くしてしまいました。

「俺だって! 俺だってぇっ!」と泣き叫びながら戦っていたカイは、初の実戦でザクを2機撃破したアムロが規格外の怪物であることに気付いたのではないでしょうか。

 ガンダムによる奇襲もうまくいき、ジオン軍に混乱をもたらしましたが、物量に圧倒的な差があったため、戦いは長引き夜へと突入しました。アムロの奮戦もあり、ホワイトベース隊はどうにかジオン軍を退けました。

 一方そのころ、戦場の片隅では脱出したビッグ・ジョンのジオン兵がペルシア母子から手当てを受けていたのです。セント・アンジェに向かうと語ったペルシアに、ジオン兵は別れ際、「ここが1年前までセント・アンジェがあった場所です」と、残酷な事実を伝えます。

 セント・アンジェは街の痕跡などほぼ感じられないただの荒野と化していた……。戦争がもたらした現実に、ペルシアはただ泣き崩れるほかは無かったのです。

『機動戦士ガンダム』が作られていた時代であれば、かつて太平洋戦争で繰り広げられた破壊の数々を目の当たりにした方々が大勢いたことでしょう。かつて街があった場所が跡形もなく消し飛ぶというスト―リーは、どこかで本当にあったことだったのもしれません。