『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』より、山崎賢人演じる東方仗助 (C)2017 映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」製作委員会  (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

【画像】「全員ジョジョ顔」というわけにはいかないけど? 熱演で再現された『ジョジョ』4部の実写キャラたち(8枚)

原作とまるで違う実写化映画版に酷評だったけど?

 アニメやマンガの実写化映画作品は毎年何本も作られ、日本の映画市場を語るうえで欠かせない要素のひとつでしょう。数々の実写版が世に排出されましたが、どうしても原作との違いが発生し、評価が分かれることも珍しくありません。なかには酷評されたことで逆に脚光を浴びる場合もあり、ネット上では未だに語られる伝説の作品もあります。

 そんななか、最近X(旧:Twitter)上で「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」というハッシュタグが話題になり、評判が悪い実写化作品でも「ここが好き」と良い部分を挙げる人が続々と現れました。そこで今回は、特に擁護の声が多かった実写化映画4作を振り返ります。

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』

 2009年~2021年まで「別冊少年マガジン」(講談社)にて連載されたマンガ『進撃の巨人』(作:諫山創)といえば、2023年11月に約10年続いたTVアニメシリーズに幕を閉じたのが記憶に新しいでしょう。

 マンガとアニメが好評の同作は、樋口真嗣監督による実写映画化された作品も有名で、2015年8月に前編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』、同年9月に後編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』の2部作が公開されました。

 予告動画では人を食らう巨人や疾走感のある立体機動装置での移動がCGでリアルに再現されており、期待感が高まったのか前編・後編ともに公開当初は全国映画動員ランキング初登場1位になっています。結果的に前編は興行収入32.5億円を記録したものの、後編では一気に失速して前篇の半分ほどの16.8億円に留まりました。

 2部作に対して酷評も相次ぎ、さまざまな映画レビューサイトには「原作無視の限度を超えてて『進撃の巨人』の良さがまるでない」「リヴァイ(シキシマというキャラに変更)はいないし、そもそもみんな日本人だし、キャストが微妙だった」「演技、CG、演出、編集、音楽のすべてが酷い」など容赦のない声があがりました。原作通りではなく『進撃の巨人』をもとにしたオリジナル作品になっていることや、トータルの演出面が、多くのファンから反感を買ったようです。

 しかし、今も実写『進撃の巨人』を擁護する意見も多く、前述の「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」では、「日本映画のVFX技術の高さを見せられてワクワクが止まらなかった」「改めて見返すと、原作のストーリーをいい具合にアレンジしていて、むしろ原作リスペクトを感じる」「現代特撮において最高傑作のアクションと迫力」と、映像面や映画の枠に収めたストーリーを評価する声もありました。

 全体的に「原作とは別物と思って見れば普通に良い映画」という意見も多く、それを踏まえると「原作通りの再現を待ち望んだファン」が多かったことから酷評につながったとも考えられます。

『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』

「週刊少年ジャンプ」で連載され、現在も「ウルトラジャンプ」でシリーズが続く『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)は、第4部の実写版が作られました。監督は三池崇史さん、主演は山﨑賢人さんによる『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』は2017年8月4日に公開され、最終的な興行収入は9億2000万円と、あまり成功したとはいえない結果になっています。

 未だに続編の第二章を公開する予定はない状況で、やはり結果が出ていないために足踏み状態になっていると考えざるを得ません。

 気になるレビューサイトの意見を見ていくと、超能力を具現化した「スタンド」のCGには一定数の評価は得ているものの「ビジュアルが衣装感(無理やり着せられてる)満載で、見ていてずっと違和感があった」「取ってつけたような演出ばかり」「悪くないクオリティってことで見たけど、みんなの指標が甘すぎだと疑うレベルに微妙だった」など不評の声が目立ちました。もちろん支持する意見もあるのですが、低評価している人は「とことん拒絶している」という印象です。

 さて今回の「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」ではどういう意見が出ていたかというと、「確かに及第点にはギリギリ届いていないけど、酷評するほどの作品ではない」「億泰役の新田真剣佑さんの演技がドハマりしてた。『ワンピース』のゾロ役もハマってたから実写化キャストが得意なのか」「スタンドの再現は最高なのに加え、ストーリーも分かりやすくまとまっている良作」と評価に多少の揺れはあるものの、「決して駄作ではない」という意見が多くあがっていました。

 映画のラストでは4部の凶悪殺人鬼のラスボス・吉良吉影の存在も示唆されたため、続きが気になっている人も多いようです。

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原作至上主義と内容優先で対立する実写化映画の評価

『聖闘士星矢 The Beginning』



映画『聖闘士星矢 The Beginning』ポスタービジュアル (C)2023 TOEI ANIMATION CO., Ltd. All Rights Reserved

 高い評価を得られなかった実写化映画は国内だけでなく、海外の作品にも存在します。『聖闘士星矢』はハリウッドのスタッフやキャストが集結して実写版が制作されており、2023年4月28日に『聖闘士星矢 The Beginning』(監督:トメック・バギンスキー)が公開されました。

 主演に『ジョジョ』にも出演した新田真剣佑さんが抜擢されたり、制作費は日本円にすると約90億円という大金がかけられていたりと、公開前に日本で話題になったものの、日本やアメリカともに興行は振るいませんでした。全世界興行収入でも10億弱となり、ネット上では「大コケ」と言われてしまっています。

 実際に同作を観た人からは、「アクションがカンフーっぽくて萎えた。ハリウッド実写版の大失敗作『ドラゴンボールエボリューション』の再来だ」「原作はどこに行ったのかってレベル。真剣佑が良かった以外に何もない作品」「聖衣のデザインが原作とまったく違って失望した」と、やはり低評価のレビューが一定数出ていました。とはいっても5段階評価で3、4の人も少なくなかったので、酷評とまではいかず、宣伝がうまくいかなかった作品と捉えるべきでしょう。

 やはり「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」の投稿でも同作を支持する意見が挙げられており、「単なる世代の思い出補正が強かっただけであって、原作1話、アニメ1話を観れば映画の良さがわかるはず」「制作側の原作リスペクトは感じられたけど、感じない人は単なる自分のこだわりが強いだけでは?」「続編を期待できるくらいには面白かった」「アクション凄いし、CGもしっかりしててさすがのハリウッドクオリティだと思う」などの擁護コメントがあがっています。

 同作のクオリティが低かったという見方ではなく、『聖闘士星矢』世代とそれ以外の世代によっても受け止め方が変わっているようです。

『CASSHERN』

 最後に取り上げるのは、「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」の投稿で最も多くのコメントがあがっていた実写化映画『CASSHERN』(監督:紀里谷和明)です。

 2004年公開の『CASSHERN』は、1973年~1974年にフジテレビ系列で放送されたTVアニメ『新造人間キャシャーン』を原作として実写化されました。同作は50年に及ぶ戦争によって荒廃した世界で、命を蘇らせる細胞が完成して新生命体が誕生するも、「新造細胞」を巡って争いが始まるという物語です。

 映像作家である紀里谷さんの映画監督デビュー作で、加えて伊勢谷友介さんや麻生久美子さん、樋口可南子さん、及川光博さんといった豪華キャストで注目を集めました。収益も悪くなかったようで、制作費は10億円未満だったのにもかかわらず、興行収入は約15億円です。

 決して「コケた」実写化映画ではないのですが、レビューでは「父親の無念を晴らす主人公の東鉄也が、映画では『マッドサイエンティストの父親に新造人間にされる』と改変されてガッカリした。そこは変えちゃいけないだろ、と」「お金がかかってそうな映像が流れるだけで、ずっと退屈だった」「原作ファンを敵に回した作品」など、マイナス評価の声が目立ちました。

 しかし前述した通り、良くも悪くも独特な同作を擁護する人は多く、「ネットの評判のせいで食わず嫌いが増えているけど、世界観・演出・音楽・役者のどれもがハイクオリティ」「確かに原作からかけ離れているのは認める。それでも原作を凌駕するほど戦闘シーンが最高に良かった」「とにかく観ればわかる。紀里谷監督による映像に圧倒される」といった支持する声が数多くあがっています。

 また、同作のテーマソングには紀里谷監督の元妻である宇多田ヒカルさんの「誰かの願いが叶うころ」が抜擢されており、「エンドロールが最高潮で、この曲が流れてきたら自然と涙が出た」「挿入歌に椎名林檎さんの曲も使われてるし、改めて思うとキャスト以外も豪華すぎる」と、評価されています。

 ここまで酷評だった実写化映画を振り返りましたが、やはり「原作ファンの許容範囲」によって作品の評価が左右されているように感じます。2時間程度の映画にまとめる都合上どうしても改変が生じるため、原作を知らない人ほど「良作」と捉える人は多いものの、「原作重視」であれば悪い評価につながる傾向にあるようです。X上を賑わせた「#どんなに酷評されても擁護してきた映画」をきっかけに、取り上げた4作を見直してみてはいかがでしょうか。