『サザエさん』のキービジュアル (C)長谷川町子美術館

【画像】昔の堀川くんは「ワカメのボーイフレンド」ポジションだった? まだ普通だった頃の貴重な記述とは

堀川くんのモデルは?

 国民的アニメ『サザエさん』には、ネット上で「サイコパス」扱いされている名物キャラがいます。ワカメの同級生で「好奇心旺盛な男の子」である堀川くんは、登場するたびに奇怪な行動を繰り返し視聴者を驚かせてきました。今回はそんなサイコパス堀川くんの、厳選された「サイコ回」を紹介します。

 まず有名なのが、2014年7月20日放送の「ホリカワくんの卵」という回です。この回では堀川くんが飼い始めたひよこに「わかめ」という名前をつけ、「卵を産んだら真っ先に人間のワカメちゃんに食べてもらいます」と語るなど、まさに堀川くんの本領発揮といった内容になっています。

 ひよこに「わかめ」と名付けた理由を問うと、堀川くんは「美味しい卵を産むと思う」「ワカメ(カタカナ)とわかめ(ひらがな)だから別の名前になる」など、謎の独自ルールを披露しました。

 そのほか、2015年5月10日放送の「いちばん怖い人」という回も衝撃的な内容でした。この回では自分の家でおたまじゃくしを飼えなかった堀川くんが磯野家に不法侵入し、なぜか磯野家の床下で勝手に飼育するという摩訶不思議な行為をはたらきます。

 さらに怖いのが、タラちゃんに見つかり怒られた時に放った言葉。堀川くんの口から出たのは「ごめん、今度は見つからないようにするよ」と、ズレまくった反省の言葉でした。ナチュラルに「サイコパスなセリフ」が飛び出す堀川くんに、視聴者も恐怖を感じたようです。

 また、2014年1月5日の「ホリカワくんの弟」という回も狂気を感じさせます。この回では堀川くんが「僕の弟」という作文を書き先生に絶賛されるという、一見心温まる内容になっています。しかし、堀川くんはひとりっ子です。ひとりっ子なのに弟とはどういうことなのでしょうか?

 なんと堀川くんは、人の形に見える壁の染みに「ヘイキチ」という名前を付けて、キャッチボールをしていたのでした。この壁の染みを、「弟」として作文を書いていたのです。「サイコパスを超えてもはやホラー」「マジで心配」と、視聴者からさまざまな反応が出ていました。

 最後に紹介するのは、2013年1月20日放送の「ああホリカワくん」という回です。ある日突然、堀川くんが「ワカメちゃんと一緒に登校したい」と言い出します。理由を聞くと、「女の子がひとりで学校に行くのは危険だから」という紳士的な返答でした。

 しかし、登校の待ち合わせに現れた堀川くんは、帽子にマスクという犯罪者のようないで立ちでやってきます。実は堀川くんは、通学途中にある怖いおじさんの家にピンポンダッシュをし、その姿をおじさんに目撃されていました。そこで堀川くんは、ワカメを盾にして助かろうとしていたのです。

 そんな卑怯な堀川くんでしたが、怖いおじさんは元警察官で、犯人は堀川くんだとあっさりバレます。しかし、堀川くん以外にもピンポンダッシュした小学生が現れると、懲りない堀川くんは自分の罪もその子に押し付けようとしました。

 このようにたびたび話題になる堀川くんは、長谷川町子先生の原作マンガには登場しない、初期からアニメの脚本家を務めている雪室俊一さんが生み出したキャラです。

 アニメ『サザエさん』の50周年記念本「サザエさんヒストリーブック」(2019年発売)のインタビューで、雪室さんは「高校時代の友人」が堀川くんの名前の由来だと語っています。雪室さんのシナリオをほめて、脚本家の道に進むきっかけを作ってくれた恩人のような存在だそうです。

 雪室さんはこのインタビューで、堀川くんのことを「彼の一見不思議な行動はいろいろ言われたりもしているみたいですが、なんにでも興味を持って、いろいろな目線で物事を見ることのできる子なんです」と語っていました。そんな堀川くんが次に何に興味を持ってどんな行動をとるのか、要注目です。