現在、東京・吉祥寺のリベストギャラリー創にて、漫画家・上條淳士の「画業40周年記念展(前篇)」が開催中だ(11月28日まで)[写真1]。

  上條淳士は、1983年、短編「モッブ★ハンター」にてデビュー。その後「週刊少年サンデー」で連載した、パンクバンド出身のアイドルのサクセスストーリー『To-y』が大ヒット。さらには、日本各地の“基地の街”を舞台にしたクライムアクション『SEX』、ストリートファイトに明け暮れる少年の青春を描いた『赤×黒』、そして、今はもう見ることができない再開発前の“渋谷”の姿が刻み込まれた『8(エイト)』など、まさに時代時代を映し出す鏡のような作品の数々を生み出してきた漫画家である。

■白と黒の強烈なキアロスクーロが生み出すロック魂

  なお、今回の「画業40周年記念展」の「前篇」では――おそらくは「ファンが一番喜ぶものを見せたい」という作者の考えがあってのことだろう――おもに展示されているのは、代表作である『To-y』[写真2]と、『SEX』[写真3]の名場面の原画だ(もちろん他の作品の原画も展示されている)。

  また、THE STREET SLIDERS、BUCK-TICK、吉川晃司といったバンドやミュージシャンを描いたイラストレーションも数多く展示されており、これまでさまざまなアーティストとのコラボレーションを通じて音楽と漫画の世界をつないできた、上條ならではの仕事の一端を垣間見ることもできるだろう[写真4・5]。

  というよりも、たまたま手にしたのがギターではなくペンだったというだけのことで、漫画作品にせよイラストレーションにせよ、上條淳士がこの40年間ひたすら表現し続けてきたのは、常にストリートの立場から既成概念を破壊しようという“ロックの魂”そのものだった、といえなくもない。そう、誤解を恐れずにいわせていただければ、音楽をテーマにした作品に限らず、あの白と黒のキアロスクーロ(明暗対比)が強烈な上條のすべての絵が奏でているのは、ロック――さらにいえば、パンクの激しいサウンドなのである。

  画業40周年のプロジェクトはまだまだ始まったばかりだが(今回の個展の他にも、いくつかのイベントや出版企画が進行中とのこと)、まずはその色褪せない“音”を肌で感じるために、吉祥寺へ足を運んでみるといいだろう。

(取材・文=島田一志)