大切な愛車は、できるかぎり「キズ1つない状態」でキープしておきたいものです。それだけに、ボディをぶつけたり擦ったりした際のショックは大きく、しばらく落ち込んでしまうものでしょう。

精神的なダメージに加えて、家計にとって大きな負担となるのが「板金塗装の費用」です。ぶつけた箇所によっては、思わぬ出費を強いられるケースも少なくありません。

今回は板金塗装に従事するプロの方々に、「高額になりがちなボディの箇所」について話を聞きました。

「ちょっとぶつけただけ」でも数十万円に?

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板金修理の費用は、ボディのダメージだけではなく、「損傷箇所の付近にどんな部品があるか」によっても左右されます。周辺部品の交換が必要となれば、それだけ費用も加算されるため、パッと見の印象に対して見積りが高額になることも。

こうした部品代は、やはり時代が進むにつれて高くなっているようです。30年以上にわたって板金工場を経営するオーナーに「修理代が意外と高くなる箇所」について聞くと、次のように答えてくれました。

「まずはミニバンの電動スライドドアですかね。ボディが長いので左側を巻き込んじゃう人が多くて、機構が複雑なので修理代も高くなりがちなんですよ。

交換が必要な場合、普通のドアが10万円だとしたら、電動スライドドアは20万円ほどかかるイメージですかね。多くの場合、リアフェンダーにもダメージがありますから、実際にはもっと高額になるケースもあります。

でももう、電動スライドドアに限らず、最近の車はどこをぶつけても高くなっちゃいますね。やっぱり先進安全装備などの技術が向上するにつれて、部品も複雑になっていますから。たとえばバンパーを擦るだけでもコーナーセンサーの交換が必要になるとか。

フロント部分はとくに高額になりがちで、エンブレム裏など設置されているミリ波レーダーを交換する場合には部品代だけで5万円~10万円ほどかかりますし、ヘッドライトも片側だけで10万円近くなるケースがあります。

フロントバンパーを交換する場合には、バンパーだけで10万円くらいかかりますし、事故の衝撃や交換作業でレーダーの調整作業が必要になると、2万円~3万円ほど加算されることになります。

そうして細かい部品代や作業料が重なっていくうちに、パッと見はそこまでダメージがないのに修理代は30万円くらいになってしまう、というケースもありますよ。正直、『昔なら10万円しないのになぁ』と思ってしまうこともありますね」(板金工場経営者・勤務歴36年)

車のオーナーとしても、「ちょっとぶつけただけ」のキズやヘコミで数十万円の見積りを出されては、相当のショックを受けてしまうでしょう。

とはいえ前走車を自動で追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や障害物の接近を知らせるクリアランスソナーなど、現在では不可欠となっている装備も多く、修理代の高さは「便利さの代償」として受け入れるほかないのかもしれません。

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車に絶望的なダメージを与える気象現象とは

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事故のほかにも、車のボディがダメージを受けてしまうケースは考えられます。なかでも避けがたいのが、「異常気象」に由来する被害です。

「やっぱり雹(ひょう)でしょうね。ダメージを受ける箇所が多く、範囲としてもボディ全体に被害が生じますから、かなり費用はかかってしまいます。

大小のヘコミが100箇所以上もできてしまっていることも珍しくないですし、そうなるとやはり、修理費用が100万円を超えてしまうこともあります。ボンネットやルーフはもちろんですが、ガラス交換が必要になったり、ボディ側面にもダメージがあったり。

板金で対応するにせよ、パネルを交換するにせよ、ほぼ全塗装になってしまいますから、塗装の費用だけで数十万になることもありますね。

あと雹害の際に大変なのは、作業スケジュールが集中することです。雹が降ったエリアの車が修理工場に殺到しますし、1台1台にかかる時間もやはり長くなりますから、直すまでに数ヶ月、場合によっては半年以上ということもあります」(板金工場スタッフ・勤務歴12年)

雹は積乱雲のなかで上昇気流にのった水分が、氷の塊となって地上に落ちてくる気象現象であり、ときにはゴルフボールほどのサイズになることも。無数の氷の塊が、無防備な車のボディに降り注いできたとしたら……やはり被害は想像を絶するものになるはずです。

車両保険に入っていれば、エコノミー型でも一般型でも雹害に対する補償はなされますが、加入していない場合には自己負担での修理となるため、かなりの痛手となることが想定されます。

また車両保険で修理代が賄われたとしても、上のお話にあるように、雹が降ったあとは多くの車が被害を受け、近隣の板金工場が混雑すると予想されます。愛車がボコボコの状態のまま何ヶ月も過ごす、というのは気分のいいものではありませんから、被害を受けたら即座に修理工場に依頼したり、また少し離れたエリアの工場を検討したりといった対策が必要なのかもしれません。

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