ミニチュア・ドールハウスってどんなもの?

国道1号沿いに立つ特徴的な建物

施設の中心である「箱根ドールハウス美術館」は、「芦之湯フラワーセンター」の跡地を利用して2016年にオープンしました。

常設展は展示品が随時入れ替わる

「ドールハウス」とは、実物の建物を12分の1サイズにしたミニチュア美術工芸品のこと。記録にある最も古いドールハウスは、1558年にドイツ・バイエルン王国の侯爵が愛娘に贈ったものだそうです。その後、オランダやイギリスでも制作されるようになり、世界中に広まりました。貴族のステータスシンボルだったドールハウスは、やがて子どもの知育玩具としての役割も担うようになります。このミュージアムでは、アンティークから現代作家の作品まで、世界各国の100点以上を所蔵しています。

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世界の2大プライベートコレクションは必見!

19世紀のロンドン郊外の典型的な住居(ヴィヴィアン・グリーン・コレクション)

常設展の目玉は、世界の2大プライベートコレクション。その1つが、映画『第三の男』の原作者、グレアム・グリーンの夫人(のちに離別)による「ヴィヴィアン・グリーン・コレクション」です。彼女は1700~1900年代のイギリスのドールハウスの収集に力を入れていました。

『ハスケル・ハウス』(ヴィヴィアン・グリーン・コレクション)

なかでも、イギリスの近代バレエの父といわれるアーノルド・ハスケル卿が供与した『ハスケル・ハウス』は、当時のイギリス貴族のライフスタイルを伝える貴重な逸品です。古いドールハウスは持ち主が変わるたびに中の調度品も入れ替わったそうですが、こちらは1920年代半ばに施された装飾がそのまま残されています。家具やカーテンなどの内装はすべて手作りだというから驚きです。

『デモイン・バンガロー』のキッチン(モッツ・コレクション)

『デモイン・バンガロー』の子ども部屋(モッツ・コレクション)

2大プライベートコレクションのもう1つが、「モッツ・コレクション」。アメリカ・アイオア州のモッツ夫妻が集めたり制作したりしたもので、その規模は世界最大級といわれています。モッツ一家が最初に暮らした家を再現した『デモイン・バンガロー』は、四方から鑑賞できる珍しいタイプ。幅193cm、奥行102cm、高さ60cmのドールハウスの中に、リビングやダイニング、サンルームなどが精巧に作られており、いつまでも眺めていたくなります。

完成まで20年以上要した『モッツ雑貨店』(モッツ・コレクション)

ドールハウスの最高峰とうたわれるのが、アイオワ州オコポジ湖畔に実在した店を再現した『モッツ雑貨店』です。当時の雑貨店は、日用品の販売だけでなく、電話をかけたり手紙を出したりする地域のコミュニケーションの場でもありました。

なんと三猿の姿も。『モッツ雑貨店』(モッツ・コレクション)

店内には、モッツ一家のミニチュアコレクションや、手作りした小物が所狭しと並んでいます。一部にはアジアの影響が見られ、じっくり観察すると、日本でもおなじみのものを発見できるかも!