外資系ホテルでは希少!日本人シェフのフレンチレストラン

六本木エリアのランドマークの一つ、東京ミッドタウンの上層階にある「ザ・リッツ・カールトン東京」は、東京にある世界的ラグジュアリーホテルの代表格といえる高級ホテルです。今回ご紹介する「Héritage by Kei Kobayashi」は、ロビーフロアの45階にあります。

ホテルのメインエントランスや各階のエレベーターフロアに一歩足を踏み入れた瞬間から、ザ・リッツ・カールトンの世界観に引き込まれるような格調の高さを感じます。ですがエレベーターで45階のロビーフロアに上がってみると、天井の高いザ・ロビーラウンジの明るい雰囲気が緊張をほぐしてくれます。宿泊客は外国の旅行者が多いのに対し、ザ・ロビーラウンジはアフタヌーンティーを楽しむ日本人の利用が目立ちます。「ザ・リッツ・カールトン東京」はオープンして17年経ち、大切な人と過ごす場としてラウンジやレストランが定着しているのがわかります。

ザ・ロビーラウンジ奥の一角にレストランの入り口があります。

この入り口の先には、手前にチョコレート&ペストリーの「La Boutique」、中央部にビストロノミー料理の「TOWERS」、そして最も奥に「Héritage by Kei Kobayashi」があります。

「Héritage by Kei Kobayashi」は、小林氏が料理はもちろん、空間、サービスまで監修を行い、レストランの料理長としてタッグを組むのは村島輝樹氏。店名の「Héritage(=遺産)」には、「フランス人が創り出した『遺産=フランス料理』を次の世代へ繋ぐ者として、人々にフランス料理に興味を持っていただくきっかけの場になれば」という小林氏の想いが込められています。

外資系ホテルのメインダイニングを、日本人シェフが手がけるのは希少なことで、いかに小林氏がフランス料理界で偉業を成し遂げているのかが分かりますし、また格調高い印象の「ザ・リッツ・カールトン東京」が時代の変化に対して柔軟であることにも驚きます。

たくさんのテーブルが並ぶ「TOWERS」を通り抜けて、この扉の先が「Héritage by Kei Kobayashi」です。インテリアは、重厚感のある調度品にさわやかなアクアブルーが映え、シックで軽やかな印象。特にランチタイムでは外光がたっぷりと店内に注ぎ、非日常的な印象の紫の花々が彩りを添えています。

そしてなんといってもこの眺め。天井まで続く窓からは高層ビルが林立する大都会・TOKYOの景色を一望できます。東京にいながらこれほど空が広く見えるのも、高層階ならでは。

ご褒美チェック
地上200mからの眺めもご褒美のうち!夜景ももちろん素敵ですが、昼間のこの爽快な眺望も格別。開放的な気分に包まれて食事を楽しめば、充実した時間とともにリフレッシュ感も味わえそうです。


ソファ席も窓に面した造りになっています。食事とともに東京の大パノラマが堪能できるのがこのレストランの魅力の一つです。

今回ご紹介のメニューは、前菜、メイン、デザートの3品の「デジュネ」1万1800円。それではいよいよ、お料理をいただきます。

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ひと口ごとに至福の喜び。伝統が創り上げた料理の偉大さを知る

まずは前菜の「パテ・アン・クルート」。「パテ・アン・クルート」は、肉などの具材をミンチやペーストにしたものをパイに包んで焼き上げる、伝統的なフランス料理の一つです。

このレストランの「パテ・アン・クルート」は、牛タンと鴨のモモ肉を粗くミンチにしたものをベースに、中央にフォアグラ、希少な仔牛の乳腺のリー・ド・ヴォー、モリーユ茸を入れ、さらに底にはピスタチオ、上部にはフォン・ド・ヴォーなどが多層的に組み合わされています。このひと切れの中に、料理人の技術と創造性が凝縮されているそうです。

ちなみに使用する肉類などの具材は、2カ月程度で変わるそう。季節ごとの食材を使って丁寧に味が組み立てられています。

フランス料理をいただくなら、やはりワインを一緒に。「パテ・アン・クルート」に合ったおすすめの白ワイン「ドメーヌ デ セネショー、シャトーヌフ デュ パプ ブラン、ローヌ」グラス3800円をお願いしました。

ナイフで切って口元へ運ぶと、複雑なスパイスの香りがして、その香りがより食べたい気持ちを増幅させます。粗めにミンチされた肉片を噛むたびに、肉や脂のうま味が口中に広がります。そこへ白ワインをひと口。口の中のうま味をさらに膨らませて、もう一度味わいの波が口の中を満たします。たったひと口で、胸がいっぱいになるような幸せな気持ちになれる、そんな瞬間がありました。

こういった感覚が、フランス料理を味わう楽しみ方なのでしょうか。この「パテ・アン・クルート」は、伝統が創り上げてきたフランス料理の醍醐味を体験させてくれる一品です。

次はメインです。肉と魚から選べますが、前菜の「パテ・アン・クルート」が、量は多くないものの、肉料理としての満足感を充分に満たしてくれたので、メインは魚を選択しました。この日の魚料理は「メヌケのロースト ラタトゥイユとベーコンチップ」です。

聞くところによると、料理長の村島氏は自ら市場へ出向き魚を選ぶほど、魚には思い入れがあるそう。ここへ来たら、魚料理を選ぶのがおすすめですよ!

ご褒美チェック!
魚料理も白ワインが合いますが、もしもう一杯ワインを飲む余裕があれば、魚料理に合うワインをオーダーしてみましょう。お店のおすすめは「シャトー マルゲリート ファンタスティック ロゼ、コート ド プロヴァンス」グラス3200円です!


メバルの仲間のメヌケ(アコウダイ)を、皮目はパリッと、身はほとんど火を入れずふっくらと焼き上げています。淡白な身の味わいを増幅させるのに合わせるのが、なんと肉汁を使った鶏のジュース!ソースのようにかけて食べるのですが、動物性の脂のうま味を足すという調理法はフランス料理ではよくあるそうです。カリカリのベーコンチップも同様の役割を果たします。

一緒にお皿に盛り付けられたラタトゥイユは、トマトを使わず、煮込むときに入れる野菜の順番によって、下に入れた野菜にうま味を吸い込ませて作るのだそうです。

アクセントになるのがフワンボワーズ・ビネガーで味付けしたゴボウ。針のように細くても、フワンボワーズの華やかな香りとビネガーのキリッとした酸味、ゴボウ特有の香りがしっかりとして主張があります。料理に酸味を利かせるのも、フランス料理の重要なポイントなんだとか。

このコースの締めを飾るのは、バラの形が美しい「国産の柑橘を使ったヴァシュラン」です。ヴァシュランはメレンゲでアイスやフルーツを挟んだフランス・サヴォワ地方が発祥のデザート。「小林氏もヴァシュランがお気に入りで、小林氏の作る料理からデザートに移り変わるのに、もっとも適していると思います」とペストリーシェフの小堀真弓さん。

ベリー系のソースをかけるのがポピュラーですが、日本らしく旬のフルーツを使っており、日本でしか食べられないデザートになっています。

生姜のアイス、文旦のシャーベットに、柑橘のサラダを合わせたその味わいも素晴らしいのですが、何といってもこの見た目が美しい!小堀さんが長年、独自に試作を重ねて完成したメレンゲのバラを、この「Héritage by Kei Kobayashi」のデザートで開花させたのだそう。

小林氏の世界観を軸に、料理長、ペストリーシェフがそれぞれの力や思いを尽くしたコースが、このレストランの魅力です。