E8系「つばさ」-山形新幹線で25年ぶりの新型車両 「6m」のノーズで速度性能と車内環境を両立 (THE列車)

山形新幹線でも営業最高速度300km/hを実現

2024年3月16日、山形新幹線に新たな車両・E8系「つばさ」がデビューしました。山形新幹線では1999年に投入されたE3系以来、25年ぶりとなる新型車両です。

宇都宮〜福島駅間の営業最高速度は従来のE3系「つばさ」の275km/hから300km/hに向上し、東京〜新庄駅間の所要時間が最大4分短縮しました。 最速達列車は東京~山形駅間を2時間22分、 東京~新庄間を3時間7分で結びます。

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E8系「つばさ」はどんな列車?

ベースはE6系。でもちょっと違うノーズ形状

先頭車はE5系やE6系と同様に、ロングノーズ形状が採用されています。開発のベースとなったE6系はノーズの長さが13mにも及びましたが、E8系では車内空間の確保とのバランスを考慮して9mに変更。編成定員はE6系が332名だったところ、E8系では355名と、23席増えています。

空気解析によって最適化されたアローライン形状のノーズにより、営業最高速度は300km/hを実現。東京〜新庄駅間の所要時間が最大4分短縮されました。

山形を感じられるデザイン

デザインコンセプトは「豊かな風土と心を編む列車」。エクステリアデザインは山形の自然を表現した従来のE3系「つばさ」のカラーリングを踏襲し、「蔵王ビアンコ」をベースに、車体上部に「おしどりパープル」を配しました。帯色として横にまっすぐ伸びる「紅花イエロー」は、山形の風土と離れた土地にいる人々の心の結びつきを表現しています。

「上質な山形の旅」を演出するグリーン車(11号車)

レッグレスト付きのシートが2席(A・B席)+2席(C・D席)の横4列に配置されたグリーン車は、山形県を代表する一級河川の最上川と出羽三山の主峰・月山がモチーフ。中央の通路を最上川の流れに見立て、緑色の腰掛けは針葉樹林の広がる月山をイメージしています。

サクラ材を取り入れた肘掛けや、新庄市の伝統織物・亀綾織(かめあやおり)の柄や光沢のある質感を表現したシート生地など、細部にも「山形の旅」を演出するこだわりが隠されています。

「山形の風土」を表現した普通車(12〜17号車)

普通車もグリーン車と同様に、2席(A・B席)+2席(C・D席)の横4列。可動式のヘッドレストが付いた色鮮やかなシートが並びます。こちらは山形県の花として定められているベニバナがカラーテーマで、客室は従来のE3系よりもさらに明るい印象になりました。シート生地のグラデーションカラーは、太陽を浴びるベニバナの黄色から、紅色のエキスとして抽出されるまでの過程を表現しています。

注目は全席に装備された電源コンセント。設置場所が肘掛下の根元部分となったことで、充電コードが座席の出入りやリクライニングボタン操作の邪魔になる心配もありません。

利便性や快適性がさらに向上した車内設備

訪日外国人の利用も念頭に、スーツケースに対応した大型荷物スペースを全車両に確保。車内のバリアフリー化も推進し、グリーン車に1席、普通車に2席分の車椅子スペースを確保したほか、12号車にはバリアフリートイレと多目的室が設けられています。

また、E3系「つばさ」では両先頭車のみに搭載されていた制振制御装置「フルアクティブサスペンション」を、E8系では全車両に搭載。乗り心地がさらに向上しています。

縁の下で安全走行を支える融雪ヒーター

豪雪地帯を走る山形新幹線。巻き上げた雪が台車に付着して塊になると、それが走行中に落下して窓ガラスを破損するなどの危険性があります。上り列車ではこれまで、福島駅での停車中に人手で雪を落とす作業を行ってきました。

そこでE8系では、台車部に着雪対策のヒーターを搭載。安全性の向上や、除雪作業の負担軽減に効果が期待されています。