「ブルーインパルス」はなぜ”海外進出“しないのか メリットはいろいろありそうなのに

空自の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」は日本人の多くがその存在を知るものの、海外でその技を披露したことはこれまで1度しかありません。なぜなのでしょうか。

能登半島地震の被災地上空も飛んだ

 空自の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」は今でこそ高い人気を誇り、たとえば2024年3月18日に能登半島地震の被災地上空を激励飛行して話題となったように、今では空自の広報役以上の役目を果たしています。しかしその一方で、他国の曲技飛行チームのように、海外の航空ショーでその姿を見ることはほとんどありません。なぜなのでしょうか。

「ブルーインパルス」が生まれた1960年代は、敗戦後の歴史から自衛隊に反対する人も多く、空自の存在を知ってもらうためにチームが結成されたといわれています。その一方、こうした活動に重点を置いているため、海外へは1997年の米空軍創設50周年を記念した航空ショーへ遠征したのみです。

 ブルーインパルスの役目からすれば、無理に海外の航空ショーへ参加する必要ないでしょう。しかし、各国のアクロバットチームの目的を探っていくと、親善大使や派遣国の産業のアピールなども役目と気づかされます。

 カラフルで目立つ塗装と曲技飛行が、友好を示すメッセージなのは明らかです。また、シンガポール航空ショーに参加する韓国空軍の「ブラックイーグルス」が台北やフィリピンで途中給油するように、経由・給油地となる国との友好関係構築にもつながります。

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メリットがありそうなのに…なぜしない?

 さらに、チーム機が自国で開発されたのであれば、トレードショーである航空ショーへの派遣は、性能をアピールする絶好の場であり、広告塔にもなるのです。ブラックイーグルスのチーム機T-50は米ロッキード・マーチンの技術支援を受けて開発されましたが、2024年2月のシンガポール航空ショーでは、拍手と歓声が見ていた韓国人のあいだで起こりました。それだけ、韓国はT-50を自国産としてアピールしているのです。

 その一方で日本は第2次世界大戦による歴史的背景から、アジアの国々と友好関係を築くのが遅れてきたと言えます。しかし、中国の覇権に備えるため、近年は自衛隊と各国の軍と共同訓練は増え、シンガポール航空ショーの開催期間中は、自衛隊の統合幕僚監部とシンガポール軍は防衛協力の協議が行われています。

 こうした、現場レベルの態勢を整えるだけでなく、その国の国民にも、友好国である日本の自衛隊を広く知ってもらう必要がこれからは重要になるでしょう。それが日本との結びつきを強めることにつながります。防衛装備移転三原則により装備品の輸出も可能になったことから、日本製品の品質の良さをアピールする役目もより欠かせなくなってくるでしょう。

 派遣には、今のチーム機T-4の耐用年数との兼ね合いだけでなく、日本で展示飛行を見られなくなる期間も出てきます。しかしも、「世界に日本への協力を求める」役目は、ブルーインパルスを一層重要な存在に押し上げると筆者は考えています。