南大東島ダイビングの魅力と2024年現在の最新情報
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南大東島がどこにあるか知っているだろうか?沖縄本島から東に360km、太平洋の水深4000mにポツンと現れる2つのサンゴ礁の島が大東諸島の「南大東島」と「北大東島」である。
日本国内でいつかは潜ってみたいダイビングアイランドはいくつかあるが、その中でも小笠原諸島や与那国島、宮古諸島の多良間島に負けず劣らずの透明度を誇るのが大東諸島でのダイビング。
まだまだ知られていない南北大東島のダイビングを、2023年に新規オープンしたダイビングショップ「ボロジノDIVE」のガイドで陸も海も地底湖までも調査してきた。
【ボロジノとは】
1820年にロシアの艦隊が発見して、船名のBorodino号から名を取り「South Borodino Islands」として世界地図に掲載されたことが歴史の始まり。沖縄本島から見て「果てしなく東」の大東島と名がついた今でも、ボロジノアイランドとして呼ばれている。
南大東島とは?
南大東島の概要と地理
南大東島へのアクセス方法
南大東島のダイビングについて
南大東島ダイビングの魅力とは?
南大東島のダイビングで出会える生物
南大東島のダイビングショップを紹介
ショップの特徴と提供サービス
南大東島のダイビングスポットとその特徴
ヤギバナ
ゴンゴン穴
ケーブル
塩屋ホール
アカバハマ
実釣り場
古南釣り場
料金と予約方法
ファンダイビング料金
器材レンタル料金
宿泊料金
ダイビング&宿泊セット割引
南大東島ダイビングのベストシーズンと特長
月別の特長とおすすめ時期
12月〜3月は透明度と魚介グルメのベストシーズン
4月〜7月は生物観察のベストシーズン
8月〜11月は台風か安定かの不安定なシーズン
南大東島のダイビングをさらに楽しむためのコツと注意点
ドリフトダイビングの注意点
水中写真や動画撮影のコツや注意点
南大東島ダイビングのまとめ
南大東島の宿付きダイビングショップ ボロジノDIVE
南大東島とは?
開拓中の南大東島 ふるさと文化センターで撮影
南大東島の居酒屋では「島4800万年、人100年」と書かれたポスターを見かける。旧石器時代から3万8000年の歴史がある日本の中で、明治時代からやっと人間が住み始めたという歴史の浅い島なのだ。マグロやサワラ、カジキが釣れることで釣りや漁業は沖縄県内では有名だが、海の中はまだまだ開拓中!人類未到のポイントに潜れる可能性もある。
南大東島の概要と地理
飛行機の窓から見た南大東島 広大なサトウキビ畑と大きな池が見える
南大東島は沖縄県に所属しているが、地理も歴史も沖縄よりも伊豆諸島の八丈島や小笠原諸島に近い島だ。たった130年前まで無人島だった島に、八丈島からはるばる航海してきた開拓団が移住してサトウキビのプランテーションを作った。今でも主産業であるサトウキビ農業は、島の特産品でもあるラム酒「コルコル」や、沖縄唯一の機関車や鉄道跡といった観光資源になっている。
島の成り立ちはとても壮大!インドネシアの東側にあるニューギニア諸島で火山島として地球上に誕生し、「フィリピン海プレート」に乗って沖縄近海までやってきた。島は海中に沈んで頂上にサンゴ礁を形成し、その後に再び隆起して石灰岩の島となった。石灰岩は酸性雨で溶ける地質なので、島の地下には鍾乳洞や地底湖が200以上もあると言われている。まるでメキシコのユカタン半島だ。地底湖も調査・探検が続いており、近い将来、セノーテのように神秘的な鍾乳石の洞窟を潜ることができるかもしれない。
現在水中調査中の地底湖を案内してもらった
対して、沖縄の島々は「ユーラシアプレート」に位置している。地球規模で海底地形を見ると同じフィリピン海プレートには伊豆半島・伊豆諸島・小笠原諸島・マリアナ諸島があり、それらの島で見られる魚や固有種と言われてきた魚に南大東島で出会うことができる。
南大東島へのアクセス方法
沖縄の離島を結ぶ琉球エアーコミューターの飛行機
飛行機で行く場合は那覇空港から毎日1〜2便がJALグループのRACで就航。約1時間のフライトで絶海に浮かぶ島が見えてくる。仕事関係の人が多く利用する8:00の便なら、到着日から3ダイブが可能。料金は片道12,000円〜30,000円とやや高め。座席数が39席しかないので早めの予約が必要。搭乗の際は窓側の席で水深2000mの海と一面がサトウキビとダイトウビロウに覆われた島の景色を楽しんでほしい。
クレーンで荷物や人を積み下ろしする南大東島のフェリー
船で行く場合は那覇の泊港から週に1〜2便の定期船「だいとう」が南大東島間を発着。約15時間の長旅だが、夕方17:00に乗って船内で食事をとり、ベッドで眠りにつけば朝の8:00に到着するのであっという間だ。料金は片道約5,800円とお手頃価格。また、断崖絶壁で波やうねりの激しい南大東島は、着岸が困難なので船から港へ巨大なクレーンで荷物や人を積み下ろすのでUFOキャッチャーのようなアトラクションを楽しむために船旅を選ぶ方もいるくらい人気がある。
飛行機は高額、船は前月まで出港日が分からず予約が取りづらいこともあり、南大東島は「沖縄で最も行きづらい島」と言われている。しかし、そのような秘境感を味わえるからこそ日本中から島旅好きや秘境ハンター、リゾバ女子たちに「最後に行きつく島」と言われ、着いた時の感動と居心地の良さが愛され続けている。
南大東島のダイビングについて
南大東島は隆起環礁という世界的に見ても珍しい島で、山や川がないので汚水が海に流れ出ることがほとんどなく、平均透明度が40mに達する。サンゴ礁の石灰岩で造られたアーチやクレバスの地形が多く、地形スポットで有名な宮古島に近い環境だが、島の周囲が水深2000mもあるので沿岸でダイビングしてもすぐに水深が深くなる。ボートからエントリーすると絵の具のような真っ青な「ボロジノブルー」の海中は水面から水深30〜40mまで丸見え。そのまま水底まで潜降し、潮に乗ってドリフトダイビングで潜るのが主流だ。
南大東島ダイビングの魅力とは?
南大東島のダイビングは何といっても40mまで見えてしまう透明度が1番の魅力!そこには巨大なイソバナやウミウチワなどの原始的な風景や、日本で最も美しく珍しいハゼと言われるシコンハタタテハゼ、沖縄の他の島では見ることができない日本固有種のユウゼンなどのフィッシュウォッチングが楽しめる。ワイドかマクロか、カメラやレンズを選ぶのに悩んでしまう海だ。
断崖絶壁の南大東島にはビーチがない。潮の干満で砂浜のにごりが沖合へ運ばれることがなく、沿岸から沖合まで常に透明度が高いことがボロジノブルーの美しさ。現地のガイドが「今日は濁ってますね」と言うようなプランクトンが多い日でも、透明度・透視度ともに30mは見えていた。
レア種やサメとの出会いも魅力だが、透明度が高いということは浮遊物が少ないので、地形ダイビングの写真が相当きれいに撮れることが一番の魅力だと感じた。
南大東島のダイビングで出会える生物
1.愛称の「ヘルフリッチ」から英名がLavender Blushed Dartfishに変わってしまったシコンハタタテハゼ。新しい名前のようにラベンダー色の体色がとても美しい。2ヶ所の水深40m地点で発見。
2.日本固有種として友禅染の名が付けられたユウゼン。伊豆諸島の八丈島や小笠原諸島でしか見られないチョウチョウウオだが、沖縄では大東諸島のみ見られる。水深10m前後〜40mに生息。
3.英名のGrey Reef Sharkから「グレイリーフ」と呼ばれるオグロメジロザメ。パラオなど海外の海でよく見る美しい流線形のサメが島の周囲に住み着いている。素潜りしていると集まってきて怖い。
その他にも、ハワイに多いトンプソンチョウチョウウオやキイロハギ、小笠原諸島に多いコガネヤッコ、レンテンヤッコ、シテンチョウチョウウオやシチセンチョウチョウウオ、ハクテンカタギなどの珍しい魚も見られる。後述するダイビングスポット情報内で紹介していこう。
南大東島のダイビングショップを紹介
フラットで使いやすいボロジノDIVEの和船
南大東島では20年ほど営業していたダイビングショップが閉業し、約5年間はスキューバダイビングができない環境だった。つい最近(2023年5月)に、島に移住したダイビングガイドがサービスをオープン。続いて、南大東島出身で釣りや素潜り漁の漁業、宿泊業、飲食業、建築業など幅広く事業を営む屋嘉比康太氏(以後、康太さん)が、自社所有する和船でダイビングサービス「ボロジノDIVE」を開始。2024年の一般客受け入れスタートに向けて、ダイバーが快適に過ごせるよう施設を準備中。
ショップの特徴と提供サービス
ボロジノDIVEのオーナーガイド 屋嘉比康太さん
16歳の頃から素潜りで島中を潜っていた康太さんは、水中の地形や潮の流れ、サメや回遊魚の出現ポイントに精通している。島で唯一の自社船ダイビングで、海況が良い日は北大東島まで約1時間の遠征ダイブも可能。また、北大東島で宿を経営しており、1泊2日の島観光付きダイビングトリップも人気がある。
立地の良い通り沿いにあるショップ施設
南大東島のメインストリートにダイビング設備を建設中で、すでに器材洗い場と干し場、ログ付けやバーベキューを楽しめる憩いのテラスが完成している。漁師でもある康太さんが獲ってきたミーバイ(ハタ科の高級魚)やイセエビを使った海鮮BBQは絶品だ。
ログ付やバーベキューで利用する屋外テラス
一棟貸しコテージタイプやコンテナハウスタイプの宿泊施設も建築中で、南大東島の悩みであった宿泊予約の取りづらさや快適性が大きく変わりそうだ。