人生に大切なのは、おいしい珈琲と良い音楽、そして楽しいおしゃべり?:パーラーアコ(石川県)
それまで馴染みのなかった街へ、純喫茶が連れてきてくれることも多々あります。2018年発行の拙著『クリームソーダ純喫茶めぐり』の取材では、26都道府県へ足を運び、それぞれオリジナリティあふれるクリームソーダを観察してきました。
「パーラーアコ」外観
その中で訪れた石川県小松市の「パーラーアコ」は2023年11月8日で創業55周年を迎えたそう。まるで目の前でコンサートが行われているような臨場感あふれる音を楽しめるJBLオリンパスの巨大スピーカーが鎮座しています。そこから流れるとびきりのジャズを聴きながら寛げるお店です。
「ジャズ喫茶」と聞くとハードルが高いように思いますが、こちらはまったくそんなことはなく、今年で92歳になったお元気でやさしいマスターは、クリームソーダや珈琲を飲みながらおしゃべりするだけでも歓迎してくださるのです。赤色とクリーム色の椅子が並ぶテーブル席もゆったりできていいのですが、せっかくでしたら良い音を存分に浴びることができるカウンター席へぜひ。
JBLオリンパスの巨大スピーカーから流れる音楽を楽しめる
「コーヒータイムが人の暮らしと人生を豊かにしている」がモットーのマスターが書き記す格言はじわじわと心に響き、旅から帰ったあともたまに思い浮かべるほど。
今も飾られている光るメニュー看板、以前飼っていた猫をモチーフにしたマッチ箱(現在配布はなし)や、くるくるした髪の毛がかわいい女の子が描かれた名刺も素敵なのでチェックをお忘れなく。
パーラーアコ
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母子で守る大切な場所。想いが成就するという秘密の赤い部屋とは:珈琲るーむ森永(和歌山県)
和歌山最古の喫茶店と言われる「珈琲るーむ森永」との出会いも取材がきっかけでした。現在もお店にいらっしゃる平川彩榮さん(お母様)のご主人が創業し、10年ほど後に結婚した彩榮さんも共にお店を営むようになり、今は娘の森美和さんとお店を守っています。店名は、「誰でも知っていて覚えやすい」という理由で「森永ミルクキャラメル」からとったそう。確かに一度聞いたら忘れることのない知名度です。
「珈琲るーむ森永」外観
どなたが描いたのか気になってしまう軒下の看板、少し掠れた丸い取っ手が愛おしい、昔は自動だったドア、そこに書かれたまぶしい金色の店名、喫茶の代表的なメニューが並ぶ2段のサンプルケース……と入る前からわくわくが止まりません。
店内は大きく2つに分かれ、幻想的な赤橙色の光に包まれた奥の小部屋は、赤富士の絵画や観音様の頭部像が妖艶な雰囲気を醸し出しています。この席に座った二人の恋は成就する、という噂話も……。
通りに面した手前の空間は差し込む光で明るく、外を眺めながらぼんやりするのに最適です。かつてわたしが訪れたのは晴れた日でしたが、雨に見惚れる日も味わってみたいと思うのでした。
一目見て、「ブローチにして胸に飾りたい」とときめいた壁の木彫作品は、すべて平川さんによるものだと伺ってその器用さにびっくり。現在も体調が良い日には新しい作品を生み出しているそうです。
平川さんによる手作りの木彫作品
左から、娘の森美和さんと、母の平川彩榮さん
こちらで過ごしたひとときを思い出すと、旅とはどこか特別なところを忙しなく巡ることではなく、自分が落ち着ける場所を探し続けることなのだと気付くのです。
珈琲るーむ森永
どの喫茶店もそこで生活する人にとってとても大切な場所。束の間、お邪魔させてもらっていろいろな気付きや思い出を得て帰る。それが「良い旅」なのではないかと思っています。未来永劫続くものはない世界ですから、心動くものや場所に出合ったなら、気の向くままそこに飛び込んでみませんか? まだ見ぬ純喫茶たちへの恋心を胸に、わたしも引き続き全国を巡っていきたいと思っています。
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