日本の秋の風物詩といえば、「紅葉(こうよう)」。燃えるような美しい紅葉を見て、「日本に生まれてよかった」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。

しかし一口に紅葉といっても、木や色の違いによって、さまざまな種類があります。紅葉をもっと深く楽しむために、紅葉の種類やもみじの種類、もみじとカエデの違いなどを押さえておきましょう。

目次

<1. 紅葉ってそもそも何?>

<2. 紅葉はどんな種類に分けられる?>

<3. もみじとカエデはどう違う? 見分け方は?>

<4. 有名なもみじやカエデの種類>

<5. 紅葉狩りが楽しめる場所>

1. 紅葉ってそもそも何?



<出典元:写真AC

そもそも「紅葉(こうよう)」とは、おもに落葉広葉樹の葉が落ちる前に、葉の色が変わる現象のこと。冬になると気温が下がるだけでなく、空気が乾燥して水分量も減るため、木が葉をつけたままでいると、貴重な水分がさらに減ってしまいます。そこで、木は自らを守るために葉を落とします。寒い冬を迎えるために、木が葉を落とす準備段階が「紅葉」なのです。

普段、木の葉が緑色に見えるのは、クロロフィル(葉緑体)が含まれているためですが、木は冬支度を始めるにあたって、葉の根本に「離層」と呼ばれるバリアのようなものを作って、水や養分の行き来を減らします。さらに、葉のクロロフィルを分解して、養分として幹に送り込みます。葉のクロロフィルが減ることで、緑色が薄まり、別の色素の色が目立つようになることで、葉が黄色や赤に見えるようになるのです。

広葉樹の場合、日中の最低気温が8度以下になると葉が色づきはじめ、5度以下になると一気に紅葉が進みます。美しい紅葉の条件として、「昼夜の寒暖差が大きい」「太陽の光がふんだんに当たる」「適度な湿気がある」などが挙げられます。

2. 紅葉はどんな種類に分けられる?

秋の終わりに、木々の葉が一斉に赤や黄、オレンジに染まる姿はとても美しいですよね。一口に「紅葉」といっても、木の種類や色などによっていくつかの種類があります。

葉の形の違いで分けられる(もみじとカエデ)



<出典元:写真AC

紅葉の代名詞といえば「もみじ」ですが、もみじと似た植物として「カエデ」が挙げられます。実は、植物学的に「もみじ」はカエデ属に分類されるため、もみじもカエデも同じ仲間。おもに葉の形の違いによって、カエデの仲間のうち、いくつかの品種が「もみじ」と呼ばれているのです。

「もみじ」の名は、秋に草木が赤や黄に変わることを意味する動詞「もみず」に由来します。一方、「カエデ」は「葉の形がカエルの手に似ている」ことから、「かへるで」が転じて「カエデ」と呼ばれるようになりました。

植物学による違いで分けられる



<出典元:写真AC

「紅葉」と聞くと、真っ先にもみじやカエデが浮かびますが、紅葉する木はほかにもたくさんあります。

イチョウ(イチョウ属)、ソメイヨシノ(サクラ属)、ナンキンハゼ(ナンキンハゼ属)、ハナミズキ(ミズキ属)、モミジバフウ(フウ属)、ニシキギ(ニシキギ属)、ドウダンツツジ(ドウダンツツジ属)など、カエデ属以外にも色の変化を楽しませてくれる木はさまざま。

よく知られたもみじやカエデ、イチョウ以外で紅葉している木を見かけたら、「これはどんな種類の木だろう?」と興味を持って見てみたいものです。

イチョウは紅葉でなく黄葉?



<出典元:写真AC

一般に、落葉前に葉が赤や黄、オレンジに変わることを「紅葉」といいますが、色によってさらに細分化することもあります。

赤色に変わるものを「紅葉(こうよう)」、黄色に変わるものを「黄葉(こうよう、おうよう)」、褐色になるものを「褐葉(かつよう)」と呼ぶため、イチョウの葉が黄色く変化する現象は、厳密にいえば「黄葉」なのです。

ただし、「紅葉」は「黄葉」や「褐葉」も含めた自然現象の総称として使われることが多いため、イチョウの葉が黄色く変化することを「紅葉」と呼んでも間違いではありません。

3. もみじとカエデはどう違う? 見分け方は?



<出典元:写真AC

先ほど「もみじとカエデは葉の見た目で区別される」と述べましたが、両者の違いを意識したことがある人は少ないのではないでしょうか。

もみじとカエデを見分ける一番のポイントは「葉の形」です。明確な定義はありませんが、もみじの特徴として、小さめの葉に5つ以上の深い切り込みがあり、手の平を広げたような形をしていることが挙げられます。一方、比較的大きな葉に浅い切り込みが入っていて、葉先が細かな形状をしているものは「カエデ」と呼ばれます。ただしカエデの葉は、三角形や五角形に近いものや丸い形をしたものまで、実際にはさまざまなものがあります。

葉の形以外でもみじとカエデを区別する要素として「色の鮮やかさ」があります。カエデの中でも、葉の形が手のひらのように整っていて、色鮮やかに紅葉するものを「もみじ」と呼んでいるのです。

ちなみに、「もみじ」と「カエデ」を区別するのは日本特有の習慣で、英語でカエデは「maple」、もみじは「Japanese maple」と呼ばれます。

4. 有名なもみじやカエデの種類

紅葉する木はさまざまとはいえ、やはり葉の形が特徴的で鮮やかに色づくもみじやカエデの紅葉の美しさは格別。もみじやカエデにも色々な種類があるので、おもな品種を知っておけば、秋の紅葉がより深く楽しめますよ。

イロハモミジ



<出典元:写真AC

もみじの代名詞ともいえるのが、「イロハモミジ」。日本では福島県以南の本州と四国、九州に自生し、「イロハ」の名は、5~7つに分かれた葉先を「いろはにほへと」と数えたことに由来します。「もみじ」と聞いて多くの人が思い浮かべるのがこのイロハモミジで、鮮やかな紅葉と美しい形の葉が特徴です。

ヤマモミジ



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「ヤマモミジ」もイロハモミジ同様、日本のカエデ属を代表する品種。日本海側の山地を中心に自生し、春の新緑や秋の紅葉が見事です。イロハモミジよりも葉がやや大きく、葉先は7~9つに分かれています。

オオモミジ



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「オオモミジ」も最も有名なもみじの品種のひとつ。山にも生えていますが、園芸品種も多いため、公園や庭園などでもよく見かけます。「ホロナイカエデ」「ヒロハモミジ」「エゾオオモミジ」と呼ばれることもあり、大きく厚みのある葉が特徴です。一般には赤く紅葉しますが、黄色に変わるものもあります。

イタヤカエデ



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日本で最も大きく育つカエデが「イタヤカエデ」。大きな五角形の葉が空を覆う様子が板葺き(いたぶき)の屋根のように見えることから、その名がつきました。日本では北海道から九州までの広範囲に生息し、特に寒い地域の山地に多く見られます。葉の長さは約7~15センチと大ぶりで、葉が落ちる直前に黄色(まれに赤)に変化します。

サトウカエデ



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カナダ南東部の一部地域に自生しているのが、「サトウカエデ」。カナダの国花としても知られており、サトウカエデの樹液はメープルシロップの原材料でもあります。長さ約7~15cmの大きな葉と、美しい紅葉が特徴的で、葉には3~5つの切り込みが入っています。

トウカエデ



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「唐(中国)の楓」からその名がついたのが、中国原産の「トウカエデ」。「サンカクカエデ」の名で呼ばれることもあります。葉は長さ3~8cmと小ぶりで、葉先は浅く3つに分かれています。中国原産ですが、日本でも公園や庭園、街路樹などに見られ、盆栽としても親しまれています。

5. 紅葉狩りが楽しめる場所

紅葉について知ったら、やっぱり実際に見に行きたいもの。日本各地の紅葉スポットの中でも、特に美しい紅葉が楽しめる名所をご紹介します。

京都(京都府)



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紅葉狩りスポットの宝庫が京都。通天橋(つうてんきょう)で有名な東福寺や、平安時代から「もみじの永観堂」と称えられてきた永観堂、苔と紅葉のコントラストが幻想的な瑠璃光院(るりこういん)など、見事な紅葉が楽しめるスポットは枚挙にいとまがありません。



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京都市内中心部にもたくさんの紅葉スポットがありますが、京都の紅葉の名所で忘れてはいけないのが嵐山。周囲の山々の紅葉を望む渡月橋(とげつきょう)や、世界遺産にも登録されている天龍寺、しっとりとした雰囲気の中で紅葉を楽しめる常寂光寺(じょうじゃっこうじ)など、エリア全域で紅葉を満喫できます。



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嵐山よりも落ち着いた環境で紅葉を楽しみたい人には、京都市内でありながら山里の雰囲気が漂う高雄(たかお)もおすすめ。京都でもいち早く紅葉が見頃を迎えるエリアで、神護寺(じんごじ)や髙山寺、西明寺(さいみょうじ)といった名刹の紅葉は格別です。

日光(栃木県)



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関東きっての紅葉の名所といえば、日光。豊かな山々が赤や黄、オレンジのグラデーションに染まる光景は圧巻で、とりわけ馬返しと中禅寺湖畔を結ぶ「いろは坂」は、ダイナミックな紅葉スポットとして有名です。



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ほかにも、紅葉が水鏡に美しく反射する中禅寺湖や、日本の三大瀑布(ばくふ)のひとつに数えられる華厳(けごん)の滝、鬼怒川(きぬがわ)温泉と塩原温泉を結ぶ「日塩もみじライン」など、豊かな自然に抱かれた日光ならではの紅葉スポットが目白押し。

日光はエリア内の標高差が大きいため、場所によって紅葉の見頃が9月下旬~11月下旬と幅広く、長期間にわたって紅葉が楽しめるのも魅力です。

箱根(神奈川県)



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気温が下がり、温泉が恋しくなってきた頃、温泉と紅葉を堪能するのにうってつけの場所が箱根。箱根のシンボルともいえる芦ノ湖では、鮮やかに染まった山並みと勇壮な富士山を眺めながら、ゆったりとクルージングが楽しめます。



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大涌谷(おおわくだに)へと向かう箱根ロープウェイや、駒ヶ岳へと向かう箱根駒ヶ岳ロープウェイからは、ダイナミックな箱根の山の紅葉が楽しめるほか、箱根美術館や強羅(ごうら)公園などの観光スポットでも美しい紅葉にお目にかかれます。

奈良(奈良県)



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京都に比べて注目される機会が少ないものの、お隣・奈良も紅葉狩りにぴったりの場所。奈良公園ではもみじやイチョウの紅葉と鹿のコラボレーションが見られるほか、「奈良の大仏」で知られる東大寺大仏殿の裏手にある大仏池では、水面にカラフルな紅葉と大仏殿が映り込む様子が楽しめます。


紅葉スポットは個人では行きにくいところも多いため、紅葉狩りに行くならツアーもおすすめ。上記でご紹介した以外にも、日本各地の紅葉の絶景に出会えるさまざまなツアーがあります。

>>紅葉旅行・ツアー情報はこちら(外部サイトへリンクします)

今年の紅葉狩りでは、木の種類にも注目して、葉の形や色の違いも意識しながら景色を味わってみてはいかがでしょうか。

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