段ボール製ドローンで戦果!? ウ軍の高コスパ兵器は有望か幻想か 長所は「チープすぎること」

同様の事例は過去、日本にも

 最新技術にローテクでチープな手段で対抗したことが功を奏した例はほかにもあります。太平洋戦争の際、旧日本海軍が運用した九三式中間練習機、別名「赤とんぼ」です。旧日本軍は練習機を目立つように橙色に塗装していましたので、九三式に限らず練習機はその見た目から「赤とんぼ」と呼ばれていました。

 太平洋戦争末期、敗色濃厚な日本は現代でも自爆攻撃の代名詞として使われるまでなっている「神風特別攻撃隊」を編成します。いわゆる特攻です。飛べる飛行機は枯渇しており、複葉羽布張りの「赤とんぼ」まで特攻に駆り出されます。

 これに250kg爆弾を積めば飛ぶのもやっとという状態で、常識では戦果は期待できないはずですが、1945(昭和20)年7月、7機の「赤とんぼ」による夜間特攻で、アメリカ海軍の駆逐艦を1隻撃沈、1隻大破、2隻小破という戦果を挙げています。当時の特攻の命中率としては驚異的でした。

 アメリカ海軍はその要因を以下のように分析しています。

・羽布張りの機体はレーダーに映りにくく探知距離が短い。

・飛行速度150km/h程度の低速では、レーダー員が飛行機なのか何なのか判断に迷った。

・発見が遅れ、接近されすぎて対処時間が短かった上、頼みだった対空砲火のVT信管が、通常の機体なら半径約30mで作動するところ、「赤とんぼ」では約9mでしか作動せず効果が薄かった。

・20mm機関砲では、エンジンやタンクといった金属部分に命中しないと信管が作動せずに貫通してしまい効果が薄い。「赤とんぼ」は非常に機動性が高く、巧みに操縦されていた。

 ゆえにアメリカ軍はその後、高速の新鋭機だけでなく、低速の固定脚複葉機にも警戒しなければならなくなります。

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北朝鮮はソ連製An-2を運用中?

 現代の北朝鮮では、特殊部隊が同じ理由で「An-2輸送機」を保有しているといわれます。An-2は1947(昭和22)年、当時のソ連で初飛行した固定脚複葉、星形レシプロエンジンという旧型機ですが、信頼性が高く21世紀でも多くの機体が現役です。

 機体は木製やキャンバス張の部分が多く、レーダーに映りにくいという“長所”があります。50km/hでも飛行できるので、韓国軍の研究では、低空飛行されるとレーダーが検知しても自動車と判断されてしまうほど。北朝鮮特殊部隊が隠密裏に韓国内に空挺降下するのに使われることを恐れ、韓国軍やアメリカ陸軍もAn-2を研究用に保有している有様です。

 しかし、チープ兵器は意外性がありますが過大評価は禁物で、嫌がらせ以上の意味はないでしょう。ウクライナ軍にしても旧日本軍にしても北朝鮮軍にしても、劣勢下の苦し紛れの策としかいいようがありません。

 2023年3月から毎月100機ペースで供給されたといわれるPPDSが、「戦果」として話題になったのは今回が初めてですし、そもそもペイロード3kg程度の爆弾でどれほどの被害を与えたのかはわかりません。前出の記事でも戦闘機に命中したとありますが、破壊したとまでは言及されていません。「赤とんぼ」の特攻なども、戦法と論ずるにも値しないでしょう。