JR在来線の「日本一長いトンネル」勢力図に変化!? 新幹線開業で新たな「日本最長」はどこなのか

北陸新幹線の金沢~敦賀が2024年3月に延伸します。実はこの開業で、鉄道の「トンネル長さランキング」が変わることになります。

JRではなくなってしまう

 いよいよ2024年3月16日に開業を迎える、北陸新幹線の金沢~敦賀の延伸区間。実はこの開業で、鉄道のとある「日本一ランキング」が変わることになります。

 それはJR在来線の「トンネル長さランキング」です。

 このランキングの首位に長らく君臨しているのが、JR北陸本線の「北陸トンネル」です。敦賀~南今庄の長い山脈を一気につらぬくトンネルで、その長さは13870m。両駅間の移動は12分もかかります。トンネルを抜けると福井県は嶺南エリアから嶺北エリアに入り、文化圏も大きく変わってきます。

 この北陸トンネルが、「JRではなくなる」ため、ランキングから除外されることになります。では、新たに「トップ5」となるJR在来線トンネルはどこになるのでしょうか。

●1位「新清水トンネル」13490m(上越線)

 北陸トンネルとはわずか380mの差で2位でしたが、開業から57年目にして、ようやくJR在来線最長の座につきます。

 もともと単線で群馬・新潟県境を越えていた上越線がパンク状態にあったことから、2本目のトンネルとして掘られたのがこのトンネルです。途中の「土合駅」はトンネル内に位置しており、ホームから改札まで、地中の果てしない階段を上る必要がありあます。段数は462、所要時間は10分。「日本一のモグラ駅」として有名になっています。

●2位「生田トンネル」10359m(武蔵野線)

 意外かもしれませんが、都心にほど近い場所に、2位の長さのトンネルがあります。と言っても、この区間はめったに乗車することはできません。というのは通称「武蔵野南線」と呼ばれ、南武線に並行して府中本町から川崎方面をむすぶ貨物線だからです。

 生田トンネルは府中本町駅を出て多摩川を渡ったところから、途中の梶ヶ谷貨物ターミナルで地上に顔を出すまで、延々と多摩丘陵をくぐりぬけるトンネルです。この貨物線を一般客が通るには、臨時特急「鎌倉」に乗るしかなく、レアな存在です。

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3位以下も重要な役割

●3位「清水トンネル」9702m(上越線)

 もともと上越線にあったのがこちらです。1位の新清水トンネルとは違い、土合駅はごく普通の地上駅です。とはいえ周囲は深い山奥で、集落は見えない、いわゆる「秘境駅」となっています。

●4位「丹那トンネル」7804m(東海道線)

 熱海から沼津方面へ抜けるところに待ち受けている「丹那山地」を貫くトンネルです。明治時代から建設が進んだ東海道本線は、複雑な地質のせいでここを迂回せざるを得ず、現在の御殿場線がかつての本線でした。1934年に難工事を経てようやく完成、熱海や伊東、修善寺は「幹線沿線」として一大観光地に発展していくことになります。

●5位「六十里越トンネル」6359m(只見線)

 福島県の会津若松から新潟県の小出駅へつなぐローカル線・只見線の、県境をまたぐ地点にあります。非電化区間では日本最長のトンネルとなっています。並行する国道252号線も連続ヘアピンや急勾配・急カーブの強烈な山越えとなっています。

 現在、只見から北西へ抜けて三条・新潟方面へ直結する峠越えルート「八十里越」も建設中で、完成すれば福島~新潟の道路ルートは只見線よりも圧倒的に短距離になります。

※ ※ ※

 ちなみに、長らくこのランキングで首位だったのが、北海道と青森をむすぶ「青函トンネル」でした。長さ538500mは日本のトンネルでは圧倒的に最長です。

 1988年に開業。もともと在来線の線路として快速「海峡」や急行「はまなす」、特急「白鳥」ほか夜行列車が走り抜けていましたが、2016年に北海道新幹線が開業すると、在来線の旅客列車は走らなくなりました。

 なお、JR以外に目を向けると、10000mを超える鉄道トンネルは全国にひしめき合っています。新幹線開業でJRから第三セクターへ移管された路線や、旧国鉄の元で建設され、結局第三セクターで開業した路線など、山岳区間を長大トンネルで一気に抜けていく区間が日本各地にあります。