宇都宮で「路面電車」が75年ぶりの新規開業! 慣れない「関東のドライバー」が再確認すべき「独自の交通ルール」とは

2023年8月26日、国内では75年ぶりとなる新規の路面電車「宇都宮ライトレール」が、栃木県で開業します。関東ではあまり馴染みのない路面電車ですが、ドライバーはどのように接したら良いのでしょうか。

道路の上に「電車」が! 慣れないドライバーがすべきこととは

 2023年8月26日に開業する「芳賀・宇都宮LRT」(宇都宮ライトレール)。国内で、新たな都市に路面電車が開業するのはなんと75年ぶりとなります。
 
 旧来の路面電車のイメージを一新する斬新なデザインの車両も大きな注目を集めていますが、一方で路面電車と並走する経験が薄いドライバーにとっては、注意すべきポイントもありそうです。

 かつては日本各地に路面電車が走っていましたが、モータリゼーションの進展で渋滞の激しさが増したため、東京など大都市圏を中心に不要論が台頭。

 さらに地下鉄の開業もあって、次第に廃止が進行していきました。

 そして2023年8月1日現在、「軌道法」によって定義づけられる路面電車は、全国で18事業者により運転されています。

 北から見ていくと、札幌、函館、東京(都営・東急)、豊橋、富山、高岡、福井、大津、京都、大阪、岡山、広島、高知、松山、長崎、熊本、鹿児島の全国17箇所です。

 西日本には数多く路面電車が走っていて、東日本エリアでは珍しい、ということがわかります。

 路面電車といえば、レトロな乗り物というイメージが先行しがちですが、欧州では多くの都市で「LRT(Light Rail Transit:ライト・レール・トランジット)」により復活が進んでいます。

 LRTとは、スマートなデザインを持ち、超低床にするなどバリアフリーの高性能車両(LRV)を用い、改善された軌道・停留場によって定時性・速達性・快適性を有する軌道系交通システムのことを指します。

 近年では、日本でも路面電車復権の機運が高まっています。

 その中で、LRTとして開業する宇都宮ライトレールは、宇都宮駅東口から栃木県芳賀郡芳賀町の高根沢工業団地までを結んでいます。

 使用される車両「HU300形」は3両編成で座席数50名、定員160名を一度に運ぶことが可能です。

 工業団地へマイカーやバスで通勤する人々が、宇都宮ライトレールを利用することによる渋滞の緩和が期待されています。

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道路上の線路には「入っていい?」それとも「ダメ」なの!?

 宇都宮ライトレールでは、「路面電車とクルマで並走したことがない」という地域のドライバーが路面電車に慣れることも重要でした。

 そのため、後述の路面電車用信号機は2022年秋から運用が行われているほか、栃木県のホームページには、LRTと一緒に走るための交通ルールを掲示しています。

 教習所では、路面電車に関するルールを教わりますが、宇都宮の事例のように、実際に路面電車が走る街以外のドライバーは、それを覚えている人は少ないかもしれません。

 特に路面電車が少ない東日本エリアでは、その傾向が強いのではないでしょうか。

 そこで、路面電車がある道路の交通ルールをまとめてみました。

●1.軌道敷

「軌道敷」とは、道路交通法第21条によると、道路上に軌道が敷かれた「併用軌道」の際に、道路上で路面電車が通行するために設けられた部分で、敷石や線によって示されます。

 その他の場合は、レールの幅に左右それぞれ0.61mを加えた範囲を指します。

 そして軌道敷では、クルマの通行は原則禁止とされています。

 とはいえ、右左折・横断・Uターン、工事などで、クルマが通れないほど軌道敷以外の道路幅が狭い場合や、危険防止で止むを得ないときは、軌道敷内通行が可能となります。

 また、軌道敷内を通行できる箇所もあり、その際は道路標識で示されることもあります。

これらを違反すると「軌道敷内違反」にあたり、反則金4000円と点数1点(普通車)のペナルティを受けることになります。

 また通行できる際も、クルマは路面電車の通行を妨げてはならない、とされています。

 路面電車が優先、という基本は覚えておきましょう。

●2.路面電車用信号機

 信号機でよく見られる矢印は「青」です。

 これは、車両(クルマなど)がその指示する方向に限って進める、という意味です。

 いっぽう、路面電車専用の信号は「黄色」です。

 逆に言えば、路面電車は青い矢印が表示されても進むことはありません。

 しかし前述のように、黄色い矢印は「忘れられがち」なルールのため、宇都宮ライトレールでは、黄色信号の上に「電車用」を併記しています。