6速MT+3.2L化された「NA2」型NSX

初代NSX・NA1型のC30A型V6DOHC VTECエンジンをNA2型NSXで3.2L化した「C32B」

後にマクラーレン F1を作るゴードン・マーレイなど、NSX登場時からモアパワーを叫ぶ声は多かったものの、そもそも初代NSXのC30Aエンジンはレジェンド用2リッターV6エンジンC20Aから発展したものです。

NSX自体も開発段階でまだ250馬力程度のSOHCエンジンだったC30Aをどうにか押し込むだけの作りで、DOHC VTEC化しただけでもホイールベースを伸ばしたうえで傾斜搭載しましたから、仮にV8エンジンなど作っても詰め込むのに苦労するのは目に見えています。

ターボ化もエンジンルームの排熱が追いつかなくなり、耐久性や信頼性が欠落するのはル・マン24時間レースのGT1仕様(1995年)やJGTC/SUPER GTの2004-2005シーズン車で明らかであり、さらなる軽量化と空力改善を除き、C30Aの改良が唯一の改良手段でした。

そこでピストン摺動部ライナーの材質を鋳鉄からFRM(繊維強化金属)に置き換え、シリンダー間隔の縮小とボアアップに成功したのが3.2L版の「C32B」。

同じ3.2Lでもレジェンド用のC32Aがストロークアップ版なのに対し、C32Bはボアアップ版の別物で、高回転域への吹け上がりの良さを維持しつつ全域でトルクを向上、これを新開発の6速MTと組み合わせ、新型式「NA2」となりました(4速AT版はNA1のまま継続)。

日本国内では280馬力自主規制が続いていたので「公称最高出力280馬力」は変わらなかったものの、海外ではNA1の274馬力(計測方法の違いか、280馬力ではない)から294馬力へと出力向上、「実際はもっと出ているのでは?」と言われるほどの進化です。

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「タイプS」と「タイプS-Zero」、そして「NSX-R」

NA2型NSXの最終進化形、「NSX-R」(2002年)

NA2へのマイナーチェンジではタイプRの復活がなかったものの、代わりに設定されたのが「タイプS」と「タイプS-Zero」。

タイプSはワインディングロードを中心にスポーツ走行の楽しさを充実させるため、エアコンなど快適装備はパワステ以外維持しつつ、標準車のパワステつきに対しては45kg、パワステなしに対しても30kgの軽量化を実現したモデル。

タイプS-Zeroはさらにエアコンやオーディオ、遮音材を省略して標準車パワステつき車比で96kgも軽量化、サスペンションもハード化したサーキット走行用チューニングベース車で、かつての「タイプR」にかなり近いモデルでした。

「パワーを上げられないなら軽量化すればいいじゃない?」というわけで、タイプSの段階で「(45kgの軽量化は)10馬力アップと同等の効果」とアナウンスしており、単純に考えればS-Zeroなら20馬力アップでしょうか。

そこまでやるならタイプRを名乗ればいいじゃない…と思えますが、それは2001年12月のマイナーチェンジでリトラクタブルライトを固定式に変更するなど外観が大きく変わったバージョンへ、2002年5月の「NSX-R」追加という形で実現しました。

NSX-Rに比べれば、S-Zeroなど「ただ軽くしてサスペンション固めただけ」と言えるほど進化しており、エンジンの高精度バランス取り、電子制御スロットルの専用セッティングやファイナルギアのローレシオ化による加速性能、レスポンスの改善など。

特筆すべきはエアアウトレットダクトつきフロントフードのカーボン化、フロントアンダーカバーやリアディフューザー、カーボンリアスポなど軽量化と空力改善の合わせ技で、市販車初の前後マイナスリフト化。

エンジンの公称最大出力は相変わらず280馬力でしたが、「高性能化はパワーじゃなく空力と軽量化、エンジン特性で実現する!」という姿勢も一貫しており、NSX-Rはまさに究極のNSXと言えます。

新車価格だけなら、JGTC参戦車のホモロゲーション用に5台限定発売、1台のみ実際に市販されたと言われる「NSX-R GT」(2005年2月発売)もありますが、NSX-Rも程度良好車なら海外のオークションでは4,000万円以上の高値がつくなど「資産化」が進みました。

ハイブリッドスーパーカーの2代目NSX(NC1型)があまり話題にならず、パッとしないままいつの間にか生産が終わっていたのに比べると、初代NSX、特にNA2型のNSX-Rは、この先も長く語り継がれるクルマになりそうです。

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