大型の海洋生物、とりわけクジラが好きな人ならば、一度は会ってみたいのが「イッカク」や「ベルーガ(シロイルカ)」だろう。しかし、両者の多くは極寒の北極海付近に分布しており、そんな場所までどうやって会いに行けばいいのか。そんな中、オーシャナ編集部は、白夜のカナダで両者に会えるツアーを発見。ツアー開催元の「生涯感動の旅」で添乗員を務める板倉知一氏に気になる内容を聞いてきた。

長い牙が特徴のイッカク

水族館でも人気のベルーガ

白夜の氷上でキャンプをしながらイッカクとベルーガを待つ

ツアーの舞台は、カナダのバフィン島北部に位置するアークティックベイ。板倉氏によれば、毎年5月ごろになると、イッカクが集まる世界でも有数の場所とのこと。

この、アークティックベイがあるカナダヌナブト準州は、先住民族であるイヌイットの生活圏であるとともに、生活を支える猟場でもある。しかし、イッカクの捕獲頭数は厳しく制限されているため、イヌイットの中には、狩るのではなく見せることで生計を立てている人も多い。

イヌイットのガイド 写真:生涯感動体験の旅

ツアーでは、そんな“見せる専”のイヌイットにガイドをしてもらうという。だから遭遇率が高い。ただし、最近は温暖化の影響もあって、氷の溶けるスピードが速まり、氷上での伝統的な狩りやガイドの仕事ができる期間が短くなっているそう。年々開催が難しい貴重なツアーになっている。

写真:生涯感動体験の旅

上写真は、イヌイットのベースキャンプの様子。こちらで約5日間寝泊まりしながら、イッカクとベルーガを待つ。

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イヌイットのソリに乗っていざ、出発!

写真:生涯感動体験の旅

「イッカクが来たぞ」とイヌイットから吉報があれば、ソリに乗っていざ、出発。イヌイットがスノーモービルでけん引してくれる。

写真:生涯感動体験の旅

冬は一面、氷で閉ざされた海だが、春になり気温が高くなると、溶けてクラック(割れ目)が入る。アークティックベイに訪れる第一陣のイッカクたちは、クラックが広がり、リード(水路)になったところを息継ぎをするために進んでいく。

イッカクのブローは静か。近くにいても、あまり気づかない 写真:生涯感動体験の旅

そして、段々と溶けてオープンウォーター状態が目立つようになると、数十頭の群れがたむろするように。

写真:生涯感動体験の旅

観察は氷上から。背びれはないが、イルカのような丸いシルエットで白地に茶色の点々模様が見えたら、十中八九イッカクだ。

写真:生涯感動体験の旅

トレードマークの角を確認できたのなら、間違いない。

板倉さんが添乗員を務めた中でも、2018年の開催時には、50頭におよぶイッカクたちがオープンウォーターに入ってきていて、圧巻だったという。

イッカクとの距離は、そのときの氷の状態による。氷が硬ければ、リードのふちギリギリまで近づけるので、その距離は、なんと5mほどとか! とはいえ、平均すると20mほどが多いもよう。

「2018年に添乗員として同行したときは、ふちまでいって、イッカクとベルーガが一緒に泳いでやってくるのを見ました。そこへいきなり北極クジラがドーン!と現れ、おもしろかったです」(板倉氏)

写真:生涯感動体験の旅

さすがは、北極海。スケールが違う。

ベルーガの群れ 写真:生涯感動体験の旅

それにしても、イッカクとベルーガはなぜ一緒にやってくるのだろう。正確なことは解明されていないようだが、イッカクもベルーガもクジラ目ハクジラ亜目のイッカク科なのは間違いない。もしかすると、仲間意識があって、生きるための何かしらの情報交換をしているのか。天敵であるシャチから身を守るために群れになっているのか。

そんな両者を見分けるコツは、色と鳴き声。真っ白で、猫みたいな鳴き声を出すのがベルーガだ。