水中生物を含む動植物が3Dデータ化され、オンライン上でその生態を観察できる「デジタル標本」が教育面やメタバース(※)への利用において注目されている。そこで本記事では、デジタル標本と、ダイバーならではの楽しみ方について紹介したいと思う。

※インターネット上に仮想的につくられた、いわば現実を超えたもう1つの世界のこと

1、「デジタル生物標本」とは

動かして見られる3D標本例(ミノカサゴ)

「デジタル生物標本」とは、その名の通り、データ化された生物の標本のことを指す。この名称は、九州大学「持続可能な社会のための決断科学センター」に所属する、生態学者の鹿野雄一特任准教授が名付けた。

現在、サイト上では無料でそのデータを公開しており、動植物1400点、700種類以上の高精細な3Dモデルが掲載されている。


︎「デジタル生物標本」のデータはこちらから

3Dデータ化するには「フォトグラメトリ」という手法が使われており、被写体となる生物をさまざまな角度から撮影し、パソコンのソフトウェア上で処理することで、リアルなデジタル生物標本を作成しているという。

データ化するには1つの生物につき合計500枚の写真を必要とし、サンプルが傷まないうちに撮影しなければならないため、2〜3分ほどでこの作業を行うとのこと。

その過酷な作業が身を結び、私たちに精巧で緻密なデータをもたらしてくれると思うと、感謝の気持ちでいっぱいになる…。

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2、「デジタル生物標本」の特徴

なんといっても標本のデータの精密さが1番の特徴といえる。

アカシュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)もいろんな角度から観察可能

閲覧方法は至って簡単で、見たい生き物をクリックすれば360度、ぐるぐる対象物を回しながら観察でき、縮小拡大も思いのまま。

拡大したミノカサゴ、ツヤツヤした質感の口内まで観察できる

精密な画像処理がなされており、拡大してもぼやけることなく、生物のリアルな迫力を感じ取ることができる。

また、いつ、どこにいても標本にアクセスできるというのはデジタル生物標本ならではの特徴である。通常博物館に所蔵されている標本は、一般公開されているものを除いて、外部の人間が自由に閲覧することができない。一方デジタル生物標本は展示場所はオンライン上のため、スペースも取らず、データ化した瞬間からその情報が褪せることなく残ることも、学術面において非常に重要なこといえる。