家計に大きな影響を及ぼす車の購入費用。コストを抑えるうえでは、「今の車を高く売る」という観点も重要になるでしょう。

売却先はさまざまに考えられますが、一般に「買取専門業者」は、ディーラーによる下取りと比べて高い査定額を提示する傾向にあるようです。

しかし、高額査定に満足する声も多い一方、買取業者とのトラブルをめぐる話も随所で聞かれます。国民生活センターでも、「契約後に買取額を下げられた」といったケースが報告され、注意喚起がなされています。

実際に、ユーザーと買取業者との間にはどのようなトラブルが生じているのでしょうか。買取業者を利用した際、困った経験があるという人たちに話を聞きました。

「他の店じゃ値段つきませんよ」と迫る買取業者

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買取業者のなかには、安く車を仕入れるために「強引な手口」で売却を迫る業者もあるようです。数ヶ月後の乗り替えに向け、今の車の売却額を知ろうと買取店を訪れたユーザーは次のように語ります。

「8年落ちのミニバンで、9万kmほど走っていましたが、人気車種なので30万円くらいにはなると思っていたんです。でも、40分ほどして査定が終わると、スタッフが気乗りしない表情で『値段をつけるのはなかなか難しい』と言ってきて。

『10万kmに近い車は正直売り物にしにくい』など、ダメなところを一通り言ったあと、『それでもウチなら20万円で買い取れる』と話を持っていかれました。

そんなものなのかとガッカリしつつ、『とりあえず他でも見てもらいます』と帰ろうとしたんですが、『他では絶対に値段がつきませんよ』『今日決めてくれれば25万円で買います』と引き下がってくれません。

まだ売るつもりはないと言っても、『中古車の価値は日に日に下がるものなんです』『今後この値段はウチでもつかないですよ』と、全然話が通じないんです。

無視して帰ろうとしても、鍵を預けているので強引に店を出るわけにもいかず、そのまま2時間ほど引っ張られてしまいました。最後はこっちもかなり大声で、『売らねぇから車返せ!』と怒鳴るような状況でした。

大人げなかったと思いますが、そうでもしないと帰れない空気だったんです」(30代男性)

このケースのように、「今売ってくれればこの値段」と言って、あたかもそれが特別価格であるかのように見せ、オーナーが他の買取業者に行く機会をなくそうとするケースは珍しくありません。

その他、車両のネガティブなポイントを過剰にあげつらい、オーナーに対して「この車は価値がない」というイメージを刷り込んだうえで、相場よりも安い額を提示する手も散見されます。

巧みな話術や強引な態度に惑わされず、自分が納得できる売却相手を探していくことが大切です。

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車両を引き取ってもらったあと、まさかの……

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売却が決まり、引き渡しが済んだあとも、さまざまなトラブルが報告されています。典型的なのが、「一度決まった買取額」を減らされてしまうというもの。

「一括査定のサイトに登録し、4つの業者に来てもらい、そのなかで一番高い金額を提示してきたところに売却を決めました。

ですが車を引き渡したあと、業者から連絡があり、『足回りにダメージが見つかったので提示した金額を支払うことはできない』と言われ、30万円ほど引いた額を伝えられたんです。

こちらとしては新車で買ってから5年間、普通に乗っているだけでしたし、引き取られる直前まで問題なく走っていたので、到底納得できず、車を返してもらうよう要求しました。

向こうは『欠陥が発覚した場合に減額の可能性があることは事前に伝えていた』と、しばらく渋っていましたが、契約書にはまだサインしていなかったので、どうにか話を白紙に戻せました。

結局、新しい車を買うディーラーで下取り扱いにしてもらい、もともとの査定額に近い値段で引き取ってもらえたので、結果としては悪くなかったです。前の業者に足回りについて指摘されたことも伝えましたが、とくに問題は見つからないとのことで、『安くするために難癖をつけられたのかな』と考えています」(40代男性)

自動車の買取業者は、一度ユーザーから車を引き取ったあと、入金手続きの前に再度査定を行うことがあります。そこで何らかの問題が見つかった場合、ユーザーに減額についての交渉をもちかけるケースは珍しくありません。

ユーザー側としては「一度決まった値段なのに」と思ってしまいますが、車を売却する側には「瑕疵(かし)担保責任」が生じます。修復歴やメーター改ざんなどの重大な欠陥を隠したまま売買契約を結んでしまうと、それが発覚した際に契約解除や損害賠償請求に応じる責任が生まれますので、売却時には車両状態を正確に報告することが重要です。

とはいえ上のケースのように、「高額な査定を最初に提示し、大きな欠陥がないにもかかわらず、引き取ったあとに値段を下げようとする」手口も報告されています。

買取業者を利用する際には、「この値段から下がることはない」といった口約束を鵜呑みにせず、書面をベースに契約内容を明確化しておくことが重要です。

なんとなく「大丈夫だろう」と考えず、契約書などで不透明なところがあれば納得できるまで説明を求めつつ、「あとに残る形」で話を記録しておく姿勢がトラブル防止には欠かせません。

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