2012年にJackeryブランドがアメリカで誕生して、10年が経った。ここ日本では、2019年に日本法人(株式会社Jackery Japan)が立ち上がり、大キャンプブームと共に大きく成長。これまで.HYAKKEIではJackeryのポータブル電源を、キャンプとは少し違う視点から紹介してきましたが、今回は「10年後の防災」をテーマに、気象予報士として活躍する傍ら、東京大学大学院にて環境について研究もしている千種ゆり子さんと対談しました。
記事最後には、Jackery創立10周年を記念したキャンペーンの詳細も。ぜひ最後までご覧ください。

千種ゆり子さんと語る、10年後のJackeryの役割

Jackery創立10周年の今「これから先10年はどうなるだろうか」と考えるいい機会。そこで、地球の環境面・気象の面からもお話しが聞けたらと、防災士でもあり、気象予報士でもある千種ゆり子さんに10年後の防災について伺いました。

千種ゆり子さん
一橋大学法学部を卒業後、一般企業に就職。小学校時代から地球温暖化に興味を持ち、もっと地球や気象のことを勉強したいと、2013年に気象予報士資格を取得。その後、NHK青森「あっぷるワイド」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル(土日)」への出演を経て、TBS「THE TIME,」に出演。2021年10月より東京大学大学院に入学し、地球温暖化とSNS、社会システムについて研究中。

大事なことは防災グッズのメンテナンス。いざ使いたいときに困らないように。

――いきなりですが、千種さんはキャンプされますか?

小さい頃は父に連れられて行ってましたが、今は全然ですね。休みの日はゲームしてることが多いです(笑)父は相変わらずキャンプをしているようで、野営?誰もいない山とかでソロキャンプしているようです。弟もすごいキャンプ好きなようで、よく行ってますよ。

――お父様はかっこいいキャンパーですね!千種さんはポータブル電源はお持ちですか?

私は防災用としてポータブル電源とソーラーパネルを持っています。キャンプに行かないので、いざという時のために閉まってあります。

――以前に実施した.HYAKKEIのアンケートでは、約半数の人がポータブル電源を持っていました。それは、.HYAKKEI内でのアンケートだったので、キャンプする人が多かったということもありますが。Jackeryのスタッフの方と対談した際、防災目的としては、何か停電を含む災害が起きた際に需要が上がるようです。今年の3月に起きた福島沖地震のあとも然り。

普段暮らしていると、災害のリスクを考えることは少ないですよね。みんなが欲しいと思うときは品薄になってしまうので、先手を打って行動することで、いつか自分の身を助けてくれることになるんじゃないかって思います。

――では、日々できる備えとして、防災で必要なことはありますか?

大事なことは防災セットのメンテナンスです。いざ使いたいときに、水や防災用の備蓄食品の賞味期限が切れていては困りますよね。ローリングストック法と言って、私は年に1回、防災セットを確認し、賞味期限・消費期限が近い物は消費して入れ替えるようにしています。ポータブル電源はどうなんでしょうね。100%にして保管してどれくらい持つのか、通電は定期的にやっておいたほうがいいのか。防災目的で購入した人はあまり使う機会を持たないので、知っておきたいですね。

Point
ポータブル電源は自然放電が少なければ長く保管可能。(※機種によって変わります)保管の際は、バッテリー残量を80%以上程度で保管することを推薦します。また、3か月に1回程度の動作確認を行いましょう。

――なるほど…。私の家にある防災セット、もうずっと置いたままです。

食品に限らず、消毒液にも使用期限があります。物って劣化しちゃうんですよね。なので1年に1回くらいは「何が入っていたっけな」と確認することで、必要な物を再認識する機会にもなりますよ。

――確かに、ウェットシートなんか乾いてしまってそうです(笑)その他、備えておくべきことはありますか?

私自身、気象予報士を目指したきっかけでもあるのですが、阪神淡路大震災で被災した経験があるんです。当時、電気の復旧は比較的早かったのですが水とガスが使えず、トイレとお風呂に困りました。カセットコンロがあればガスは補えますし、ドライシャンプーがあれば清涼感もある程度保てるので備蓄しています。女性はドライヤーを使いたいと思うので、ポータブル電源(※)があればいいですね。一番の問題は水です。備えとしては、携帯トイレがありますが、それにプラスしてお風呂のお湯をすぐに抜かないことです。トイレを流すには使用後のお風呂の水で十分です。お風呂を溜める前に水を抜くようにする習慣はあっていいと思います。
(※)ドライヤーを使うには1200W以上のポータブル電源が必要。

――すごく勉強になります。

いつでもトイレに行ける安心感って重要なんです。トイレに行けないと思うと、なるべく水分を摂らないようになってしまう。そうすると身体に不調をきたすという悪循環になるんですよ。

10年後の日本として考えられる3つのこと。

――「10年後の防災」というテーマについて、どう考えられますか?

今後も温暖化が進むことで考えられることは、台風の強度が増すこと、雨量が増えること、です。2019年に襲った千葉への台風15号のようなレベルのものが、東京都心でもいつ起こり得るか分からないという状況です。

――台風のコースが変わるということですか?

台風のコースは近年で大きく変わってるわけではありません。温暖化の影響で海水温度が上がることで、台風が発達した状態で日本に直撃することになります。なので、今後温暖化が進むことで、より強く発達した状態の台風が日本に上陸することが多くなると予想されます。



参照:気象庁

ただ、台風がどこを通るかは、その時の風の流れなどの条件によって変わってしまいます。千葉の台風のときは、たまたま東京湾を通ったため、千葉が襲われましたが、相模湾を通り多摩を抜けていれば、都心が被災していたでしょう。2018年に関西を襲った台風21号、2019年の千葉での台風15号、東北や長野、関東を広く襲った台風19号の共通点は、気圧です。950~960hPa(ヘクトパスカル)の中心気圧で上陸しています。でも、それが精度よく予測できるのは上陸の1~2日前。直前で分かっても備えられないので、事前に備えておくことが必要です。

――温暖化すると暑くなるのは分かりますが、雨も増えるのはなぜですか?

物理の法則で、1℃の温度が上がると、空気が含むことができる水蒸気量が7%アップするといわれています。冬よりも夏のほうが雨が多いのは、そういうことです。なので、温暖化することで、将来的に雨量が多くなることは予想されます。電力会社も対策を行ってはいますが、川が氾濫して変電所が浸水することで電気の供給量が減ってしまう、というリスクは考えられますね。

――雨が多くなる時期が来る前に防災セットの見直しは必要ですね。

はい。6・7月の梅雨の大雨、9・10月の台風、ここの2つを私は毎年意識しています。

――ちなみに、そもそも日本は世界的にみて雨量は多いんですか?

多いですよ。めちゃくちゃ多いです。以下の図は気象庁ホームページからの引用ですが、熱帯くらい降ってます。スコールのような一瞬降ってすぐ止むということはないですが、何日間か続けて降るような雨ですよね。


参照:気象庁 世界の天候データツール

――「台風」「大雨」ときましたが、10年後に考えられることは他にもありますか?

私は、10年後にはポータブル電源を含む蓄電池を持つことが一般的になると思っています。EVも蓄電池の一種ですし、現在、太陽光と蓄電池を合わせて導入することで補助金がもらえる制度もあります。世界的にみても、脱炭素の動きが大きくなっており、リチウムイオン電池の需要が非常に高まっているのも事実です。

――石炭を燃やすことで二酸化炭素を排出することが、温暖化にも繋がっていますからね。

脱炭素というテーマは、私の大学の専門分野でもあるので、いっぱい語りたいことはあります(笑)

――これまでのお話しでいくと、停電のリスクとして、台風、大雨、そして地震が上げられますが、他にもありますか?

一番は台風だと思いますが、あとは寒さによる電力不足ですね。寒い時期、12月~3月が日本において電力需要が高い時期なんです。この時期に、何かしらの問題で電力供給ができなくなり、節電要請があるかもしれない。現にそういう話も上がっています。10年後には、この問題は解決していることを望みますが、近いうちは気を付けておかないといけないと思います。

――気象予報士・防災士として様々な講演をされていると思いますが、環境問題や防災についてなどの意識は高まっていると感じますか?

意識はすごく高くなっていると思います。SNSなどで被災地域のようすなどが分かりやすくなりました。誰かの身に起きたことも、自分事に捉えやすくなったことで、意識が高まってきているように感じます。
また、今後、完全なオフグリッドは難しくても、マイクログリッドは推奨されていくと思います。
その中で、ポータブル電源は重要な役割ですよね。Jackeryのポータブル電源は、画面で消費電力数や充電の電力数が分かるのがいいですね。どれくらい使っているのか、また、ソーラーパネルでの充電の際のセットする位置など、工夫することができます。.HYAKKEIさんで検証してくれた記事も非常に参考になりますね。

【取材後記】
今回、大変貴重なお話を千種さんから伺うことができました。
気象予報士からの目線で防災を語ってもらうと非常に分かりやすく、10年先までを具体的に見据えることができたのではないでしょうか。
「災害時にはポータブル電源が大事」ということではなく、常に「いかに備えておけるか」ということが需要です。まずは、家に眠ったままになっている防災セットを見直すことを始めたいと思います。

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これまでのJackeryの連載記事紹介|ポータブル電源ゆく年くる年

第1弾連載「プチオフグリッドな暮らし」

第1弾は、淡路島に移住し、なるべく電気を使わずJackeryを使った生活するサトウチカさんに密着。プチオフグリッド(マイクログリッドとも呼びますね)な暮らしに寄り添うJackeryを紹介しました。


サトウチカさん

震災をきっかけに「オフグリッド」に興味を持ったサトウチカさんは、太陽に合わせて暮らす生活をおくることで、性格も明るくなったといいます。暮らしのようす、ポータブル電源やソーラーパネルの使い方を3つの記事で連載しています。

・Jackery連載①「プチオフグリッドな暮らし」
https://hyakkei.me/articles-12006/
https://hyakkei.me/articles-12249/
https://hyakkei.me/articles-12516/

第2弾連載「その備え大丈夫?」

連載第2弾では、昨今の自然災害による停電の事例から「私たちは停電した場合どのように過ごせるのか」「どのようなことで困るのか」を知るために、実際のご家庭で模擬停電をして過ごしてもらう連載企画を。


模擬停電を体験していただいた“snouwfake_687”こと大野さんご一家

2家族への模擬停電の体験を通して、Jackeryポータブル電源がある安心感と、災害時による停電時の備えや気付きが明らかになりました。また、Jackeryスタッフ平松さんとの対談も実現。Jackeryのこれまでとこれからを伺いました。

・Jackery連載②「その備え大丈夫?」
https://hyakkei.me/articles-22831/
https://hyakkei.me/articles-23330/
https://hyakkei.me/articles-23512/

2つの連載を通して、Jackeryを利用した手軽なエコライフは、いざという時に自分や家族を助けてくれる大きな味方となることを発信してきました。

そして.HYAKKEI編集部がJackeryを使った実験も。

・新作Jackery Solar Generator 1000 Proはどれだけ使えるのか?実際に使ってみたデータを公開します。
https://hyakkei.me/articles-24316/