よほどの不人気、かつ海外では売れているので国内販売を止めても支障がない場合を除き、大抵のクルマは販売期間中にマイナーチェンジや一部改良といったテコ入れを行います。

不人気で開発費や宣伝費その他の回収ができないためにズルズルと販売を続けるなら、「外観だけでも大幅に変えて、違うクルマに見せる」というパターンもありますが、結果的に本来持っていたデザインの良さが失われ、かえってイメージダウンするケースも。

今回はそんな「マイナーチェンジでイメチェンに失敗したクルマ」を3台、厳選してみました。

いすゞ フローリアン(1967年・最終形態1977年)

改良するほど古くなり、中古でかえって人気が出る不思議

左上:1977年マイナーチェンジ後のフローリアンS-IIエステート(バン) flickr.com Author:Sludge G CC BY-SA 2.0
・右下:1967年デビュー時のフローリアン

もとは名車117クーペの4ドアセダン版姉妹車、名匠ジウジアーロが手掛けてはいないものの、同じカロッツェリア・ギアに依頼された端正なデザインは、6ライトウィンドウの傑作とも言われたスタイリッシュなセダンがフローリアンでした。

しかし販売は振るわず、大小のマイナーチェンジや改良を繰り返すも、GMグループ傘下で乗用車の開発費などロクになかったいすゞでは新型車も作れません(このあたりの事情は、初代ジェミニ発売までのベレットも同様)。

最後のフェイスリフトが施されたのは1977年ですが、規格型角目4灯ヘッドライト、直立した大型グリルのアメリカンスタイルには、もはやイタリアンセダンの趣はありません。

これでさらに6年、通算16年も売り続けましたが、新しい高年式車ほど古くてダサいレトロ調デザインがカスタムベースに最適と、中古車の人気が出たのは皮肉でした。

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スバル R-2(1969年・最終形態1971年)

しょせんレックスへのつなぎ役と、投げやりなダミーグリル

左上:New R-2 スーパーL(水冷型・1971年マイナーチェンジ後) / 右下:R-2 SS(1969年発売型のスポーツ版・ 1970年追加)

軽自動車最初期の傑作、スバル360に頼りすぎてライバルの台頭に対応できなかったスバルが後継車として発売したR-2は、RRレイアウトに空冷2気筒2ストロークエンジンといった基本は360から踏襲しつつ、居住性向上、トランクスペース設置など実用性を向上。

初期モデルは機能美あふれたシンプルなデザインでしたが、メッキパーツでデコレーションするデラックス路線が売れる時代には全く合わなかったようで、買い替え需要が終わると人気は急落、テコ入れを余儀なくされます。

しかし1971年のマイナーチェンジで採用したダミーグリルや、水冷エンジン追加後の「ゼブラマスク」は本来持っていたイタリアンルックの軽快なイメージが台無しで、これでは「どこにでもあるただの軽自動車」です。

翌年にはよりスポーティなレックス(初代)が登場しており、R-2はしょせんスバル360とレックスのつなぎ役にすぎませんでした。