2018年にデビューして以来、常に好調な販売を記録しているジムニー。しかし、受注は絶好調ながら、相変わらず月販登録台数は2,000台後半と、そこまでの伸びを見せていません。

ハスラーが5,000台を越えていることを考えれば、価格もさほど変わらないわけですから、もう少し多くても良さそうな気がします。

もちろん、ジムニーの約1年という長納期、コロナ禍での生産力を考えれば、その数も致し方がない気もしますが、昨年からインド工場にてジムニーシエラの海外分を生産開始したことを考えると、もっと納期の短縮化と登録台数の増加が望めてもいい気がします。

ジムニーにアイドリングストップ機能が装備された裏事情

さて2022年6月、ジムニーシリーズはMT車にもアイドリングストップ機能を装備する仕様変更を実施しました。AT車は2021年10月に装備済みでしたので、これで全車でアイドリングストップが採用されたことになります。

デビューから4年、まだまだ納期が短縮できないジムニーが、大幅なマイナーチェンジは無理であることは自明の理ですが、なぜアイドリングストップ機能をこのタイミングで付けたのでしょうか。

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実はジムニーの納期やアイドリングストップの採用にあたっては、スズキの切実な事情が関係していると業界関係者から漏れ伝わってきました。それは欧米や日本で実施されている「CAFE規制(企業間平均燃費)」です。

これは車種ごとではなく、メーカーごとに二酸化炭素排出量を算出し、それに年間販売台数などを鑑みた上で、一定基準値を越えたメーカーに罰金を科すというものです。この罰金は非常に高額だと言われています。

日本の状況を見てみると、トヨタ以外のメーカーはEV、HVでの市場参入が遅れているため、各メーカーともトヨタがHVで稼いだ排出権を購入することで凌いでいると言われています。

排出権を購入する方が罰金よりも安く、同時にクルマを生産し続けることができるからです。

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中部にあるジムニーの販売とカスタムを行っているショップのスタッフは、次のように語ります。

「インド工場が稼働を開始したにも関わらず、日本国内でのジムニーの納期は一向に短くなりません。

もちろん、コロナ禍や半導体不足による影響も否めませんが、実はスズキは造りたくても造れないという事情があるとメーカー筋から聞きました。それはCAFEの排出権です。

マイルドハイブリッドが採用されている他モデルと違って、ジムニーシリーズの燃費性能は極めて悪いからです。特に軽のジムニーはターボ車なので、かなり不利ですよね。スズキとしては、少しでも燃費改善につながる一手が必要なのです」

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アイドリングストップの採用で燃費は向上したと言っても……

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ではアイドリングストップ機能は、効果があるのでしょうか。

XCグレートでWLTC燃費を比べてみると、採用前の数値はMT:15.0km/l、AT:13.6km/l。それが採用後には、MT:16.6km/l、AT:14.3km/lに改善されています。

MT車では1km/l以上の燃費向上ですので、ユーザーにとってもかなりのメリットと言えるでしょう。

しかし、ハスラーのハイブリッドXターボ/Gターボ(CVT車)は、FF、4WDとも20km/lを越えているので、それには到底及びません。

「だったら、ジムニーもマイルドハブリッドにすればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、それは構造上、難しいものがあるのではないでしょうか。

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ジムニーというクルマの特殊さゆえの苦悩も……

まず、ジムニーはラダーフレーム構造で、車重が一般的な軽自動車よりも重いということです。

鋼鉄製のハシゴ形フレームが身上のジムニーは、どのグレードも1t越え。一方、ハスラーは900kg以下。100kg以上の差があります。仮にスターターモーターでアシストするマイルドハイブリッドにしたとしても、それに見合う燃費改善ができるのか疑念が残ります。

第二に、ジムニーの4WDシステムはパートタイム式を採用しているため、マイルドハイブリッドの制御の問題や、ユーザーの使用実態といういくつかの点で難しいところがあるでしょう。

今回採用されたアイドリングストップ機能も、悪路走行時にはほぼ使わない2WDの時だけ作動するようになっているのは、ジムニーというクルマの特殊さを物語っています。

さらに、コストぎりぎりで造られているだろうジムニーにとって、マイルドハイブリッドの採用は大幅な価格アップに繋がりかねません。

前出のスタッフは「今回のアイドリングストップの採用で排出権に余裕ができて、もっと納期が短くなるといいのですが…」と語ります。

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すでに登場から4年、本来であれば大きな仕様変更や新ボディバリエーションの追加があってもいい時期。しかし、5ドア車やソフトトップ車の噂はあっても、実際の発売情報はまったく漏れ伝わってきません。

ジムニーは世界に誇る唯一無比の名車ですから、もっと気軽に買えることを、すべてのファンが望んでいるのではないでしょうか。

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