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水害の種類と被害とは?自分でできる対策も紹介!

防災ニッポン

「内水氾濫」とは、市街地に降った雨が雨水処理能力を超えることで浸水が発生すること、川が増水していて市街地の水を排出できずに浸水が発生することです。

内水氾濫は雨による浸水被害と同じで、気象庁が発表している大雨注意報(浸水)や大雨警報(浸水)は内水氾濫も含まれます。内水氾濫が起こりやすい場所は、雨水が地中に浸透しにくいコンクリートやアスファルトで舗装されている都市部や、周囲よりも標高が低い場所などです。

内水氾濫が発生するかどうかは、地域の排水能力によっても変わってきます。たとえば、横浜市の場合、1時間雨量が20mm~30mmを超え始めると側溝があふれ、30mm~50mmを超えると下水道から雨水があふれる可能性があるとしています。

勢いよく水が押し寄せてくる外水氾濫とは異なり、ゆっくりと浸水するため家屋の半壊や全壊は少ない特徴があります。しかし、短時間豪雨でも浸水が発生しやすく、地下街やアンダーパスなどの低地が水没する可能性があります。また、避難が遅れるリスクもあるため注意しましょう。内水氾濫が発生して避難が危険と感じる場合は、浸水に巻き込まれないためにも自宅の2階のように、なるべく高い場所に行くなどの対応が必要です。

その他の水害について

内水氾濫や外水氾濫以外にも水害は起こります。ここでは、海水による水害について解説します。

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高潮

高潮とは、台風や低気圧の接近によって生じる「気圧の低下や強い風」によって海面の潮位が上昇し、沿岸部や河川周辺に浸水被害をもたらす災害です。

強風や暴風などをもたらす低気圧や台風などに伴って発生することが多いため、浸水時には高波が民家を襲い、大規模浸水や家屋の倒壊をもたらすことがあります。

波浪

波浪とは、発達した低気圧や台風による強風で発生した高波が堤防を超え、沿岸部に浸水被害をもたらす災害です。また、現地で強い風が吹いていなくても、遠方の台風によるうねりを伴った高波で浸水被害が発生することもあります。

津波

津波とは、海底を震源とする地震が発生した際、海底地盤の隆起や沈降、海底における地すべりなどによって、その周辺の海水が上下に変動することで発生する大きな波です。

発生した地震が大きいほど海水面の動きが大きく、沿岸に達したときの破壊力も大きくなり、街全体が流されるような被害をもたらします。

なお、高潮、波浪、津波は海水による災害ですが、一般的には水害ではなく「高潮災害」「波浪災害」「地震災害、津波災害」と呼ばれています。

最近の水害の事例

水害は毎年のように発生しています。ここでは、最近の水害の事例を紹介します。

福岡:2023年7月

2023年の6月28日~7月16日にかけて、梅雨前線の影響で九州北部や山陰などで記録的な大雨を観測しました。

7月10日午前中には、福岡県と佐賀県および大分県で複数の線状降水帯が発生し、福岡県の久留米市や太宰府市などでは1時間に80mmを超える猛烈な雨を観測し、大雨特別警報も発表されています。

福岡県では大規模な内水氾濫・外水氾濫・土砂災害などによって、下記のような被害が発生しました。

参考:福岡県「7月7日からの大雨に関する情報(第 36 報・最終報)」

山形:2022年8月

2022年の8月1日~8月6日にかけて、前線の影響で北海道地方や東北地方、北陸地方を中心に記録的な大雨となりました。

8月3日には新潟県や山形県で線状降水帯が発生し、新潟県の関川村や村上市、胎内市などでは1時間に80mmを超える猛烈な雨が断続的に降り続きました。同日の夜に山形県を対象に大雨特別警報が発表され、翌日の4日には新潟県を対象に大雨特別警報が発表されています。

山形県では大規模な内水氾濫・外水氾濫・土砂災害などによって、下記のような被害が発生しました。

参考:山形県「8月3日からの大雨等の状況について」

水害は増加している?

気候変動の影響により水害が増加しています。まずは、氾濫危険水位を超過した河川数の推移を示す下の表をご覧ください。

出典:国土交通省「気候変動の影響について」

昔に比べると、氾濫危険水位を超過する河川が増加していることがわかります。氾濫危険水位とは氾濫する恐れのある水位のことで、水位の増加をもたらしているのは雨です。

次に紹介するのは、1時間降水量50mm以上の年間発生回数です。

出典:気象庁「全国アメダス 1時間降水量50mm以上の年間発生回数」

昔に比べて大雨の年間発生回数が増加していることが、河川の氾濫危険水位を超える頻度の増加にもつながっています。

大雨の頻度が増えている理由は、地球温暖化に伴う気温の上昇です。雨のもとになるのは空気中の水蒸気量ですが、空気中に含むことができる水蒸気量は気温が高いほど多くなるため、気温が上昇すると大雨が増加します。

下の表は、日本の年平均気温偏差の経年変化です。

出典:気象庁「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2022年)」

このように、水害の増加には地球温暖化が大きく関係していることがわかります。気候変動がさらに続くと、今までにない大規模水害が発生する可能性もあります。

水害による被害とその対策

ここでは、水害によって生じる被害とその対策を紹介します。

床下浸水

床下浸水とは、住宅の基礎への浸水は認められるものの、床上には水が到達していない状況です。国土交通省の川の防災によると、住宅の浸水が50cm以下の場合を床下浸水としています。

床下浸水の対策として効果的なのが土のうです。土のうを玄関先やドア、塀の隙間、階段の入り口に積み重ねることで堤防のような役割を果たします。

水害の多いエリアでは、地域の消防団などが作った土のうを自由に使える「土のう置き場ステーション」が設置されているところもあるため、事前に自治体に確認しておきましょう。

ただし、実際に災害が発生した場合は床下浸水で留まるとは限りません。床上浸水や家屋の倒壊につながる可能性もあるため、大雨が続くことが予想される場合は、浸水の水位が低いうちに早めの避難を検討しましょう。

床上浸水

床上浸水とは、住宅の床の上まで浸水することです。国土交通省の川の防災によると、住宅が50cm以上浸かると床上浸水としています。

床上浸水が発生すると、水に浸かった家具や電化製品などの家財道具の廃棄など、精神的にも経済的にも大きな影響を受けます。家の中に汚水や泥もたまるため、浸水が落ち着いてから泥を掻き出したり、衛生対策を行ったりすることなども必要です。

床上浸水は土のうを積んでも完全に防ぐことは難しいため、普段から大事な家財を二階以上に移動させておくことをおすすめします。また、床上浸水で被害が発生したときに建物と家財が補償される火災保険に加入しておくとよいでしょう。

床上浸水が発生している状態だと、周辺の道路が水没して避難が困難になる可能性が高いため、早めに避難できるように普段から備えておくことが肝心です。

家屋・家財の水害

水害の規模が大きくなると、家屋の倒壊や家財の水没などの被害が発生します。大きな被害が発生する場所は、ハザードマップで外水氾濫や内水氾濫の浸水深が大きいエリアに入っているのが一般的です。

対策としては、被害のおよばない地域への転居や、家財のレンタルルームへの移設、宅地かさ上げなどがありますが、いずれもコストがかかります。

水害そのものを防ぐことは難しいため、被災した際に補償が受けられるように火災保険の見直しや、風水害に特化した保険への加入をおすすめします。

溺死などの人的被害

水害が発生した際の死因として多いのは溺死で、逃げ遅れが原因とされています。

特に自宅で2階などに避難ができない平屋の場合は、床上浸水したときに逃げる場所がなく、そのまま溺死するリスクも高くなります。

水害による人的被害を減らすためには、早めの避難が重要です。
「自分は大丈夫」「これまでに災害に巻き込まれたことがないから」と思い込んで逃げ遅れないよう、気象警報やキキクル、避難情報などをしっかり確認し、少しでも危険を感じる場合は早めに避難しましょう。

感染症

水害が発生すると、下水やし尿の氾濫、腐敗物の漂着などによって不衛生な状態となり、感染症のリスクが高まります。

感染症は災害発生時だけでなく、清掃時にも起こります。浸水した家屋を清掃するときには、下記の点に注意しましょう。

・ドアと窓をあけて換気を行う
・汚泥は取り除いて乾燥させる
・清掃中のけが予防のために底の厚い靴やゴム手袋を着用する
・ほこりから目を守るためにゴーグルをつけ、マスクを着用する
・清掃が終わったらしっかり手洗いをする

消毒液については、次亜塩素酸ナトリウムやアルコール、塩化ベンザルコニウムなどを使用します。感染症予防のためには、清掃と乾燥が重要です。怪我をした場合は傷口から細菌が侵入することもあるため、傷口をしっかり洗浄・消毒しましょう。

まとめ

気象災害に伴う水害は増加傾向にあるため、自分が住んでいる地域の水害リスクをハザードマップで確認し、水害発生時の行動や避難の方法などを把握しておく必要があります。

「外水氾濫」や「内水氾濫」は気象情報や避難情報を活用することで、事前にある程度備えることができる水害です。

大雨が予想されている場合、「自分の地域は大丈夫」と思い込まず、「もしかしたら危ないかもしれない」と危機感を持つようにしましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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