NAFCA理事で声優の甲斐田裕子さん

【画像】倍速視聴は避けたい…声優・甲斐田裕子さんの出演作を見る(7枚)

生成AIにプロ声優も危機感

 加速度的に進む生成AIの成長は、各業界で波紋を呼んでいます。

 それは声優業界も同様。昨今、インターネット上に声優の声をAIに学習させた無断生成コンテンツが広がっており、プロの声優たちは危機感を募らせているようです。

 今回、アニメーションとその文化の継承・発展・普及を目指す一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)に取材し、生成AIや昨今利用者も多い「倍速視聴」が声優業界に与える影響について訊きました。

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声優の声を無断利用する事例が横行

 昨今、ネット上で音声を手軽に変換できる「AIボイスチェンジャー」が広まっています。もともとボイスチェンジャーは、主に声を匿名化することを目的に使用されてきたソフトフェアです。近年ではAI技術を活用したものが登場し、より自然な声に変換することが容易になっています。

 そんなAIボイスチェンジャーの特性を利用して、通称「AIカバー」と呼ばれるコンテンツが動画サイトで人気を博しています。これは、人気歌手や声優、アニメのキャラクターの声をAIに学習させ、流行りの曲などを歌わせたものです。声優以外にも歴史上の有名人の声を学習させて最近の曲を歌わせるような動画も作られています。

 それらのコンテンツの多くは、声の持ち主には許可を得ずに生成されているのが現実です。また、そうした音声コンテンツを作るためのAI音声モデルを無断販売する行為も見られ、特に声優の間で強い危機感が広まりつつあります。

 こうした音声の無断学習、販売および利用は何らかの権利侵害になるのではという意見もありますが、法整備が追いついていないのが現状です。

 声そのものは著作権では保護されませんが、NAFCAは「声の肖像権」や「パブリシティ権」など、声の権利について法的に体系化されることを望む声明を発表しています。

 日本の声優は芝居の質も高く、アニメ人気を牽引する重要な存在でもあります。その声を無断で使われ、不名誉な発言を捏造するなどの事例がすでにあり、こうした問題に対処する必要があるとNAFCAは訴えているのです。



「YOMIBITO Plus(ヨミビト・プラス)」 画像はプレスリリースより