ようやく見つかった、ギルベルト少佐の手がかり

 終戦から4年の歳月が流れました。劇場版のヴァイオレットは、すっかり「自動手記人形」として一流の存在となっています。そんな折、ギルベルト少佐の親友であり、ヴァイオレットが勤める「C.H郵便社」の社長・ホッジンズが、一通の手紙を見つけます。

 送り先不明で未配達のままだったその手紙は、ギルベルト少佐そっくりの筆跡でした。ギルベルト少佐は生きている? でも生きているのなら、なぜ故郷に戻ってこない? その謎を確かめるため、手紙の発送元である離島へとヴァイオレットは仕事の合間を縫って向かうのでした。

 ヴァイオレットとギルベルトが生き別れとなった戦場シーンは、ヴァイオレットの回想として劇場版でも描かれています。ギルベルトの兄・ディートフリートは、TVシリーズではヴァイオレットに冷たく接していましたが、対応がずいぶんと変わります。そうした人間関係は、劇場版のストーリーを追っているうちに察することができます。TVシリーズを見逃していた人でも、劇場版は充分楽しめるようになっています。

 とはいえ、感情を持たずに育ったヴァイオレットが、言葉には裏表があることを知り、人間らしく成長していく過程が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のメインテーマです。劇場版を観て、作画の美しさや登場キャラクターたちが気になった人は、ぜひTVシリーズも後追いしてください。より深く、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の世界を堪能できるはずです。

 劇場版の冒頭に出てくる少女・デイジーは、TVシリーズで「神回」と称された第10話のマグノリア母娘の血縁者です。また、ヴァイオレットの同僚たちも、自分のペースでそれぞれの道を進んでいる姿が描かれています。

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誰もが願ったヴァイオレットの幸せ

 いつの時代も、言葉は人間を大きく左右します。温かい言葉は人を導く「道しるべ」にもなりますが、不用意な言葉は逆に人を悩ませることにもなります。

 ギルベルト少佐が発した「愛してる」という言葉を、ヴァイオレットは忘れることができずにいます。言葉には人を縛りつける、呪術のような力もあります。今回の劇場版では、ヴァイオレットは「愛してる」という言葉に返答することで、その呪縛からようやく解放されるのです。

 ヴァイオレットは見た目は華やかですが、手紙の代筆はとても地味な裏方業務です。人知れず、黙々と働くアニメ業界と通じるものがあるのではないでしょうか。人の想いをタイピングし続けるヴァイオレットと、地味な仕事をいとわないアニメーターはとてもよく似ています。

 哀しみを乗り越え、献身的に働くヴァイオレットには、幸せになってほしい。日常生活を愛おしく描く「京都アニメーション」の作品の数々に励まされてきたファンは、誰しもがそう願うのではないでしょうか。