ベムラーが登場する、『ウルトラマン』第1回「ウルトラ作戦第一号」は1966年7月17日に放送された。画像は「The Rise Of Ultraman」(Village Books)

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人気ランキング下位なのはウルトラマンのせい?

 興行収入も40億円を超え大ヒットを記録している映画『シン・ウルトラマン』。原作のストーリーを踏襲しながらも時代にあわせた再解釈がマッチし、古くからの特撮ファンからも高い評価を得ています。

 本作ではストーリーと同様に『ウルトラマン』に登場した人気怪獣が大胆にアレンジされて登場しました。一体、どの怪獣や宇宙人が登場するのか、ファンの間で公開前から大きく注目されていました。まさか「バルタン星人」や「ゴモラ」「レッドキング」などの人気ウルトラ怪獣(宇宙人)を抑えてネロンガ、ガボラがくるとは。シン・オタクである庵野秀明氏と樋口真嗣氏の両名ならではといえる超・高文脈なチョイスには納得しかありません。

 さてこうした予想合戦のなか登場が有力視されていた怪獣がいます。それが、「ベムラー」です。

「宇宙怪獣ベムラー」。1966年7月17日放送の『ウルトラマン』の第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場した日本特撮界においても記念碑的怪獣です。すらりとした体躯で小さな前脚とどっしりとした後ろ脚に長い尾。全身は硬い鱗と皮膚に覆われ、背面は禍々しい大きなトゲが生えています。その顔は凶悪そのもの。ギョロりとした目に、大きな口元からは鋭い牙が覗きます。

 そして何よりわれらのウルトラマンが地球にやってきた理由こそ、護送中に逃げ出したこの凶悪犯罪者である怪獣ベムラーを捕まえるためだったのです(さらに言えば「ベムラー」という名称も『ウルトラマン』の前段階の企画「科学特捜隊ベムラー」の名残)。

 今も続く「ウルトラマン」シリーズはまさにこのベムラーから始まったといっても過言ではないのです。悠に視聴率30パーセントを超えていた『ウルトラマン』の第1話。リアルタイム世代からすればベムラーのインパクトは相当なものだったはず。後追い世代の筆者からすればその衝撃は想像すら難しいものなのです。

日本の特撮史において超重要な「怪獣」だけど……人気ランキングでは?

 一方でこの「ベムラー」の認知度、人気に関して少し気になるデータがあります。たとえば2013年に円谷プロ50周年を記念して開催された「ウルトラ怪獣総選挙」。こちらはウルトラマンシリーズに登場した怪獣50体のセンターを決めるというこの企画で、総投票数実に80万票超えという盛り上がりをみせました。

 結果は1位ゼットン、2位バルタン星人、3位ゴモラ、4位メトロン星人、5位カネゴンと錚々たるメンツが続き……われらのベムラーはというと37位という結果。『帰ってきたウルトラマン』に登場する「プリズ魔」が35位であることを踏まえると……複雑です。

 ここ最近のランキング企画も見てみましょう。2022年2月には「好きな『初代ウルトラマン』の怪獣・宇宙人ランキングTOP30」が発表されました。こちらは『初代ウルトラマン』と区切っているため「プリズ魔」に負けるようなことはありません。さて気になる結果はというと…TOP30のなかで「ベムラー」は27位。なかなかどうして人気・認知度においては芳しくないのが現状のようです。

 もちろん「ベムラーに人気がない」と結論づけるのは誤りです。回を重ねるごとに時代を超えてなお愛される「大スター怪獣」が次々に登場していった、と考えるのが妥当ではあります。また『ウルトラマン』の第1話「ウルトラ作戦第一号」は唯一、「怪獣」や「宇宙人」ではなくウルトラマン自体が主役の回。そうした意味でもランキング企画においてベムラーは不利になってしまうのかもしれません。

 実際、こうした人気ランキングの結果とは裏腹に、制作サイドは「ベムラー」をそれはもう大切に扱ってくれているので嬉しい限りです。2014年放送の『ウルトラマンギンガS』、2015年放送の『ウルトラマンX』、2016年『ウルトラマンオーブ』、2019年『ウルトラマンタイガ』といわゆるニュージェネレーションヒーローシリーズにおいてはほぼ毎シーズンごとに登場。また2004年に公開された映画『ULTRAMAN』ではベムラーを基にしたビースト・ザ・ワンが現れます。

 平成以降も「ウルトラマン」シリーズの象徴としてベムラーは生き続けているのです。これらを観て育った子供らの意見が反映されれば……ベムラー人気が令和に返り咲くなんてこともまたあるかもしれません。