「少年マガジン」で掲載できたのが不思議なくらいの変態が登場する『GTO』11巻(講談社)

【画像】アニメで変更せざるを得ないくらいの過激描写が収録された単行本

『ボーボボ』も実はかなり自主規制していた?

 マンガのアニメ化において、大人の事情で原作の細部が差し替えられることはよくある話です。例えば、過激な暴力描写や未成年の飲酒や喫煙シーンにぼかしが入ったり、放送上不適切と思われるセリフが別のセリフに置き換わったりします。そして、なかには原作のストーリー展開や設定自体が大きく差し替えられてしまう例も少なからずあるようです。ことゴールデンタイムの放送枠においては、なおさらです。

『ONE PIECE』ではゼフの衝撃シーンが差し替え

 アニメ『ONE PIECE(ワンピース)』(原作:尾田栄一郎)でも、原作から大きく変更されたシーンが存在します。サンジとルフィたちが出会った海上レストランバラティエのオーナーであり、かつては「赫足」と恐れられた元・海賊のゼフが「右足を失うシーン」です。

 原作では、ゼフは幼いサンジとともに遭難し、サンジに食料を分け与えて自分は右足を切断して食べて生き延びていたという衝撃の場面は、アニメでは海で溺れたサンジを助けようとした際、足が船体に挟まって切断したということになりました。どちらもサンジのために足を犠牲にしたことには変わりはありませんが、描写はだいぶマイルドになっています。

『GTO』では「変態」描写が差し替えに……

 元ヤン教師、鬼塚の活躍を描いたアニメ『GTO』(原作:藤沢とおる)も、マンガではかなり過激な描写が目立っていましたが、アニメはゴールデンタイムの全国放送とあって随所に自主規制したと思われる箇所が見受けられました。

 とりわけ生徒や教師による違法行為描写は、ほぼカットされています。なかでも大きな変更を加えられたのが、英語教師である桜井の描写です。原作では女子トイレの盗撮常習犯という設定で、いじめられた経験から特殊性癖にいきついてしまうまでの経緯が丁寧に描かれていたのですが、アニメでは単なる女装趣味に変更されました。名前も理事長との混合を避けるためか、桜田に変更されています。

 また神崎麗美が鬼塚をはめた相沢雅らをホテルで「お仕置き」する有名なシーンも、原作とアニメでは大きく異なっています。原作は「武蔵野HENTAI倶楽部」なる裸の変態紳士たちを雅たちに仕向けるという、およそ少年誌掲載であることが信じられない内容なのに対し、アニメでは身代金目的の誘拐犯を手配という内容に変わっていました。お気づきの通り、原作があまりに過激だと、それをマイルドにしたところでなお過激なのです。

『ボーボボ』のアニメは細部まで配慮がなされていた……

「これほど理解不能な番組は初めてだ」「こんな番組が子供たちに対してどんな影響を与えるのか心配だ。」などの意見が放送局に寄せられ、最終的にスポンサーが全て撤退したアニメ『ボボボーボ・ボーボボ』(原作:澤井啓夫)ですが、あれでもゴールデン放送という時間帯を考え、原作から根本的に変更を加えられていた点があるのです。

 それが理不尽な暴力と出血シーンのカット。原作『ボボボーボ・ボーボボ』は常に理不尽な暴力・暴言にあふれていましたが、アニメでは全て別のやわらかな表現に差し替えられています。

 例えば原作では聖鼻毛領域でボーボボがKING鼻毛さんの眉間に剣を突き刺す描写も、地面に突き刺す描写になりました。結果、輪をかけて理解不能になりましたが。また食事時であることを配慮してか、「うんこ」というワードすらも排除しています。実はすみずみまでお茶の間への配慮が行き届いたアニメでもあったのです。ところが、蓋を開けてみれば「これほど理解不能な番組は初めてだ」という反応なのです。万策を尽くしてもなお、あまりある狂気であったというほかありません。

 差し替えは原作ファンからすれば多少気になることかもしれませんが、こうした配慮があってこそ全国レベルの人気を勝ち得たと言えるかもしれません。本筋に変更を加えないよう、代替アイディアを捻出した制作スタッフの労力には今さらながら頭が下がる思いです。