その走りは…やはり排ガス規制対策なりだった?

排ガス規制対策で走りが厳しくなったものの、後のワゴン的なレジャーユースにピッタリなのだ…という方向性で北米では「プリマス」ブランド版がよく売れた(画像は1978年式のランサーセレステ1600XL)

スポーツキャブにガボガボとガソリンをぶち込んで燃やし、盛大に排ガスを撒き散らして燃費も環境も何のその…といかなくなっていた1970年代半ば、それでも新たなスポーツモデルに飢えていたユーザーにとって、新型のランサーセレステは何とも魅力的に感じました。

ちゃんとツインキャブの1600GSRをラインナップしていて、サファリで勝ったランサーGSRばりの動力性能がイメージできますし、スマートでいかにも速そうなスタイルから、発売当初はディーラーに人だかりができるほどの大ヒットだったのです。

しかしそれも最初だけの話で、ランサーセレステもすぐに1.4/1.6リッターエンジンともに排ガス規制の洗礼を受けます。

サーマルリアクター(排気再燃焼装置)と、EGR(排ガス再循環装置)で昭和50年排ガス規制をクリアした当時のMCAではパワーダウンで軽快な吹け上がりも得られず、他社の排ガス規制対策エンジンよりマシとはいえ「スペックはともかく吹けない」のは同じ。

さらにランサーより大きく重いボディというハンデもあって、ユーザーが期待したような「排ガス規制前のセリカみたいに走るクルマ」ではなくなり、ゆったりと長距離ドライブして出先で広い荷室を活かしたレジャーを楽しむ、アメ車的GTとなったようです。

さらなる排ガス規制対策「MCA-JET」化や、1979年に排気量アップでパワフルさを取り戻した2000GTを追加するなどテコ入れするも、一度失望された人気は戻らず1982年に販売終了、その後はユーザーの記憶に残ることもないまま忘れ去られていきます。

しかし、「アメ車的なGT」ということは適材適所、北米のクライスラーに供給されると「プリムス」ブランドで販売し、小型で経済的なスペシャリティクーペとして時代の波に乗るヒット、海の向こうでは人気になったのでした。

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ターボエンジンのテストでランタボやランエボの礎に

マイナーチェンジでヘッドライトは角目になり、排ガス規制対策で失われたパワーを補う2000GTも追加されて、ライバルのトヨタ セリカや日産 シルビアなどと同格になったものの、ランサーセレステは一代限りで終わった

より小型軽量で振り回しの効くランサーに運動性能で劣ったためか、ラリーなどモータースポーツでは華々しい活躍をしたという話を聞かないランサーセレステですが、数少ないエピソードとして「三菱社内でターボエンジンのテストに使われた」という話があります。

某自動車誌で当時の関係者から聞いたという雑学的なベタ記事でしたが、その開発結果が1981年に登場するランサーEXターボ、通称「ランタボ」による国際ラリーでの活躍に繋がったと思えば、一代限りで終わったランサーセレステも報われそうです。

ランタボからスタリオン4WD、ギャランVR-4、ランサーエボリューションへと繋がる三菱伝家の宝刀、4G63ターボの始まりはランサーセレステだったのかもしれません。

スタイルは良いので、ランタボはもちろん、三菱以外でも縦置き直4ターボへスワップチューンすれば面白くカッコいいチューニングカーができそうですが、どこかでそんな面白いクルマを作ったチューナーはいないのでしょうか?

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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