小田急ロマンスカーと名鉄パノラマカーの“中の人”対談 「車体色似てる」質問の答えは

「ロマンスカーミュージアム」で3回に渡って行われた「名鉄・西武・京成×小田急社員による車両開発トークショー」。各社の看板特急について、車両担当者が対談しました。まずは小田急×名鉄から紹介します。

ズバリ2社にとって展望席とは

「ロマンスカーミュージアム」(神奈川県海老名市)では2023年7月30日、8月5日、12日の3日間、小田急電鉄、名古屋鉄道、西武鉄道、京成電鉄の特急車両担当者によるトークショーが開催されました。各日ごとにテーマが設定され、それぞれ小田急電鉄とほか1社ずつが対談。初日は「展望席」をテーマに、名古屋鉄道と「もっと乗りたくなる車両の魅力」について語られました。

「ロマンスカーミュージアム」の高橋孝夫館長が司会を務め、小田急電鉄 運転車両部 車両担当課長代理の鈴木剛志氏と、名古屋鉄道 鉄道事業本部車両部 車両課長の伊室英生氏が対談しました。

 鈴木氏は「VSE」以外のロマンスカーと関わった大ベテランで、最新の展望席付きロマンスカー「GSE」にも関わっています。伊室氏は「パノラマカー」が引退した2009(平成21)年に入社し、「パノラマスーパー」のリニューアルを担当したといいます。

 まずは「名鉄・小田急にとっての展望席」というテーマから。名鉄は「パノラマカー」「パノラマデラックス」「パノラマスーパー」の3車種で展望席を設けた特急車両を開発・運行してきました(現在は「パノラマスーパー」のみ)。「パノラマカー」は日本で最初に運転席を2階に設けた車両、「パノラマデラックス」も日本で最初に運転席を1階、展望室を2階に配置した観光特急です。そして「パノラマスーパー」は、2階展望室を継承しつつ、都市間有料特急としても運用できる車両として開発されました。

 伊室氏は「展望室に速度計を設けているのは、名鉄のこだわりです」と胸を張ります。

 そこで小田急の鈴木氏が、展望席の窓について発言。鈴木氏は名鉄の「パノラマデラックス」「パノラマスーパー」を比較し、「展望窓の中央柱が無くなったのは進化です」と讃えました。

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中の人、展望席についてどう思う?

 小田急の鈴木氏は「ロマンスカーの『NSE』「LSE」『Hise』は、展望窓の中央に柱が入っていました。私は上司に『この柱は減らせんのか』といわれ、『VSE』から展望窓の正面柱を廃止できたのです」と、経緯について解説しました。

 続く「展望室を設けた理由」というテーマでは、伊室氏が「1961(昭和36)年の名鉄はモーターリゼーションの時代を見越して、(お客様が)乗ってみたい車両を作れという経営陣の強い意向があり、イタリアの特急車両『セッテベロ』をモチーフとして展望車になりました」と解説。

 一方の鈴木氏は「ロマンスカーの転機は1960(昭和35)年です。東海道新幹線の開業前で、新幹線に対抗するには『鉄道の魅力』を高めるべきと考えたのです。最初に小田急は2階建て車両を企画しました。連接型で2両目が2階建てになる構造でした。続いて、運転席を2階に上げての前面展望が検討されます」と話し、パネルに検討写真を掲載。こちらも「セッテベロ」の影響を受けたデザインでした。

 次に「展望席の価値をどう思うか」というテーマへ。伊室氏は「乗った時のワクワク感や、自分が運転しているような感覚が魅力ですし、現在でもそうした考え方が、名鉄では引き継がれています」と発言しました。鈴木氏は「『電車を2階建てにする』こと自体が『夢のある設計』だと思います。2階運転席での前面展望は、夢が広がりますね。ダブルデッカーの2階席もありです」と語りました。

「展望席の未来像」という話題では、伊室氏は「パノラマスーパーは当分現役ですが、廃車になりますと展望席が消滅します。展望席はどうするか、大きな社内議論になると思います。展望席であるが故の課題や、利用しにくい部分をどうするのか。今から考える必要があります」と発言。